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国連の「公衆衛生の年」

泥まみれの河川上に住む人々。だがバングラデシュの公衆衛生は飛躍的な進歩を遂げた deza

国連は2008年を「公衆衛生の年」に定め、特に途上国でのトイレの増設を援助している。

この分野でスイスは、途上国の援助を活発に行ってきた。しかし国内では、排水浄化などで世界の優等生といわれながらも、今問題の見直しを迫られている。

 トイレ所有は、飲み水へのアクセスと共に、国連 ( UN ) の「ミレニアム開発目標 ( MDGs ) 」の1つ「基本的公衆衛生」に含まれる戦いだ。現在でも世界人口の4割がトイレを持たない。さらに1グラムの便には、1000万のウイルス、100万の細菌などが含まれる可能性があり、これらは水に入るとさらに増殖する。この水を使用し、チフス、コレラなどの感染で死亡する人は年間200万人に上る。スイスはこうした状況に対し、国外ではトイレ増設などの援助を行ってきた。一方国内では工業発展によって起こる水の汚染など、新しい問題を抱える。

バングラデシュでの援助

 この問題に取り組むスイスの機関は、連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) 、連邦経済省経済管轄局 ( seco )、連邦環境局 ( BAFU/OFEU ) 、連邦内務省保 ( BAG/OFSP ) などだ。

 これまで、先進国が行った援助で1990~2004年の間に、世界のおよそ10億人がトイレを所有し、途上国のおよそ半数が基本的公衆衛生の改善を手にした。スイスは特に、バングラデシュでの公衆衛生の改善を過去10年間援助してきた。

 過去3年間で、公衆衛生改善を手にしたバングラデシュの家族数は、全体の3割から8割に伸びた業績を持つ。「トイレを所有することがいかに快適で、自分を尊重することに繋がるか」などを訴えるキャンペーンが行われ、同時に自然の中で用を足すことが禁じられた。

 バングラデシュの「サクセス・ストーリー」の中でスイスは、シンプルで、経費のかからないトイレの製造会社を現地で興すことにも成功した。

スイス国内の排水浄化

 一方、国内の排水浄化では、世界チャンピオンに仲間入りするスイスも、チャンピオンになった月日は浅い。つい最近まで、遊泳の禁止された湖や、汚れた泡の浮かぶ所が多くあった。また1963年、高級リゾート地ツェルマット ( Zermatt ) で腸チフスが大流行したこともある。当時、スイスの排水の9割は、浄化センターを通過していなかったからだ。

 従って、国連が定めた「公衆衛生の年」は、この国の水道水もここに至るまでにはかなりの年月、労力、資金がかかったことを再認識させる良い機会になった。だが、スイスの浄化設備もすでに建設後30年がたち、修繕や、取り替えの時期にさしかかっている。

 さらに、水質検査技術の向上で、以前発見されなかった物質が排水中に見つかるようになった。それらは農薬、医薬品、洗剤などの化学成分で、これを取り除くことは現在の浄化装置フィルターではできない。

 現段階では、こうした物質を確認できたことに満足すべきだが、やがて取り除く技術が求められる。もちろんそれにも膨大な費用と労力が要求される。

 ところで、国連の「公衆衛生の年」キャンペーンには異種の参加者がいる。「州立ローザンヌ芸術学校 ( ECAL ) 」の工業デザイナーの卵たちだ。このテーマを独自に捉えた作品展示がスイス国内を巡回し、問題の重要性を訴えている。 ( ギャラリー「ずらした視点」もあわせてご覧ください )

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スイスの下水管は地球を2周する長さで、8万9000キロメートル。この下水管を通過した、家庭や工場の排水は759カ所の浄化センターと3400カ所の小型浄化所で浄化される。ここで、スイス人1人あたり1日675リットルの排水が浄化される。

かくしてスイスは世界で一番整った浄化施設を誇る国の1つである。浄化施設の設備投資額は1000億フラン ( 約10兆円 ) 、年間の運営、維持費は17億フラン( 約1700億円 ) 。将来は老朽化した施設の修理費などで、さらに費用が掛かる見込み。

国連の「ミレニアム開発目標 ( MDGs ) 」の1つに、衛生施設を持たない人の数を2015年までに半数に減らそうというものがある。

国連が望む「基本的公衆衛生」とは、便の放置を減少させ、排水の浄化を行い、人間の体を衛生的に維持するために必要な最低限の質と量の水を確保することにある。

世界人口のおよそ40%がトイレを所有していない。その結果毎年2億トンの便が自然に放置され、この公害のせいで、下痢などを起こした子供が17秒間に1人の割合で死んでいる。

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