外国人の安楽死「観光」を禁止する法案提出へ
スイス中部チューリヒ州の検察庁は、同州で合法化されている安楽死を州の住民に限定する内容の法案を今春メドに司法当局に提出する見通しだ。
同州で立法化されれば、安楽死を求めてスイスを訪れる外国人の門戸は一部閉ざされることになる。ただ、連邦レベルに発展するかは微妙だ。
薬物の投与などで、患者の死期を積極的に早める「安楽死」は、スイスの一部の州で合法化されている。現法では、患者は自らの意思で最後の行為を取らなければならないと規定しているだけで、患者の国籍は問われていない。
急増する外国人の安楽死
安楽死を求めてスイスを訪れる外国人はここ最近、増えている。4年前にチューリヒで安楽死の幇助を始めた任意団体「ディグニタス」を訪れた外国人は、2000年に3人だったのが、2003年には91人に急増。スイス人はたったの2人だった。
同法案の立法化を求めるブルーナー検察官は、外国人をスイスに引き寄せてしまうのは自国で安楽死が合法化されていないのが要因だと指摘する。
増える税負担
外国人の利用禁止を目指す背景には、幾つかの事情がある。まず、スイスで規定されている安楽死の法律を外国人にそのまま適用する姿勢に疑問が高まっている。
ブルーナー検察官は、外国人の意思を州当局が把握するのには限界があると指摘する。「死を望んで来る人たちはここにたった一日しかいない。彼らのことは何一つ知らないのに、長い間死を望んでいたと断定することはできない」と話す。
急増する外国人の安楽死は財政的にも州に負担をかける。安楽死の調査は、1件当たり最大5、000スイスフラン(約43万円)かかる。チューリヒ州の外国人による安楽死調査の費用は昨年で27万フラン(約2、300万円)だった。
法案はこうした費用を任意団体も負担するべきだと提案している。
スイス国際放送 スコット・カッパー、 安達聡子意訳
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