世界にアピールできるか 愛知万博・スイス館
愛知万博がいよいよ開幕する。世界120カ国の政府代表や企業がこぞって出展するが、スイスはどれだけ世界にアピールできるのか。
2002年のスイス博覧会で芸術部門を担当したマーティン・へラーさんにその秘訣を聞いた。
——万博に参加する意義は何ですか?
万博への参加は、要はどれだけ世界にスイスを売り込めるかということ。そのためには一体どんなメッセージを込めるのか、そしてそれをどう伝えられるのかが鍵となる。
2000年のハノーバー万博(ドイツ)で日本館を訪れた時のことだが、そこで見た、和紙でできた建物が今でも忘れられない。忘れられないのは、和紙そのものが日本文化に他ならなかったからだと思う。
要は自分が伝えたいと思うメッセージを来館した人たちの頭にどれだけ刻むことができるか。それができて初めて成功と言える。
——1992年のセビリア万博(スペイン)で、「スイスは存在しない!」とのスローガンをスイス館が打ちあげて、国内で大騒ぎになったこともありましたが。
スイス国内ではこのスローガンだけが一人歩きをしてしまったが、当地のスイス館を訪れた人たちはスイス人とは全く違う反応をしていた。来館者にはスイスを知らない人もいて、このスローガンを好意的に受け取る人が多かった。
「スイスを知らない人はいない」とか、「今更スイスを世界にアピールする必要はない」という固定概念が強すぎるせいか、スイス人は自国の宣伝がかなり下手。
芸術家や建築家の方が、こうした大掛かりな万博でどうやったら自分たちの力を発揮できるのか知っているものだが、そこを政治家は理解せずに、スイスを批判していると勘違いして猪突猛進で切り込んでくる。非常に残念な話だ。
——今回の愛知万博で、スイス館は「山」がテーマ。あまりに紋切り型すぎませんか。
そうは思わない。問題は、こうした万博が数年に1回の割合でしか開かれないため、自分たちの国をアピールできる場数が少なく、腕を磨く機会が少ないということ。
今回の愛知万博にはずいぶんと若い世代が参加している。「山」という主題を彼らなりに独自の視点で捉えているはず。「スイス=山」という決り文句を逆手に取って、彼らの力を思う存分発揮してほしい。
swissinfo クリスチャン・ラーフラウブ 安達聡子(あだちさとこ)意訳
万国博覧会(万博):
国際条約に基づき、各国の技術や芸術を世界にむかってアピールする場。
パリのエッフェル塔は1889年のパリ万博のために建設された。
今回の愛知万博は21世紀最初の万博。日本で開かれるのは1970年の大阪万博以来となる。
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