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人口の3割が外国人のスイス 移民に選ばれる理由は? 

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スイスに住む外国人の割合は、10%だった1世紀前から大幅に増加した Keystone / Gaetan Bally

スイスでは何世代にもわたり、多くの外国人が働き暮らしてきた。なぜ、スイスを第二の故郷に選ぶのか。スイスの外国人人口に占める国籍別の割合と移住の理由を探った。

スイスの総人口 890 万人のうち、外国人が占める割合は27%にのぼる。ほとんどはイタリアやドイツなどの近隣諸国からの移住者で、ポルトガル人も多い。さらに遠くの国から移り住んだ人も少なくない。 

2023年末時点で、約230万人の外国人がスイスに居住している。そのうちの約2割がスイスで生まれた。 

2023年の新規入国者数は出国者数を9万8851人上回り、前年比で11.7%増えた。スイスに住む外国人の割合は、10%だった1世紀前から大幅に増加している。 

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外国人の割合は第二次世界大戦中に劇的に減少したが、戦後に再び上昇した。2002年にスイスと欧州連合(EU)間の「労働者の自由な移動を認める協定」が発効すると、その勢いはさらに増した。 

EUや欧州自由貿易連合(EFTA)からの移民労働者は特に多く、2023年には新規入国者の72%を占めた。 

誰がスイスに移住するのか? 

スイスへの移住の波は戦後、イタリア人移民から始まった。戦争で荒廃した自国よりも良い条件を求めた人々だ。 

スイスの外国人居住者に占める国籍の割合は今でもイタリア(14%)が最多で、次にドイツ(3.4%)、ポルトガル(10.6%)、フランス(6.8%)が続く。 

自国との距離の近さや、スイスの公用語が理解できるなどの利点から、スイス移住する人が多い。 

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国外移住を目指すドイツ人にとって、スイスは好ましい移住先だ。2002 年のスイス・EU 協定以降、スイスで暮らすドイツ人の数は劇的に増加した。 

ポルトガル人もまた、特に2008年の金融危機とそれに伴う不況以降、「人の移動の自由」協定の恩恵を得ている。2008年から2012年の間に、スイスへ移住したポルトガル人の数は20%増加した。 

しかし、ポルトガル移民監視団によると、スイスへのポルトガル移民の割合は減っている。2013年には全国籍の12%だったが、昨年は5.2%に減少した。スイスの統計では、2015年以降、ポルトガル人の出国者数が入国者数を上回っている年もある。 

米国、中国、インド、英国などいわゆる第三国からの労働者は、移民全体の10%弱にとどまる。EU/EFTA加盟国以外の国民に発行できる労働許可証の数は、毎年約1万2000人に制限されているからだ。 

移民には難民申請者もいる。スイスは2023年、1万8000人以上のウクライナ難民の一時的な受け入れを認め、さらに約6000件の難民申請を承認した。 

なぜ移住先にスイスを選ぶのか? 

スイスは多くの多国籍企業の本拠地だ。外国人居住者を対象とした数多くの調査によると、スイスは生活と仕事に最適な場所の一つと考えられている。 

調査で回答者は、スイスの利点として高賃金、景観の良さ、比較的きれいな環境、効率的なインフラ、安定性、平和、治安を挙げた。 

ただ、生活費の高さや地元の人々との交流の難しさを指摘する声もあった。 

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スイス人は移民にどういった思いを抱いているのか? 

多くの他の国と同様、意見は分かれている。 

ただ経済界は、高度なスキルを必要とする職に就く外国人労働者を歓迎している。これは経済の発展に貢献している。 

しかし、スイス国籍を持たない住民の割合が増えていることで、労働組合からは賃金ダンピングを、右派政党からはスイスの国民アイデンティティの希薄化を懸念する声が上がっている。 

2014年、スイスの有権者は国民投票で、保守右派の国民党(SVP/UDC)が立ち上げた移民制限案「大量移民反対イニシアチブ(国民発議)」を可決した。その結果、スイスとEUの間に緊張が生じ、現在も解決されていない。 

それから6年後の2020年に行われた国民投票では、EUとの「人の移動の自由」を定めた協定破棄案は否決された。しかし、移民をめぐる議論はスイスで今も続いている。 

編集:Balz Rigendinger/ts、英語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:ムートゥ朋子

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