スイスでウクライナ地雷除去国際会議 知っておきたい重要ポイント
ロシアによる軍事侵攻で世界最大の地雷埋設国の1つとなったウクライナを救済すべく、スイスで今月、ウクライナの地雷除去を支援する国際会議が開かれる。知っておきたい重要なポイントをまとめた。
ウクライナ政府によると、国土の4分の1、約15万平方km2が地雷に汚染されている可能性がある。
スイスは今月17、18日、ウクライナと共同でウクライナの地雷除去を支援する国際会議(UMAC2024)を外部リンクローザンヌで開く。
会議の目的は?
スイス連邦外務省(EDA)によると、この会議の目的は「社会的・経済的復興における中心的要素としての地雷除去の重要性を訴えること」にある。そのため、人道的な地雷除去をどのように組織化できるかが議題となる。
地雷は安価に生産でき、敷設が容易な一方で、除去作業は複雑で時間がかかる。手榴弾・爆弾などの不発弾も同様だ。これらの兵器は紛争終結後も長期間にわたって国の復興を妨げる。
▼スイスでは今夏、ウクライナ復興サミットが開かれた:
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ウクライナは欧州の穀倉地帯であり、世界最大の小麦輸出国の1つだ。その同国の農業が国民の他の生活分野と同様、地雷で汚染された土壌によって阻害されている。影響が出るのは国内経済だけではない。地雷により、価格が上昇した小麦を購入する貧困国にとっても大きな問題だ。
国際会議には50の国、国際機関、地域機関が招待される。人道的地雷除去活動、民間部門、市民社会からも関係者が参加する。 スイス外務省は「この作業を迅速かつ効果的に進めるためには、国内活動と国際支援を適切に調整することが重要だ」とする。また、資金調達の問題や革新的なアプローチ、たとえば地雷除去へのドローン活用について議論することも目的としている。戦争により、ウクライナはドローン分野で多くのノウハウを獲得した。
スイスは地雷除去においてどのような役割を果たしている?
スイスはウクライナでの人道的地雷除去を優先課題に据え、2023年に1億フランの支援パッケージを決めた。地雷被害者や田畑を耕作できない小規模農業企業への援助プログラムのほか、地雷除去・位置特定のための機材供与、ウクライナ人職員の訓練・技術的アドバイスのための事業費に充てる。ジュネーブ国際人道地雷除去センター(GICHD)とスイス地雷除去財団(FSD)は政府の協力パートナーであり、2015年からウクライナ東部で活動を行っている。
▼スイスの地雷除去支援の様子:
1年前、クロアチアのザグレブでウクライナの人道的地雷除去のためのドナー会議が開かれた。外部リンクスイスも既に複数の技術ワークショップやテーマ別イベントを企画した。
ロシア侵攻から数カ月後の2022年夏、スイスはルガーノでウクライナ復興会議を主催した。同会議は同国再建の基礎を築くもので、戦争終結を待たずして国の復興を行うことを決めた。
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スイスは戦時中の地雷撤去に協力できるのか?
中立法は、スイスが軍事的地雷除去支援を行うことを禁じている。仮にこれを行なった場合、ウクライナ軍が地雷除去地域を通過できるようになり、一方の紛争当事国に軍事的優位性を与えるーーと解釈されるからだ。
これに対し、人道的地雷除去は民間人に重きを置く。これは国際法によって明確に保護されている。1999年に発効した対人地雷を全面的に禁止するオタワ条約にスイスとウクライナは署名済みだ。
中国、インド、米国、ロシアは同条約に署名していない。Landmine Monitor 2023外部リンクによると、ウクライナでは2022年、地雷により600人以上が死亡した。これはシリアに次いで世界で最も多い。
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会議終了後はどうなる?
2025年会議が日本で行われることが既に決まっている。
日本は中立国ではないが、軍事支援に関しては厳格なルールが定められている。
日本は機材設備の供与、地雷除去に関する訓練・教育のために7000万ドルを投じた。今年2月にはウクライナに120億ドルの追加金融支援を決め、最大の支持国の1つとなっている。
編集:Benjamin von Wyl、独語からの翻訳:宇田薫、校正:大野瑠衣子
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