野生のクマ再び出没
2年前、スイス東部グラウビュンデン州のエンガディン地方に出没した茶グマが今年も姿を表した。同一のクマと判断されたのは、その足跡から。
当時、スイスのマスコミが大きく取り上げ、クマを追う見物人が大勢いた。この茶グマはその際、「ペッツ」と名づけられた。
6月初旬、狩人やその他一般人が国立公園近くのツェルメツ ( Zernez ) で茶グマを確認した。クマは高山松が生える森の入り口付近を徘徊し、標高2800メートルの山を登ったりした。
2頭確認される
この狩猟区を管理するグオルフ・デノットさんが現場に着いたときクマは、消え去った後だった。しかし、雪についた足跡を写真に撮ることができた。写真の足跡から、クマは成長したクマと判断された。今後、毛や糞からDNA鑑定が行われる。
クマは北イタリアのトレンティーノ地方から来たとみられる。トレンティーノ地方ではクマの再入植が試みられており、数十頭の1〜2歳のクマが森に放たれ、生息している。これらのクマがスイスのグラウビュンデン地方にも足を伸ばすことは、すでに予想されていたことだ。
5月中旬には、スイスに接するイタリアの国境付近でクマの生息が確認されている。このクマは、今回確認されたクマより成長したクマだったという。これで、スイスとイタリアの国境付近には今年、2頭のクマが確認されたことになる。
整っている対応体制
スイスにはここ100年間野生のクマはいなかった。2年前に初めて野生のクマがスイスに侵入した時と違い、今年はその対応は整っている。クマを、「ひっそりと生息するクマ」、「問題のあるクマ」、「危険なクマ」の3種類に分け、人間に害を及ぼさない限り、連邦や州の当局は受け入れる姿勢にある。
2年前に出没し「危険なクマ」と認められた「ブルーノ」や「JJ1」は、ドイツのバイエルン地方で射殺されている。また、2005年7月に出没した「JJ2」は、2カ月間ほど出没付近をうろついた上、羊を殺して話題になった。しかし、9月末まったく姿を見せなくなった。
さて、スイスでは今年、何頭のクマが出没することだろうか。
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
- 2005年夏スイス国立公園内に1頭のクマが出没した。イタリアのトレンティーノ地方からスイスにやってきたものと見られる。トレンティーノには数十頭の野生グマが生息しており、スイスと国境を接している。
- トレンティーノ地方では野生グマが急減したため、スロベニアから2002年、10頭の野生グマを移殖した。
- 現在5万頭の野生グマがヨーロッパに生息していると見られる。
茶グマはラテン語名でUrsus Arctos。世界でおよそ20万頭いると見られている。生息地はヨーロッパ、アジア、北米。ヨーロッパにはおよそ5万頭生息し、このうちおよそ3万7000頭がロシアに生息している。カルパチア山脈、バルカン諸国、スカンジナビアにも多く生息している。
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