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世界有数の建築家マリオ・ボッタがイタリアの近代美術館を完成.

MARTのクーポラの内側からの眺め. MART

5年間の工事を経て、トレント州の近代美術館がロヴェレートに15日からオープンした。

ここ50年間で一番美しい美術館だとイタリアでは言われている。

ボッタはトレント州から「トレント・ロヴェレート近代美術館」(MART)を造ってとの注文で建てた。「美術館とは呼ばないでくれ!」という。いかにもボッタの情熱が感じられる。ボッタが「美術館だけではなく芸術と発想の研究所」であると説明する理由は建物内に図書館や公会堂(演劇、音楽ホール)などを含み、アートセンターといった趣だからだ。

美術館 

大きなクーポラが突出するこの大きな建物は24、500平方メートルも及びおよそ、その半分を美術館の展示(絵画や彫刻など7000点収容)が占める。透明感のあるクーポラは高さ25メートル、直径40メートルの開かれた空間をつくり、ガラスと鉄鋼でできており、中から見上げると蜘蛛の巣を思い出させる。トレント州の文化省の責任者は「ローマのパンテオンのようでしょう」と誇っている。建物外観はビチェンツアの黄色い石で覆われ、ロヴェレートの街の色と同じだ。室内はボッタのトレードマークでもある183もの天窓で明かりを最大に取り入れ、気持ちがいい。

ボッタについて

スイス・ティチィーノ(イタリア語圏)出身のボッタは世界の頂点に立つ建築家の一人。日本でも、東京都渋谷区のワタリウム美術館を造り(1990年)知られているが、サンフランシスコの近代美術館(MOMA)が出世作で世界的に有名になった。ル・コルビュジェとルイ・カーンの助手を務めたこともあり、サンフランシスコの近代美術館はルイ・カーンの影響が現れているといわれる。

ボッタの作風

ボッタのスタイルは近代建築の機能的、合理的なアプローチを基本としながらも独自の伝統的な象徴性を加えたポストモダンの要素がある。シンプルな円筒などの幾何学的な形を好み、素材の元の優しい色を組み合わせ、あっと驚くような不思議な空間を作り出す。自然の光と開いた空間を大切にするところはカーンの影響だといわれる。建物と周りの風土との調和に気を配り、バーゼルのライン川に沿って建てられたティンゲリー美術館はそのよい例である。建築は時代の反映だと考えるボッタは「消費社会による文化の俗化、大衆化に対抗する術として」建築に携っていると語る。

MART,corso Bettini 43, Rovereto (Trente) 開館時間は10時から18時まで。(金曜日は22時半まで)月曜休館。入場料は3から8ユーロ。

バーゼル:ティンゲリー美術館、UBS銀行。
ルガーノ:バスターミナル、マリオ・ボッタ建築事務所、ゴタール銀行、ティチーノのカルダダ山ケーブルウェイ。
その他:モンテ・タマロのサンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会、ヴァレマッジアのサン・ジョバンニ・バチスタ教会などがある。

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