2人の写真家、ニコ・クレブスさんとタイヨウ・オノラトさんが共同で作品制作を始めてから12年が経つ。その2人が中古のランドクルーザーに乗って東へと向かったのは、2013年4月のこと。旅の目的地は、モンゴル・ウランバートル。その道中で捉えた瞬間が、写真集「コンチネンタル・ドリフト外部リンク」にまとめられた。
このコンテンツが公開されたのは、
1965年スイス生まれ。チューリヒで写真を学んだ後、1989年からフォトジャーナリストとして活動。1990年、スイス人カメラマンの代理店Lookat Photosを設立。世界報道写真財団(オランダ)の世界報道写真コンテストを2度受賞したほか、スイスの奨学金を多数獲得。その作品は多くの展覧会やコレクションで紹介されている。
Taiyo Onorato & Nico Krebs, Thomas Kern
モンゴルへと向かう道中は新たな発見の連続だった。彼らは、ユーラシア大陸、中央アジア、ヒマラヤ山脈の麓、シベリアの森林、旧ソ連の土地など、これまであまり想像が沸かなかった、未知で広大な大陸を東へと進んでいった。ポスト共産主義や宗教、民族間の混乱、資本主義に対する渇望など、写真集には訪れた国や地域それぞれが持つ、異なったアイデンティティが映し出されている。
贅沢にスペースを使って編集された写真集のページをめくり始めた途端、「この2人は一体何をしているのだろう?」「この女性は何を探しているのだろう?」と問いかけはじめる。そしてページをめくっていくごとに読者もまた、2人の写真家と一緒に大陸を「漂い」始めるのだ。まさに同写真集のタイトルのように。
同写真集の制作には2人のグラフィック・デザイナーも関わった。メギ・ツムシュタインさんとクラウディオ・バランドゥンさんは、同写真家2人が手がけた最初のプロジェクトで、ベストセラーとなった写真集「The Great Unreal外部リンク」のグラフィックも担当している。
(独語からの翻訳・大野瑠衣子)
(独語からの翻訳・大野瑠衣子)
続きを読む
おすすめの記事
モンゴルとスイスに架かる橋
このコンテンツが公開されたのは、
モンゴルとスイスの間には、私たちが思っている以上に共通点がある。例えば、両国とも、国土の3分の1が美しく手つかずの山々で占められ、人々は伝統と文化への敬意を持ち、それから自然に対しての強い親近感がある。 だが違いもある。…
もっと読む モンゴルとスイスに架かる橋
おすすめの記事
白く凍てつく、からっぽの辺境地で
このコンテンツが公開されたのは、
ディクソン、人口650人の町。冬は極寒だが、4月を過ぎると1日23時間も太陽の光が注ぐ。ロシア最北のカラ海にある、この「失うものさえない地」をスイス人写真家ベアト・シュヴァイツァーさんがカメラに収めた。
もっと読む 白く凍てつく、からっぽの辺境地で
おすすめの記事
戦争のない戦争
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人写真家マインラッド・シャーデさんは、戦争の前後に争いのあった場所周辺へと向かい、その傷跡を記録した。新しく出版された写真集「Krieg ohne Krieg(戦争のない戦争)」の作品は現在、ヴィンタートゥールにあるスイス写真基金の展覧会でも公開中だ。
戦争は土地に爪痕を残し、人々の心に傷を残し、その傷は後世に語り継がれていく。その記憶の多くはあいまいだが、そこにシャーデさんが探し求めるものがある。戦地へ行かない戦争写真家。シャーデさんは自身をそう名乗る。
2003年からシャーデさんはソビエト崩壊後に独立した国々の、戦争と平和の間で揺れるもろく壊れやすい日常生活を記録し続けた。チェチェン共和国の破壊された建物、イングーシ共和国で暮らす故郷を追われた人々、カザフスタンの核実験がもたらした被害、そしてナゴルノ・カラバフでの境界線をめぐる対立や、ロシアとウクライナでの追悼式やパレードを写真に収めた。
少なくとも最後の2作品を鑑賞する頃には、この写真集のテーマが現在でも重要性を帯びているとわかる。人物、道路、風景の写真は「対」になっていたり、連続して並べられたりしている。そうすることで未解決の争いがもたらす影響がはっきりと浮き上がる。
シャーデさんは、「もう写真が大きな影響力を持っているとは思っていない。だが、ずいぶん前に終わったと言われていても、そこにはまだ戦争の影響があり続けていること。またいかにして、人々がすぐに再び戦争状態に陥ってしまえるかということ。これらのことを、私の写真を見た人々が気づいてくれれば、それで十分だ」とインタビューに答えている。
(写真・Meinrad Schade 文・Thomas Kern、swissinfo.ch)
もっと読む 戦争のない戦争
おすすめの記事
ブレーニオ谷に伝わる伝統の祭り
このコンテンツが公開されたのは、
ティチーノ州の3村では、ナポレオンが1812年に行ったロシア遠征からスイス人傭兵が無事帰還できたことを祝う行列が毎年行われる。郷土史家のロベルト・ドネッタ(1865~1932)が1910年代当時の様子を写真に収めた。
もっと読む ブレーニオ谷に伝わる伝統の祭り
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。