「FIFAワールド・サッカーミュージアム」がチューリヒにオープン!
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2016年2月28日、チューリヒ市に世界唯一のサッカー博物館「FIFAワールド・サッカーミュージアム(FIFA World Football Museum)」がオープンした。金融ビジネスのイメージが大きいチューリヒであるが、FIFA(国際サッカー連盟)の本部がある事でも知られている。このサッカーミュージアムでは、歴史あるサッカーの遺産を引き継ぎ、国境を越えて、未来に羽ばたくサッカーを伝えていく事を使命としているのだという。今回は、総工費1億4000万スイスフラン(約164億7000万円)を費やして完成した、サッカーの博物館をご紹介しよう。
最初に申し上げておくと、筆者は特別なサッカーファンという訳ではない。スイスに住むまでは、むしろその逆であった。しかしヨーロッパに住んでみると、国をあげて熱狂するサッカー人気の凄さに圧倒されるばかりだ。特にワールドカップ(W杯)や欧州選手権の期間中は、白熱したサッカーの試合を見ると、自身も楽しめるようになってきた。そんな筆者の目で見た新しいサッカーミュージアムを語ってみたい。
ミュージアムはチューリヒ市南西部の街区エンゲ(Zürich Enge)に建設された。FIFA本社とは別の場所だ。建物は総面積が3000平方メートル、地下を含む3つのフロアーで構成されている。内部はスイスらしいエコ仕様で、夏と冬の館内の冷暖房には、チューリヒ湖の湖水から作り出されるエネルギーを使用している。
FIFAが創立されたのは1904年の事。サッカーミュージアムの館内には、ワールドカップのトロフィー、メダル、歴代のワールドカップ出場チームのユニフォームなどが展示されている。これらはすべてFIFAが所持するコレクションで、1000点にものぼるのだそうだ。その他、4000点以上の貴重な文献や、約1400点の写真の数々も展示されている。入場料金は、大人が24フラン(約2700円)、7歳から15歳の子供は14フラン(約1600円)、6歳以下の子供は無料だ。この他、グループ割引もある。去る3月8日の国際女性デー(International Women’s Day )には、女性客を対象に無料開放された。
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館内に併設された「スポーツバー1904」の名称はFIFAの創立年にちなみ名付けられた。スポーツバーはサッカーミュージアムに入場しなくても利用が出来る。3つの大型LEDスクリーンが設置されたバーでは、スポーツ中継を鑑賞でき、スポーツファンで賑わっている。6月にスタートするUEFA欧州選手権期間中は、多くのサッカーファンが集う事であろう。同じくミュージアムに併設されているビストロ&カフェバー、ミュージアムショップも、博物館への入場無しで一般利用できる。ミュージアム内には、セミナールームとバンケットルーム、ライブラリーもある。
館内は大きく3つのパートに別れている。第1展示室は1階のメインホールにあり、「サッカーの惑星(Planet Football)」と名付けられている。入場するとまず、目の前に飛び込んでくるのが、色とりどりにディスプレイされた歴代FIFA加盟国のナショナルチームのユニフォームコレクションだ。
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巨大スクリーンに映し出される映像は迫力満点!大きな透明のエレベーターの中も、壁いっぱいがスクリーンだ。
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同じく1階には、FIFAが創立された1904年から現在に至るまでの、FIFAと世界のサッカーの歴史が年代順に並んでいる。
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第2展示室は地下にある。このエリアのテーマは「ワールドカップ・ギャラリー (The World Cup Gallery)」とされ、貴重な資料等と共に、男女別のオリジナルの優勝トロフィーが飾られている。展示室内では、設置されたタッチパネル式のタブレットで、自分のお気に入りの国や選手の情報、過去の試合結果などの情報をチェックする事も出来る。とてもモダンなシステムに感心した。
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地下には女子チームの軌跡も展示されている。2011年の女子ワールドカップ優勝チームである「なでしこジャパン」の選手達の名前も刻まれていた。日本人の自分にとっては非常に感慨深い。1930年に第1回目のワールドカップが開催されたのはウルグアイ。それ以降、現在に至るまでの歴代の開催地と優勝チーム、語り継がれる名試合に関連するエピソードが明記され、選手の備品等もある。ワールドカップの歴史と思い出がギッシリと詰まった貴重な展示品は、サッカーファンには見逃せない品々だろう。ちなみにスイスでは1954年にワールドカップが開催されたのだそうだ。2002年に日本と韓国が開催地となった大会資料も展示されている。
筆者は平日の昼間に出かけてみたのだが、ひとつひとつ時間をかけてゆっくりと見学していたせいか、館内スタッフに、「よろしかったら写真をお撮りしましょうか?」と声をかけていただいた。女性一人で、見るからに外国人である自分は、熱狂的なサッカーファンだと思われてしまったようだ。せっかくなので、当時の「なでしこジャパン」の選手たちの名前と優勝トロフィーの横で、記念写真を撮っていただいた。別の係員からは、ビデオ上映について声をかけられた。地下には大型の映写室があり、最新のオーディオシステムで迫力満点の約8分間の映像を体験できる。 ここで働くスタッフ達は親切丁寧だ。真っ先に英語で話しかけてくる係員もいれば、「英語? ドイツ語? スイスドイツ語? どれで話しましょうか?」とまずは言語の確認をしてくれる係員もいた。
第3展示室は2階にある。この階のテーマは「プレーグラウンド( Fields of Play)」様々な体感型ゲームマシンが設けられており、子供達を中心に賑わっていた。世界各国でのサッカーボールの作り方や、切手のコレクションなども展示され、サッカーのゲームそのものではなく、サッカー関連のコレクションを目にするのもとても興味深く感じた。
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次回のFIFAワールドカップは2018年に開催される。「FIFAワールド・サッカーミュージアム」の更なる飛躍と、2年後のワールドカップの盛り上がりにも大いに期待したい。
スミス 香
福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住13年目。最初の2年間をバーゼルで過ごし、その後は転居して、現在は同じドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。
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