東アジア、女性天皇、日本ブーム、大相撲…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が先週(1月27日~2月2日)伝えた日本関連のニュースから、①混迷する東アジアの民主主義②皇位継承めぐり日本と国連が対立③2024年の訪日スイス人6万人突破④若手獲得に苦戦する大相撲、の4件を要約して紹介します。
混迷する東アジアの民主主義
「西太平洋におけるアメリカの第1防衛ラインは崩壊しつつある」――ドイツ語圏の大手紙NZZは日本、韓国、台湾、フィリピンという中国を囲む民主主義国で政情が揺らぎ、中国共産党が影響力を行使するチャンスを広げているとする大型解説記事を掲載しました。執筆者は台北特派員のパトリック・ツォル記者です。
「中国の戦略家たちは、おそらく前ほど懸念に満ちた目で島嶼列島を見ていないだろう」。記事は中国と外海をつなぐ位置にある日韓台比がすべて米国と同盟関係にあり、米国は中国の艦船や潜水艦が太平洋に侵入するタイミングを全て把握していると説明。しかしこの4カ国すべてで政治的麻痺や混乱が広がっているのに加え、米国で第2次トランプ政権が始まり「明確なリーダーシップが欠如している」ことが中国に大きな隙を与えていると伝えています。
トランプ氏は第1次政権の就任直後に環太平洋経済連携(TPP)協定から脱退。故・安倍晋三首相の尽力で存続はしたものの、米国離脱や中国の加盟申請で協定は大きく揺らいでいます。議会過半数を握っていない石破茂現首相は立場が弱く、「安倍首相が果たした役割を担うことはできない」。石破氏が就任直前に打ち出した「アジア版NATO」構想は強い反発を引き起こし、その後大きな安全保障政策の提案を手控えています。
韓国、台湾、フィリピンも政治的混乱に陥っています。記事は「民主主義は最悪の政治形態である」という英ウィンストン・チャーチル首相の言葉を引用し、中国政府は「これを文字通りに受け止めている」と指摘。「ワシントンの舵取りが不安定な今だからこそ、政治家たち(少数の女性政治家も含め)は自国の利益を優先して行動する必要がある」と強調しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
皇位継承めぐり日本と国連が対立
外務省が29日、国連への拠出金を女性差別撤廃委員会(CEDAW)外部リンクに使わないよう、同委員会の事務局を務める国連人権高等弁務官事務所(OHCHR、本部・ジュネーブ)に伝えたと発表しました。昨秋「男系男子」に皇位継承を限定する皇室典範の改正を勧告した同委員会への対抗措置だといいます。スイスでは無料大衆紙20min.フランス語が伝えています。
記事は、「現在の天皇制では、皇位に就けるのは男性だけ」であり、皇室の将来は悠仁さま(18)ひとりという「危うい状況になっている」と現状を説明。委員会は他の君主制諸国の「優れた慣行」に従い、「皇位継承における男女平等を保障する」よう求めた、と伝えています。
日本側の「皇位継承のルールは、国連が取り組むべき人権や性差別とは無関係」という反論も掲載。ただ2005年以降、日本の拠出金はCEDAWに充てられておらず、29日の決定は「象徴的なものにすぎない」点を外務省の説明として引用しました。
また日本の世論調査では女性の皇位継承を容認しているものの、「与党保守党に支持されている伝統主義者は、このような動きは国を根本的に変えるものだとして激しく反対している」と解説しました。明治維新以前に8人の女性天皇がいたことや、皇室典範に関する議会の議論に進捗がないことも伝えました。(出典:20min.外部リンク/フランス語)
2024年の訪日スイス人6万人突破
2024年から空前の日本ブームに沸くスイス。スイスメディアでは旅行会社への問い合わせ件数などから日本の人気ぶりが報じられてきましたが、ついに公式統計でそれが示されました。大衆紙ブリックによると、日本観光庁の統計では2024年に日本を訪れたスイス人は6万3610人と前年比約20%増加。コロナ禍直前に記録した約5万人を大きく上回り、過去最多となりました。
特に3~4月の桜の時期は大人気。記事によると、3月のチューリヒ~東京の直行便は往復2000フラン(約33万8000円)を超え、サンフランシスコ便の2倍の料金になっています。
旅行者数を押し上げたのは過去2年の円安ですが、日本料理や漫画・アニメへの関心も高まっているといいます。記事は、首都ベルンにも本格的なラーメン店が開業したことや、ポケモンの新しいトレーディングカードの発売日にはチューリヒの専門店に大行列が起きることなども紹介しました。Netflixなど動画配信サービスによって合法的に日本製アニメが視聴できるようになったことが背景にあるといいます。(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)
若手獲得に苦戦する大相撲
豊昇龍関(25、本名スガラグチャー・ビャンバスレン)が29日、74代横綱に昇進しました。ドイツ語圏の大手紙ターゲス・アンツァイガーは「148㎏の補填役」との見出しで、横綱昇進は相撲業界の危機を象徴する出来事だと報じました。
記事によると、相撲の修練方法やふんどし姿は300年前からほぼ変わらず、伝統的な髷はさながら「別時代の代表者」。ただし「日本古来の武道に時間の経過が感じられないわけではない」として、後継者問題を抱えていることを指摘しています。
記事は、日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会が豊昇龍の横綱昇進を満場一致で決めたことに注目。「選択肢が少なすぎるのが気まずい面は、多少あったようだ」。豊昇龍の成績は必ずしも印象的ではなかったものの、一人横綱だった照ノ富士が急に引退を表明したため、32年ぶりの横綱空位という番付の危機が迫っていたことを指摘しました。
直近6人の横綱のうち日本人は1人(稀勢の里)だけで、残りは全てモンゴル出身だったことも紹介。ただ、相撲業界がなぜ人材不足に苦しんでいるか、その原因はあまり深掘りしませんでした。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス政府、国際養子縁組を禁止へ」(記事/日本語)でした。他に「スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針」(記事/日本語)、「スイスに世界最小のスキー場がオープン」(記事/英語)も良く読まれました。
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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は2月10日(月)に掲載予定です。
校閲:大野瑠衣子
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