乗り換え時に罰金、スイスの空港
2009年から2010年にかけて、スイスの空港で乗り換えた乗客6700人以上が200フランから650フラン(約1万9700円から約6万4200円)の罰金を課されていた。
これらの旅行者はシェンゲンビザを所持していたが、このビザの有効期限はスイスでは適用されない。そのため、スイス経由で帰国する際に違法滞在と見なされたのだ。
通常のシェンゲンビザの有効期間は6カ月間で、滞在期間は最高90日まで。だが、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリアなどの各加盟国は、アメリカやオーストラリアなどの国々と2者間協定を結んでおり、これらの国からの訪問者は通常より長い滞在も認められている。
政府観光局の悩み
スイスの空港で課せられている罰金は、スイス政府観光局の悩みの種だ。最初にこの罰金について苦情を寄せたのは在オーストラリア・スイス大使館だった。
スイスはシェンゲン協定に加わってはいるが、オーストラリアと特別な2者間協定は結んでいない。そのため、オーストラリアからの訪問者がシェンゲン圏およびスイスで合計3カ月以上滞在する際は、用途に適したスイスのビザを取得する必要がある。空港のシェンゲン圏用トランジット領域はスイスの領地と見なされ、ここでもこの規制が適用されている。
しかし、このような事情を知る旅行者は少ないようだ。オーストラリアから届いた苦情を受け、スイス政府観光局は昨年12月、チューリヒ空港警察と連邦司法警察省移民局(BFM/ODM)にその旨を伝えた。
スイス政府観光局のウルス・エバーハルト副局長は、オーストラリア人だけにとどまらず、「ショッキング」なほど多くの人々が罰金を支払わされていることを報じた8月15日付のチューリヒの日刊新聞「ターゲス・アンツァイガー(Tages Anzeiger)」の記事を読んで愕然(がくぜん)としたと言う。
同紙は、定期的にドイツに滞在するドイツ系アメリカ人女性が、シェンゲン圏で通常認められている90日間の滞在日数を5日間オーバーしたという理由により、チューリヒ空港でのトランジット時に罰金を課せられたと報道した。この女性はニューヨークへ戻るために罰金を支払うと同時に、最低1年間シェンゲン圏加盟国に入国できなくなる可能性もあると警告されたという。
ターゲス・アンツァイガーによると、2009年には合計3116人が罰金を課された。今年もすでに3500人を上回っている。最も多く罰金を支払っているのがアメリカ人で658人。これにブラジル人、バルカン諸国出身者が続く。
隣国と同調を
エバーハルト氏は、スイス政府観光局はスイスの国境や空港に降り立った観光客に良い第一印象を持ってもらうための努力を重ねているのに、この罰金はそれに反するものだと残念がる。
「スイスで悪い経験をした人が再入国する可能性は、良い経験をした人のそれより低いはず。法を犯したことに気がついていない場合、その人は絶対に気を悪くする」
これはスイスが隣接する国々に同調すべき「明らかなシグナル」だとエバーハルト氏は言う。「このことはまた、スイスはアメリカやオーストラリアがシェンゲン圏と結んでいる協定と同様の2国間協定を結ぶべきだというサインでもある」
(英語からの翻訳・編集、小山千早)
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