ハイジとペーターで売り込む ハイジランドの新戦略
欧州を訪れたら必見と言われながら実際に訪れた旅行客ががっかりするするのは、ブリュッセルの小便小僧、コペンハーゲンの人魚像、そして、スイスのハイジランドなどと揶揄されるスイスの「名所」が今年から、新しく生まれ変わろうとしている。
「ハイジランドとは言葉だけ。一貫したマーケッティングでハイジをより効果的に使うべき」という厳しいアドバイスをルツェルンの観光専門学校から受けた現地観光局。この夏から本格化するハイジランドの新しいマーケッティングにより、ハイジランドをどれほどアピールできるか注目される。
ヨハンナ・スピリ原作の「アルプスの少女ハイジ」の物語が展開する場所は、言わずと知れたアルプス山脈。作者がインスピレーションを受け物語の舞台にしたのは、スイス東部、リヒテンシュタインに接するバートラガッツから山に入ったところといわれる。緑の牧草が広がるマイエンフェルトにはハイジの博物館とハイジの泉がある。ヴァーレン湖やスキーリゾートのフルムサベルクが観光名所である地域一帯が1997年、「ハイジランド」として観光客にアピールした。
「すばらしい眺めの観光地だが、スイスにはハイジが住んでいそうなところがたくさんあり、ハイジランドまで行かなくとも小説の雰囲気は別の場所でも十分味わえるのではないか」。観光客を代弁するのは、ハイジランドを観光地として売り出し始めた頃に観光業に携わった日本人女性のバウマン俟(まち)さん。
しかし、新しいマーケッティングの趣向如何によっては、日本からの観光客にも満足してもらえそうである。
まずはポスターでハイジを前面に打ち出す
観光の街でもある中央スイスにあるルツェルンの観光専門学校のセミナーに参加した生徒70人は、ハイジランドの魅力をどのようにして引き出すのが良いかを研究し、ハイジランド観光局に助言した。指導したユルク・シュテトレ氏によると、ハイジランドと謳いながら、好感度の高いハイジを実は上手に利用していないことが指摘されたという。「もし日本からの観光客ががっかりするとすれば、この点だ。ハイジに会えるという期待に応えるようにする」と語る。ターゲットは家族連れのほか、「アルプスの少女ハイジ」のファン。今年はひとまず、地元からキャスティングしたハイジのニコル(8歳)とペーターのティル(9歳)がポースターで当地を宣伝している。今後、3年計画でイメージアップを図る計画である。
「アルプスの少女ハイジ」の物語を体験できるこどもたちのための遊園地や、家族で過ごせるハイジの特別室を設けたホテルなどが、企画として挙がっている。干草のクッションなどのインテリアが施され、ハイジが住んだであろうとイメージされるハイジの部屋を、ホテルの一部を改造して作ることも計画中。ハイジランドでハイジのミュージカルも企画される予定。「訪れた人々にはハイキングなどをして、2、3日はすごして欲しい」とハイジランド観光局が期待するように、その魅力は、観光バスから30分ほど降りて、写真を撮る程度のプログラムでは十分味わえないようだ。
宿泊客への期待
ハイジランド観光局のマルコ・ヴィース会長は、日帰り客と宿泊客が半々の現状を打開し、今後は宿泊数が増えることに期待している。
日本の観光客を受け入れるジュネーブの日系旅行会社が提供するハイジランドが組み込まれたプログラムでは、マイエンフェルトに割かれる時間は30分から2時間ほど。「マイエンフェルトにあるハイジの像だけをみたら、物足りないと思う観光客もいるだろう。ハイジは日本でもよいイメージなので、新しいコンセプトが魅力的であれば、現地宿泊のプログラムを組むことも考えてもよい」と新しいハイジランドに興味を示している。
スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)
ハイジ体験1週間(6泊7日)
朝食と夕食それぞれ5回
イヴェントに参加
昼食3回が含まれる
7月24日から30日まで
7月31日から8月6日までの2回にわたる。
大人 683フラン 子供 515フラン
6歳以下のこどもは無料
JTI基準に準拠
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