「キラーゲームは残酷ではない」の判決
スイスで初めて、暴力シーンが多くあるコンピュータゲーム「ストラングルホールド」の販売の合法性を問う裁判があったが、残虐ではないという判決が下った。
残虐とは刑法135条によれば、暴力を表す行為があることを十分証明しうるものであると定められている。問題となったゲームはしつこい表現や人の尊厳を侵すような重要な要素にも欠けていたというのがクリスティーネ・シェール裁判官の判決だった。
現行法では取り締まれない
「ストラングルホールド ( Stranglehold ) 」には、血が飛び散り血の海となるシーンがあるが、残虐性の詳細にわたる表現はない。法的に残虐な行為とされるのは、例えば拷問の表現だ。ストラングルホールドは殺人ゲームだが禁止されているゲームではないというのが裁判の判断だ。
被告となったのはベルン地方の大手ディスカウント家電、「メディアマルクト ( Mediamarkt )」 の支店だ。この店舗は18歳以上の顧客に限ってストラングルホールドを売っていたと主張しているが、ドイツ語圏の日刊紙「ノイエ・チュールヒャー・ツァイトゥング ( NZZ ) 」によると14歳の子どもたちも買えるという。原告のベルン州上院議員で学校長でもあるロラント・ネフ氏は判決を受け
「今回の判決により現行の法律ではこうしたことを取り締まれないというわたしの意見が証明された」
とマスコミに向けて語った。
ゲームと現実
チューリヒ大学青少年心理学者のアラン・グッゲンビュール氏は、子どもはゲームと現実の世界とをきちんと分けることができるという。
「多くの子どもにはゲームによる悪い影響は及ばない。バーチャルリアリティーと自分の生活とは別であることを分かっているからだ」
と語り、政治家は子どもを政治に利用しているのであり、青少年が暴力を振るう傾向にあることをコンピュータゲームのせいにするのは単純すぎると指摘する。法的にゲームを規制するのはあまり意味のないことだというのがグッゲンビュール氏の意見だ。
「大人が暴力に魅せられるのに、子どもたちにはそれを許さないというのは偽善的であり未熟考だ」
とも言う。本を読んだり外で遊んだりすることは今の青少年はあまり好まない。その上、学校では新しいメディアについての教育も不十分だとグッゲンビュール氏は指摘する。
NZZの報道によると、スイスの子どもたちは1週間に5時間コンピュータに向かってゲームをしているという。昨年のゲームの売り上げは4億2900万フラン ( 約440億円 ) で、前年より4割増。しかも、映画興行売り上げを上回るという。グッゲンビュール氏によれば、子どもにゲームをさせる親は、ゲーム時間を制限するべきだという。( 問題は ) ゲームにどれほど時間を費やすかだであり、ゲームについて親子での会話も必要だという意見だ。
swissinfo、ジュスティン・ヘーネ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
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