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国連人権理事会で浮かび上がる中国の人権戦略

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国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏 Keystone / Martial Trezzini

創設15年を迎えた国連人権理事会(本部・ジュネーブ)が今、西洋諸国と中国の対決の主戦場となっている。

戦いの火ぶたを切ったのは国連人権高等弁務官のミチェル・バチェレ氏だ。加盟47カ国の代表者が集まる第47回会合の初日となった先月21日、香港の抗議デモや新疆ウイグル自治区の少数民族に対する中国政府について明確な見解を打ち出した

バチェレ氏は香港の反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」について「深刻な懸念」を示し、ウイグル自治区で「とりわけ深刻な人権侵害が報告され続けている」として同地への立ち入りを認めるよう改めて求めた。

だが同氏の求めは中国代表によって却下された。中国政府は「中国の領土で不可侵の部分」について、いかなる外部権力の「干渉」も受け入れないと言い放った。劉玉印報道官も「事実を尊重」し「中国に対し誤った発言を止める」ようバチェレ氏に求めた。

名指しの応酬は会期中も続いた。カナダを筆頭に40カ国が少数派のイスラム民族に対する中国の拷問、人権侵害、強制労働を批判した。中国は北朝鮮、ベラルーシ、ベネズエラなどの同盟国とともに応戦。会合で移民に対する非人道的な対応と先住民の人権侵害を取り上げてカナダに反撃した。

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激しいやり取りはさらに輪を広げた。欧州訪問したジョー・バイデン米大統領は、西洋の同盟国が団結し、中国が多国間主義に及ぼす影響力の増大を抑え込むべき時が来たと明言した。中国はこの数年、国連機関や国際電気通信連合(ITU)、食糧農業機関(FAO)などの国際機関で幹部ポストの候補者を輩出したり支持したりしてきた。

同時に、中国政府は人権理事会での選挙に勝つために大々的な選挙戦略を打ち出している。

「このように主要国連機関で中国人が活躍しているのは、新興国としての中国政府の巧みな外交的駆け引きと、世界第2位の経済大国としての地位を反映しているとも言える」。新アメリカ安全保障センターでアジア・太平洋を担当するアソシエイト・フェロー、クリスティン・リー外部リンク氏は、ニュースサイト「ポリティコ外部リンク」でこう分析した。

バイデン政権やリー氏のような西洋諸国の専門家は、ドナルド・トランプ前政権下で米国が人権理事会から撤退したために生じた空白を埋め、中国の伸張に利用していると考える。

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「中国政府は自国に有利なように国連や他の国際機関を改変しようとしている。その痕跡は、米国のリーダーシップによる安定を失いバランスを崩したグローバルシステムに刻まれている」 (リー氏)

米国がオブザーバーとして人権理事会に復帰したことは、中国が人権理事会など世界会合で有利にアジェンダ設定を進めようとする試みを妨げる効果があるかもしれない。だが失われた土地を奪い返すのは困難だ。

専門家や外交官は長年、中国を世界市場や国際枠組みに統合することで、中国政府は人権を擁護せざるをえなくなると考えてきた。だが非政府組織(NGO)のヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、実際に起こったのはその真逆だ。昨年9月に発表した論文外部リンクで、「特に習近平政権下で、中国政府は国連の人権監視メカニズムによる中国の監視を弱めようとしている。それだけでなく、深刻な人権侵害を行う国の政府に説明責任を負わせるシステムを無力化しようとさえしている」と指摘した。

論文は「中国政府はもはや説明責任を免れるだけでは飽き足らず、人権理事会のようにいくぶん正義を実現するために設計された国際機関においてさえ、自由を抑圧する権利を主張する他の国を力づけようとしている」とも切り込んだ。

戦略:「協力」を採り入れる  

だが国連機関を無力化する方法は「脱退」に限らない。中国は2018年、「相互に有益な協力」に関する決議を共同提起した。ここで解釈される「協力」とは、人権の優先順位をつけるに当たりA国がB国を尊重することを意味する。それは人権に関する中国の言い分を支持し、中国政府の提起する決議に賛同するよう他国に働きかける効果的なツールとなった。

同決議は2年後に賛成23票、反対16票、棄権8票で採択された。賛成票を投じた国々には、ベラルーシや北朝鮮、ミャンマー、ロシア、シリア、ベネズエラなど多くの独裁政権が名を連ねた。

ジュネーブ国際開発高等研究所紛争・開発・平和構築研究センター(CCDP)外部リンクの研究者、小林主茂外部リンク氏は、途上国の間では多くの意見の食い違いがあるものの、人権理事会では協力一致するという考え方の普及に中国は成功していると指摘する。「相互主義という概念が効果を発揮している」

米ウィリアム・アンド・メアリー大学の国際開発研究所、AidData外部リンクが6月末に発表した世論調査では、途上国における中国の影響力がこの数年拡大し続けていることが明らかになった。中国が2020年に助言や支援を提供した国は113か国に上り、世界で8番目に影響力のある開発パートナーとなった。

小林氏は、「中国は近年、人権問題を内政とみなしていたこれまでの立場を変え、外交政策においてより積極的なアプローチを取っている」と話す。  「その過程で、中国は他の国と同じように、人権をめぐるストーリー作りに影響を及ぼそうとしている」

ある中国専門家は、中国は西洋諸国とは異なる人権観を持っており、その概念は主権という次元の下で理解しなければならないと説明する。

中国政府はその物の見方を普及するために人権理事会をどう利用するかを学んだ。

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だがヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国が「国際人権法を国家関係の問題に置き換えようと狙い、個人の権利を守るという国家の責任を無視し、基本的人権を交渉と妥協の対象として扱い、そして市民社会にとって意味のある役割はないと予見している」と指摘する。

中国代表団の言い分では、中国政府は「分裂を生むのではなく、協力を強めたい」と望んでいる。

(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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