悲願達成なるか、国連加盟
世界で国連に加盟していないのは、スイスとバチカンの2ヶ国。スイスでは来年3月3日に国連加盟をかけた国民投票が行われる。連邦議会議員190人は、国民に国連加盟支持をよびかける大キャンペーンに乗り出した。
スイスはほとんど全ての国連機関の活動には参加しており、コソボのPKO部隊にはスイス兵を派遣している。ジュネーブには国連欧州本部、国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)など多くの国連機関の本部がある。スイスの国連への年間拠出金は4億7000万スイスフラン(2億8800万ドル)で13番目の高額拠出国だが、加盟国ではないので総会で発言権がない。国連の正式加盟国となったら、年間拠出金が6000万スイスフラン上乗せされるが、スイスにとっては大した財政負担ではない。連邦政府、アナン国連事務総長、スイス財界は全面的に国連加盟を支持しており、全州議会(上院)は2000年6月、連邦議会(下院)は9月にそれぞれ国連加盟案を可決したが、スイスの直接民主制では最後の決定は国民投票に委ねられる。
前回(1986年)の国民投票では、国連加盟案は3対1の圧倒的多数の反対で否決された。反体勢力の急先鋒であるスイス人民党タカ派議員らは、国連加盟はスイスの伝統である中立政策を侵害し国家主権を損なうとの主張を貫いている。が、賛成派代表のクリスティン・ベーリ上院議員は、国連加盟はスイスの中立政策も独立性も侵害するものではなく、むしろ正式に加盟国となり冷戦後の世界建設で主導的な役割を果たべきだと主張する。「スイスが国連加盟国となっても中立政策は維持できる。スイスは軍事同盟には加盟しないし、軍事作戦には参加しない。国連加盟は軍事作戦参加を義務付けていない。」。また、86年の時点では世界は米ソ2大大国のもとで二極化され拒否権発動もしばしば見られたが、今日の世界情勢はまったく違っていることを指摘、コソボ再建やアフガニスタン暫定評議会設置などにおいて国連が果たした役割を上げ、スイスも国連に加盟してより直接的に関わっていくべきだと主張した。さらに、バーバラ・ポッラ下院議員は、9月11日の米同時多発テロはテロの国際組織化を浮き彫りにし、テロとの戦いには世界は団結しなければならず、スイスが国際機関の一員となる重要性を再認識させられたという。ポッラ議員は、来年3月の国民投票で再度国連加盟案が否決されたら、スイスのイメージはもっと悪くなると懸念する。
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