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大型経済対策、「またトラ」、「カワイイ」…スイスのメディアが報じた日本のニュース

キティグッズをつけた女性
今年誕生50年を迎えたハローキティは、日本の「カワイイ」文化を代表するキャラクターだ AP Photo/Hiro Komae

スイスの主要報道機関が先週(11月18日〜24日)伝えた日本関連のニュースから、①13.9兆円の総合経済対策②「またトラ」に備える日韓③「カワイイ」文化の歴史と少子化④Tsunamiのような映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」、の4件を要約して紹介します。

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13.9兆円の総合経済対策

政府が22日、物価高対策を柱とする総合経済対策を閣議決定しました。2024年度補正予算案の一般会計からの支出が13.9兆円に上る対策について、フランス語圏の通信社Keystone-ATSや大手紙ル・タンに仏AFP通信の記事が転載されました。

記事は「石破茂首相にとって、消費の回復は最優先事項だった」と位置付けます。数十年にわたり物価が停滞した日本で、「消費者物価の上昇が2年以上続いていることへの不満が、10月の衆院選に重くのしかかった」。

大規模対策に対して、街頭インタビューで「低所得者だけでなく中所得者世帯にも支援策が必要」「なぜ税収増が必要なのか、どうすれば不要な支出を減らせるかをよく考えるべきだ」といった批判的な声が聞かれたことを紹介しました。

また補正予算審議で国民民主党の賛意を得るため対策に盛り込まれた「103万円の壁」の引き上げについて、税収減を懸念する声が大きいことも伝えました。日銀の利上げにより国の利払い費はさらに膨らむと予想されます。記事は「エコノミストらは、少数与党政府が野党からの圧力を受け、税収の手当てや構造改革に取り組むことなく家計・企業に手厚い支援を与えるのではないかと懸念している」と指摘しました。(出典:Keystone-ATS/フランス語)

「またトラ」に備える日韓

米国のドナルド・トランプ次期大統領が次々と閣僚人事を発表し、孤立・保護主義的な公約が現実味を帯びています。ドイツ語圏大手紙NZZは、対米同盟の悪化に備える日本と韓国の動きを解説しました。

「トランプの黒子から問題児へ」。NZZは第1次トランプ政権から第2次への日本の立ち位置の変化をこう表現しました。2016年の初当選時、当時の安倍晋三首相はいち早くトランプ氏を訪ね、良好な関係を築きました。一方の石破現首相は少なくともトランプ氏の就任まで面会することは叶わなさそうです。「問題の1つは、石破氏の政治的弱さだろう」とNZZは分析します。

トランプ氏は日本に在日米軍駐留費・防衛予算の増額や、東アジアにおける軍事的責任の強化を求める可能性があります。また日本車への輸入関税が課される可能性も。対米投資や米国産石油・ガスの輸入を増やしたり、米国の造船産業を支援したりすれば「トランプ氏の目から見た日本の立場を改善する」ことにつながる、との専門家の見方を紹介しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

「カワイイ」文化の歴史と少子化

「この形容詞は日本で最もよく使われる言葉の1つで、毎日さまざまな場面で耳にする」。いまや世界でも通用するようになった日本の「Kawaii」文化について、広島在住のオーストリア出身作家兼翻訳家のレオポルト・フェデルメール氏がNZZに寄稿しました。

フェデルメール氏は「カワイイ」の歴史を明治維新後に遡ります。結婚適齢期に達しておらず、教育を受けることができ、ある程度の自信を持つことを許されている「少女」の地位が徐々に確立し、少女漫画の前身とされる「少女小説」というジャンルが誕生したといいます。

さらにその源流は、紫式部の「源氏物語」や清少納言の「枕草子」にみられる「一種の美意識」。とても上品で、総合的なライフスタイルを志向する美の概念は、形を変えながら今の日本にも根付いています。

フェデルメール氏は、ハローキティに代表されるカワイイ文化は「戦後の近代化に伴う幼児化を表現」したもので、教育課程や労働における勤勉さとバランスをとるための存在だと分析します。リオ五輪の閉会式で故安倍首相がスーパーマリオに扮したことも、「カワイイ」ではないにせよ「公式に認められた幼児文化の一部」であり、「古い軍国主義イデオロギーや極東の帝国主義よりはマシだ」と位置付けました。

「西洋でカワイイ文化は退行的で反社会的だと批判される。『ひきこもり』を生むことにつながる、と。しかし現実はその逆であり、カワイイ文化は社会を団結させ、日本においてさえ宗教やイデオロギーが消滅する代替物を生み出す」

さらに、この幼児化は日本の少子化の遠因にもなっていると指摘します。「その国の住民が育てることができる、または喜んで育てる子どもが少なければ少ないほど、彼らの行動はより幼稚化する」。子どもの代わりに犬やぬいぐるみをベビーカーに乗せるのは、「その方が安価で、問題が少ない」から。幼児化と対を成していた「忍耐力」が衰退していると読み解きました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

Tsunamiのような映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」

今月からスイスで公開されている伊藤詩織さん監督のドキュメンタリー映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」。チューリヒ映画祭で受賞しただけに大きく注目されており、ドイツ語圏メディアに続いてフランス語圏の大手紙ル・タンも取り上げました。

「この映画が家父長制の強力な砦である日本からやって来たという事実が、作品をより強力なものにしている」。ル・タンは#MeToo運動の系譜となる本作の特長をこう明言します。

伊藤さんが若さと美貌、英語力を兼ね備えメディアの注目を引きやすかったことは認めながらも、「これほど深く掘り下げた映画は、そんなイメージをはるかに凌駕する」。人生を賭けて困難を乗り越えようとする伊藤さんの決意に感嘆の声を上げました。

「波風を立てないことが至上の美徳とされるこの国で、このTsunamiのような映画は十分に大胆だった!」(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス製狙撃弾60万発以上がウクライナに」(記事/日本語)でした。他に「スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画」(記事/日本語)、「大雪で交通混乱 事故も」(記事/英語)「スイスと近隣国の食文化の違い浮き彫りに」(記事/英語)も良く読まれました。

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校閲:宇田薫

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