連邦政府、国連加盟キャンペーン開始
「機は熟した。今こそ国連に加盟を。」。3月3日の国連加盟の可否を問う国民投票に向け、連邦政府は国民に加盟支持を呼び掛けるキャンペーンを開始、フィリガー大統領、ダイス外相、シュミッド国防相の3閣僚が8日、ベルンで記者会見を行った。
3人の閣僚は、国連に加盟しないとスイスは国際影響力を失ってしまうと、それぞれ訴えた。カスパル・フィリガー大統領は、「スイスが国連に加盟すべき時が来た。今度国連加盟を否決したら、損害を受けるのは国連ではない、スイスだ。」と訴えた。スイスはほとんどの国連機関には加盟しており、国連欧州本部をはじめ多くの国連機関の本部はジュネーブにある。年間拠出金額も約5億スイスフランと13番目の高額拠出国だが、加盟国ではないので総会で発言権がない。オブザーバーとして出席しているだけに5億スイスフランは高すぎる。ジョセフ・ダイス外相は、「我々はすでに国連に大きな義務を負っている。そろそろ権利も手に入れるべき時が来ている。」という。重ねて外相は、「諸外国はかねてほどスイスに仲介役としての興味を示さなくなった。スイスの声を世界に届けるためには、国際機関の一員にならなければならない。」と訴えた。昨年11月のアフガニスタン新政権会議もジュネーブではなくドイツのボンが選ばれたように、スイスは和平会議の場としても国際社会での影響力を失っている傾向が見られる。
また、反対派が一貫して続ける国連加盟はスイスの主権と中立政策を侵害するという主張に関して、ダイス外相は国連安全保障理事会の決定がスイスの国策よりも優先されるというブロッハー議員ら反対勢力の主張には根拠が無いと明言した。ダイス外相は、「国連安保理は、各国が独自の政策に基づき安保理の決定に反する行動を取らないよう強制することはできない。」とし、60ヶ国以上の加盟国は国連の軍事作戦に一度も参加したことはないことを指摘した。反対に、これまでスイスが国連の決定を受け入れたことは何度もある。サミュエル・シュミッド国防相は、「過去10年間、スイスは国連経済制裁に同調してきた。テロリストにとってスイスは弱小な中立国ではなく、西側経済の一員だ。」と主張した。
さらに、反対派の国連加盟は国民に経済負担を増やすという主張に対し、財相も努めるフィルガー大統領は「国連はスイス企業から年間2億4000万ドル(3億9600万スイスフラン)相当の物資とサービスを要請している。拠出金7000万ドルはスイスにとって大した負担ではない。」と述べた。
現在スイス以外で国連に加盟していないのは、バチカンだけだ。連邦議会と主な政党は、加盟を支持している。1986年の国民投票では、反対3対賛成1で否決された国連加盟だが、3月3日の投票の行方はどうなるか。
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