「内紛」のFIFA、会長の座は再びスイスのブラッター氏に
汚職疑惑が渦巻く中、国際サッカー連盟 ( FIFA ) は6月1日、本部があるチューリヒの多目的会館で第61回総会を開催した。
議題の一つは「サッカーの王」と呼ばれる会長の選任。立候補者はスイス人の「セップ」ことヨゼフ・ブラッター氏のみで、選挙を目前に汚職疑惑が浮上したにもかからわず、ブラッター氏は4期連続で選任された。
選挙は秘密投票形式で行われたため、1日の午後いっぱいかかった。206カ国の代表は2組に分かれて投票を行い、最終的に有効票203票のうち186票がブラッター氏の元に集まった。任期は2015年まで。
再びピラミッドの頂点に
信任が決定した後、ブラッター氏は感動を押さえきれない様子で、力を合わせ、信頼し合いながら今後の4年間に立ち向かっていこうと出席者に呼びかけた。
「ピラミッドが今も存在し続けるのは、基礎がしっかりしているからだ」
ブラッター氏は唯一の候補者だった。対抗馬だったアジアサッカー連盟の会長、カタールのモハメド・ビンハマン氏は先週末、立候補を取り下げた。そしてその直後、汚職の疑いで当面の間、職務停止を言い渡された。
ブラッター氏のアイデア
選挙の前、ブラッター氏は
「今後、ワールドカップ開催地の決定はFIFAの会議で行ってはどうか」
と革命的な提案をして出席者を驚かせた。
これまでワールドカップは24人からなる理事会が開催国を決定していたが、このシステムは繰り返し汚職の種となってきた。
「今は急進的な対策を取ることが重要だ。うわべだけの小さな改革ではダメだ。我々の乗った船は傾いてしまった。浸水もすでに多少始まっているかもしれない。船がコースから外れないよう、全力を尽くさなければならない。私は会長としてその準備ができている」
と、ブラッター氏は演説の中で闘志を見せた。
内部調査のみ
ブラッター氏はほかにも、汚職や収賄の防止策として、各分野から専門家を集めた一種の「賢人会議」の創設を提案。
「FIFAの委員会に属するが、外部からアドバイザーを求めることも可能とする。この新しい組織に、FIFAが抱える問題を一刻も早く調査してもらいたい」
と語った。
総会では、デンマーク・サッカー協会のアラン・ハンセン氏が国際オリンピック委員会( IOC ) に倣い、調査委員会を完全に外部に移すべきだと要求した。IOCは、2002年ソルトレイクシティ冬季五輪の誘致に際して1998年にスキャンダルが発覚した後、外部に調査委員会を設置した。しかし、ブラッター氏にはそこまでする意思はまだなさそうだ。
抗議
選挙が行われた1日の朝、会場となったハーレンスタジアム ( Hallenstadion ) の前では土砂降りの中、小さなグループが「FIFAはフェアプレイを」「FIFAにレッドカード」などと書かれたプラカードを高く掲げて抗議を行った。中にはブラッター氏の退陣を要求する文字も見られた。
FIFAは現在、トップ役員の汚職問題によりその107年間の歴史の中で最大の危機に瀕 ( ひん ) している。総会前日には、イギリスのサッカー協会が汚職問題を理由に選挙の延期を提案したが、出席者はこれを反対多数で却下した。賛成はわずか17票に過ぎなかった。
ブラジルのジョアン・アヴェランジェ前FIFA会長にも汚職疑惑が持ち上がった。
ヨゼフ・ブラッター氏が会長に就任した1998年の選挙でも収賄疑惑が浮上。
ブラッター氏の会長就任以後、FIFAメンバーの汚職や収賄事件は複数回あった。
2001年に倒産したツーク ( Zug ) のマーケティング・エージェンシー「ISL」が訴えられた裁判では、同社が1億4000万フラン ( 約134億円 ) 近くの賄賂をFIFA役員に送金していたことが明らかになった。
公判は2010年6月、訴えられていた2人のFIFA役員がそれぞれ550万フラン ( 約5億2700万円 ) の「賠償金」を支払った後に中止となった。
昨年もFIFAの理事2人の汚職が明らかになった。イギリスの記者のおとり取材で、ナイジェリアのアモス・アダム容疑者とタヒチのレイナルド・テマリー容疑者が2018/2022年のW杯開催地決定に際し、票を売った様子を見せた。このときの会話は録画されていた。
FIFAはその後、内部の倫理委員会に事実関係を調査させ、2人の理事に職務停止処分を課した。
2018年の大会がロシアに、2022年の大会がカタールに決定した後、イギリスのマスコミはさらに4人の理事の収賄疑惑を報道。しかし、ブラッター氏は証拠が不十分であり、調査は行わないと発表した。
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