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利上げ、LOVOT、暮らしにくさ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ロボットを抱く子どもたち
Groove Xが2018年に販売開始した家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」 EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が先週(6月17日〜23日)伝えた日本関連のニュースから、①日銀総裁、7月の利上げを示唆②触覚ロボット「LOVOT」の成功③知日派スイス人「長期滞在は難しい」の3件を要約して紹介します。

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日銀総裁、7月の利上げを示唆

日銀の植田和男総裁が18日の参院財政金融委員会で、「次回(7月30~31日)の金融政策決定会合)までに入手可能になる経済・物価情勢に関するデータや情報次第だが、場合によっては政策金利の引き上げも十分ありうる」と発言。スイス・ドイツ語圏の金融メディア、フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトはこれを「7月に利上げの可能性を示唆」との見出しで報じました。

同紙は長年にわたる買い入れ政策により日銀の国債保有量は約5兆ドル相当に膨らんでおり、「肥大化したバランスシートは金融政策正常化への中心的課題だ」と強調しました。

一方、フランス語圏の地域ラジオ局RFJは5月の日本の消費者物価(CPI、生鮮食品を除く)が前年同月比2.5%上昇したニュースの中で、植田総裁の発言について「一部のエコノミストは、家計の購買力を圧迫する円安を抑え込むためのはったりではないかと疑問を抱いている」という解説を加えました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語、RFJ外部リンク/フランス語)

触覚ロボット「LOVOT」の成功

米テスラが開発中のヒト型ロボット「オプティマス」が世界中の投資家の注目を集めるなか、スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは「日本ではLOVOT(ラボット)のような感情を持つロボットの市場が既に存在する」と紹介する大型記事を掲載しました。

1970年代以降、数々の技術者がヒト型ロボットの開発に勤しんできました。NZZの記事は、日本では同志社大の勝野宏史氏らが「Haptic creatueres (触覚のある創造物)」という「市場性のある概念」を生み出したと紹介しました。技術的な能力は劣るものの、感情的な絆を深める潜在力を持つロボットを指すといいます。例として「パロ」「Qoobo(クーボ)」「Moflin(モフリン)」「Nicobo(ニコボ)」の名を列挙しました。

なかでもGroove X(グルーブエックス)の開発したラボット外部リンクは、数週間で飽きられやすい感情型ロボットは異なり、発売から3年経った今でも9割が現役で使われているといいます。

同社の林要社長はNZZに、ロボットに人々が期待することと現実の技術レベルには大きな落差があり、ヒト型ロボットの追求は「ヘイプ(誇大宣伝)」だとの見方を示しました。いずれは技術が理想に追いつくことが予想されるものの、それまでは精神的なサポートを提供するロボットなど「非言語コミュニケーション」などに商機があると語りました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

知日派スイス人「長期滞在は難しい」

スイスは空前の日本旅行ブーム。あらゆる国内旅行業者で日本への旅行者が激増したと報道されています。そんななか、スイスの無料紙20min.イタリア語版などに、「日本の住民は外国人には敵対的なことが多い」とする記事が掲載されました。

その論拠は複数あります。まずは国籍取得が制限的であること。「社会のルールも厳格で、西洋から来た人にとっては奇異なことも多い」として、路上で食べないこと、公共交通機関では黙っていることを挙げました。チューリヒ大学の日本学者ダーフィト・キアヴァッチ外部リンク氏は「規範から逸脱すれば、特に外国人とみなされると、軽蔑される」と語ります。

チューリヒ在住で日本人の母親を持つアンドレアス・シュトラームさんは、「多くの日本人は外国人を警戒している」と証言しました。地下鉄ではラッシュアワーでも隣に座ることを避けられ、アパートでも入居拒否されることが多いといいます。

日本に8カ月間留学したジャン・ケッセルリンクさんも、長期滞在者でも日本でくつろぐのは難しいと語ります。日本語を少し勉強したケッセルリンクさんでしたが、理由もなくレストランへの入店を断られることが5回ほどあったそうです。

キアヴァッチ氏は、観光業は日本社会が緩和的に変わる機会になるとみています。「観光業や飲食業の労働力不足は深刻化で、移民政策は寛大になっている」と話しました。(出典:20min./外部リンクイタリア語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスが冒した『稀有なリスク』 平和サミットの舞台裏」(記事/日本語)でした。他に「スイスの出生率1.33、過去最低を更新」(記事/日本語)、「ツェルマット、洪水で立ち入り禁止に」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は7月1日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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