世界で最も美しい本
ドイツのライプチヒで行われた「世界で最も美しい本」国際コンクールでスイスの本が最優秀の「金の文字賞 ( Goldene Letter ) 」を受賞。3月23日授賞式が行われた。
受賞したのはバーゼルの2人の建築家、グラッフィクデザイナーであるレト・ガイザー氏とドナルド・マック氏のシンクタンク「リサーチ&ディベロップメント ( Research and Development )」がデザインした本。題名は 『新しい建築構造の地図帖 ( ATLAS OF NOVEL TECTONICS ) 』である。
「世界で最も美しい本」ライプチヒ国際コンクールは40年以上も続いている国際的なコンクール。今年は世界33カ国から545冊の本が出品され、中国、ドイツ、フランスなどの7カ国、7人の審査員が選考にあたった。コンクールの審査基準は内容に一切関係しない。印刷、イラスト、図表、活字、使われている紙などの素材、装丁の仕方、そしてコンセプトそのものが問われる。賞は最優秀賞「金の文字賞」、金メダル賞、銀メダル賞など14の賞からなる。
本の国際化
「自分がデザインしたものが世界で最も美しい本になるなんて思ってもいませんでした。うれしいです」とガイザー氏。スイスの国内コンクールに応募しただけでそれが国際コンクールにつながるとは思っていなかったという。
受賞した本は19X12.7センチメートルと手ごろな大きさ。軽く手触りが優しい。光の中でよく見ると黒い人工皮の表紙には、鉄筋構造のような線がレリーフのように刻み込まれている。極端にシンプルでありながら、細部が非常に凝っている。
「聖書のように簡素で古風な本でありながら、同時に現代的」というのがガイザー氏とマック氏のコンセプト。多くの建築の本が美しい写真や多色刷りの豪華本であるのに対し、この本は内容をじっくり読む本なので、活字はメタルグリーンとブルー系ブラック2色に絞ったという。
著者はアメリカの建築家カップル。内容は建築を中心に歴史、哲学、文化などを考察したもの。出版は「プリンストン・アーキテクチュラル・プレス ( Princeton Architectural Press ) 」で、デザインはスイス、製本は台湾という国際化を象徴する本。
受賞理由はと問うと「今回選ばれたベストスリーはすべて国際的な本でした。スイス、オランダ、日本の本がそうですが、その国の特色が出ているというより国際協力が感じられる本でした。もちろん純粋にスイス的な本も美しいのですが色々な国の優れた要素が組み合わさることが創造性につながるのでは」とガイザー氏。
スイスのレベルは高い
この国際コンクールに応募するには、参加国は国内コンクールでまず本を選抜しそれを出品する。スイスは1943年から続いているコンクール「スイスの最も美しい本」を今年も1〜2月に行った。
その結果33冊をライプチヒの国際コンクールに出品した。「最優秀賞を受け取って非常に誇りに思っています。しかしびっくりしたと言う訳ではありません」と語るのは国内コンクールを担当してきた連邦内務省文化局 ( BAK/OFC ) のミリアム・フィッシャー氏。
「スイスの本デザインのレベルは非常に高く、国際的に認められています。スイスの1つの伝統でもあるのです」とフィッシャー氏。毎年何らかの賞をもらっているという。また最近の傾向として若い世代が独創的な本を作っているという。
今回の本も若いデザイナーの創造力が凝縮したもの。2001年に著者の執筆の構想がまとまり、2004年にデザインのコンセプトができあがり、その後3年かけ練り上げた。内容は確かに哲学的なのだが、軽さや手ざわりが良いので何度も開けてみたくなる、不思議な「引力」を持った本である。
swissinfo、 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
新しい建築構造の地図帖 ( ATLAS OF NOVEL TECTONICS )
著者 : Jesse Reiser, Nanako Umemoto
言語 : 英語、255 ページ
イラスト : カラー16、白黒218
サイズ : 12.7 x 19 cm 、ハードカバー
価格 : 39.90フラン ( 約3800円 )
出版社 : Princeton Architectural Press、 ISBN 978-1-56898-554-1
本屋に注文か直接以下の卸業者にインターネットで注文できる: www.birkhauser.ch
Birkhäuser Verlag AGViaduktstrasse 42CH-4051 Basel
スイスの国内コンクール「スイスの最も美しい本」に今年は400冊の本が出品され、内33冊が選ばれた。
スイスの本のデザインは伝統があり、特にドイツ語圏が中心。中でもチューリヒが盛ん。
国内や国際賞を受賞する本は賞の性格上、デザイン、アート、詩など文化的な本が多いが、一方であらゆる分野の解説書が主流だという。
スイスのデザインレベルは高く、最優秀賞も今までに1995年、1997年と2回受賞し、今回で3度目の受賞。
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