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国民投票 代替医療、IC旅券共に承認

1915年に制作された第1号のスイスパスポートは緑だった。赤に色変えしたパポートは今後IC化される Keystone

5月17日の国民投票で問われた第1案件「憲法で代替医療を医療として認める」は67%の高い支持率と全州の賛成で承認され、また第2案件のIC旅券の義務化は過半数をわずかに上回る50.14%の賛成で支持された。

ホメオパシーや中国伝統医療などスイス国民の多くが利用している代替医療だが、現在健康保険はカバーしていない。今回スイス政府はこれを憲法で医療として正式に認めた上で、健康保険が支払う種類の限定などの細部規定を行おうと提案した。一方IC旅券の義務化もシェンゲン協定の加盟国として、支持するよう訴えていた。

圧倒的支持

 スイスで利用されている代替医療は200種類。医療師は約2万人。代替医療の1つであるホメオパシーに関しては約2割の国民がしばしば服用し、8割が1度は使ったことがあるという調査結果があるほど、スイスでは代替医療が普及している。
 
 スイス政府は代替医療を憲法上で医療として正式に認めた上で、健康保険が支払う種類の限定や医師免許など、諸規定の制定を時間をかけ行っていこうと提案した。

 今回の国民投票は憲法改正を問う「強制的レファレンダム」であったため、州と国民両方の賛成過半数が必要とされたが、開票後間もなく過半数を超える支持率が明確になり、国民の67%の支持と全州の賛成で承認された。

 「国民は代替医療は効果があり、西洋医学には限界があることを理解した。反対していたパスカル・クシュパン内務相も3分の2の国民の賛成にかなりの圧力を感じるだろう」
 と社会民主党 ( SP/PS ) のシモネッタ・ソマレガ議員は語った。一方キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) のトマス・メイヤー議員は、
 「さまざまな代替医療の信頼性や、医療の基準に則しているかといったチェックが今後必要になる」
 と語った。

 反対者側は、医療領域の拡大で医療費が値上がりすると懸念していたが、今後ホメオパシーなどの5つの代表的代替医療を含め健康保険がカバーする代替医療の種類や医療師の医師免許など、連邦議会で議論される課題は多く残る。

わずかに過半数を上回り承認

 一方、顔写真と2枚の指紋データをICチップに含む、 IC旅券 ( バイオメトリックス・パスポート ) を義務付けることを問う、第2案件はぎりぎりまで票が割れ賛成が疑われたが、最終的に50.14%の支持率で承認された。

 連邦政府は、その導入によってアメリカ渡航がスムーズにいく、旅券の偽造が減少する、さらにシェンゲン協定のほかの加盟国がIC旅券を導入しているため、スイスも足並みを揃えるべきだと主張し、国民に支持を求めていた。
 
 一方、多数の左派政党メンバーと右派の国民党 ( UDC ) も含む反対者側は、IC旅券を導入する、ほかのシェンゲン協定加盟国は個人情報のセンター保存を実施せず、中でもドイツは正式に情報保存を否定しているにもかかわらず、スイスではセンターでの情報保存を実施することを懸念し、国民の審議を問うレファレンダム ( 随意のレファレンダム ) を起こした。

 票が割れた背景には、こうした個人情報のセンター保存が国民の反感を買ったことがあると見られ、実際16の州が反対を表明した。ただ、随意のレファレンダムでは州の過半数の同意は求められていないため、50.14%の国民の支持率のみで認可された。この承認によって、IC旅券は来年2010年から実施されるようになる。

なお、今回の国民投票での投票率は38.3%だった。

里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 、swissinfo.ch

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もっと読む レファレンダム

ホメオパシー
患者の病気の症状と似た症状を起こさせる植物、動物、鉱物などをごくわずか投与することで、体の治癒力を高め、病気そのものを体から追い出していく。スイス人の2割がホメオパシーを使っているといわれている。

薬草治療
伝統的な薬草を、湿布、シッロプ、煎じ茶の形で使用する。

中国伝統医療
心、体、精神は一体であるという中国の哲学に基づいた医療で、針治療、漢方薬、マッサージ、エネルギー療法などを行う。

アントロポゾフィー医療
ルドルフ・シュタイナーの「アントロポゾフィー ( 人智学 ) 」に基礎を置き、精神的、心理的、身体的な面から人間を捉える。しばしばホメオパシーを使う。

神経療法
治療に人間の自然治癒力を利用する。少量の麻酔薬を注射するか、浸透させ、体の治癒力を刺激する。

スイスの国民投票にはイニシアチブ、強制的レファレンダム、随意のレファレンダムと3つの形がある。

イニシアチブは国民からの発議で、10万人の署名を18カ月以内に集めることにより、国民投票にかける。承認には投票数と州の数の両方で賛成過半数を取ることが必要となる。

レファレンダムは連邦会議の決定に対する国民の事後審判として実施する国民投票のこと。強制的レファレンダム ( 憲法改正、国際機関の加盟など連邦憲法の改正にあたるもの ) と随意のレファレンダム ( 新法や法の改正など ) と2種類がある。

強制的レファレンダムは自動的に、随意のレファレンダムは連邦会議の決定後、再審議を求める公文書が発表されてから100日以内に5万人の署名を集めることにより、国民投票が実施される。

強制的レファレンダムの承認には国民と州の両方の過半数の賛成が必要だが、随意のレファレンダムは国民の過半数の賛成だけが必要となる。

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