スイス観光業 ピークを過ぎる
「好業績だった2008年以上の業績は、向こう2年間は望めないだろう」。スイス政府観光局が11月3日、チューリヒで開催した記者会見でユルク・シュミット最高経営責任者 ( CEO ) はこう語り、2008年度 ( 2007年11月~2008年10月 ) の総集計と今冬季以降の見通しを語った。
過去3年間スイス観光業はブームに沸き、EURO2008が開催された2008年度にはそのピークに達したが、景気の冷え込み、為替の動向などから、今年の冬季にはホテル宿泊数で見ると、前年同期比で2.4%の減少 ( バーセル景気予想 / BAK ) が予想されるという。
歴史的ブーム達成
連邦経済省経済管轄局 ( seco ) が同日発表した統計によると、2008年度のスイスのホテルの延べ宿泊数は、前年同期比で4.5%増加し約3700万泊だった。これは、ホテル業界史上最高の記録でもある。地方別で見ると、グラウビュンデン ( +6.5% ) 、ベルナーオーバーラント ( +4.7% ) 、ヴァレー/ヴァリス ( +4.1% ) などアルプス地方が好調で「特にグラウビュンデンは、ドイツからの観光客で人気だった」( シュミット氏 ) という。
また、スイスホテル協会 ( Hotelleriesuisse ) の最高経営責任者 ( CEO ) クリストフ・ユエン氏によると、欧州サッカー選手権「EURO2008」の影響で、5月、6月に限ってみるとバーゼルで10.0%増、ジュネーブで4.7%増など、ホストシティとその周辺地のホテルの延べ宿泊数 が伸びたという。
一方、2008年1月から8月まででみると、アメリカからの観光客は前年同期比で4.9%減り、アジアからの観光客は0%の伸びだった。secoのリヒャルト・ケンプ氏によると、アメリカの減少は大統領選挙のため、またアジアが横ばいだったのは北京オリンピックのせいだという。また、日本からの旅行者は過去5年間で半減した。
「日本人の目はアジアに向いているようだ。向こう2年間はスイスへ来る日本人はさらに減少するだろう」
とスイス政府観光局のシュミット氏は語った。
景気と為替
スイス政府観光局は、2008/09年の冬季から景気の冷え込みをスイス観光業界も感じ、ホテルの延べ宿泊数は2.4%減少するであろうと予想している。特に為替の動きが重要な要素として数えられる。
「1ユーロが1.45フラン以下のフラン高になると、観光客の減少につながるだろう」
とsecoは予測している。金融危機などスイス観光業にとって重要な諸国 ( シュミット氏 の弁) の景気が冷え込むことなども合わせ、向こう2年間はピークの2008年度から5%ほどのマイナス成長になると予測されるという。
しかし、シュミット氏は
「スイス観光業が危機に立つということはない。ここ10年間、ホテルや観光施設への投資をしっかりしてきたので、魅力あるサービスを提供できるようになってきた。北京オリンピックの時期でも、相変わらずスイスには観光客が来た。競争力もしっかりしている」
と強調し、2011年にはやや上昇すると期待できると語った。政府観光局の2008/09年冬季の予算は前年より150万フラン ( 約1億2800万円 ) 増やし1950万フラン ( 約16億7000万円 ) とし、西ヨーロッパ諸国とロシアを中心にマーケティングには引き続き力を入れていくとのことだ。
swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
<2008年度ホテル延べ宿泊数の伸び>
バーゼル ( +9.0% )、グラウビュンデン ( +6.5% ) 、ローザンヌ ( +5.1% ) 、ジュネーブ ( +4.9% ) 、ベルナーオーバーラント ( +4.7% ) 、ヴァレー/ヴァリス ( +4.1% ) 、中央スイス ( 3.7% )
<観光客を国別で見ると2008年1~8月>
スイス +385,420人/ドイツ +199,225人/オランダ +118,184人/フランス +58,176人/湾岸諸国 +49,897人/イギリス +58,176人/ロシア +42,997人
<ホテル延べ宿泊数の予想 ( BAK )>
2009年度
スイス人-1.5%、外国人-4.0% 全体-3.0%
2010年度
スイス人+0.1%、外国人-2.4% 全体-1.4%
2011年
スイス人+1.3%、外国人+1.4% 全体-1.3%
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