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旗振りとスカート

旗振りを再発見した女性は、スカートではなくズボンをはいて旗を振る Keystone

スイスの国旗を高く青空に投げ上げると、赤地の上に白十字がひらひらと舞う。すっと落ちてきたところをがっしりと捉えるのがスイス式の旗振りだ。伝統的に男性がすることになっている。

サース・フェー出身のエリカ・アンデンマッテンさん ( 52歳 ) は小柄な女性だが、旗振りをする。連邦ヨーデルフェスティバルのパレードでは、紳士用の民族衣装を着て旗を振った。

 「あらまあ、女性よ」と見物人の中から声が上がった。驚いたのも女性だった。アンデンマッテンさんの耳に今でも残っている。「パレードに参加した人からは当然という風に受け入れられたし、ほかには否定的な感想を聞かなかった」とアンデンマッテンさんは言う。

スカートが邪魔

 「アンデンマッテンさんが旗振りをしたのは、実は「旗振りの条項」に反するのです」と明かすのは、彼女に旗振りの指導をしたハンスリューディ・ツビンデンさんだ。条項に、旗振りは基本的に、「正式の民族衣装を着てする」とあるからだ。正式の民族衣装とは?男性は男性の民族衣装が正当。しかし女性が着るスカートの民族衣装で旗振りはできない。

 旗振りは、旗を空高く投げ上げ、落ちてくるところをしっかり受け止めるばかりではない。足の間を通すという動作もあり、女性の民族衣装を着ているとスカートが邪魔をする。スカートの問題をクリアすれば、女性でも立派に旗振りはできる。空中での舞わせ方によって、頭上の波、横突き、ウーリ風、ピラトゥスといった振り方があるが、アンデンマッテンさんはあらゆる旗の振り方をマスターしている。しかし、彼女でも「旗の下振り」はスカートが邪魔する。

コーチの協力

 「旗振り協会の条項だけが女性の参入を難しいものにしているわけではなく、女性で旗振りをしたいと思う人もいない」とコーチのツビンデンさんは言う。アンデンマッテンさんのほかにスイスで旗振りをする女性は1人だけ。そのほかに旗振りには高度な運動能力が強いられる。アンデンマッテンさんは軽い旗で練習したこともあり「女性用に軽い旗があれば」と彼女も認める。

承認は協会の手に

 旗振りをする人は、連邦ヨーデル協会 ( EJV ) の会員だ。理事長のマティアス・ヴュートリヒさんは、女性を受け入れるかどうかについて、即急なる判断は避けたいという。条項の解釈などがまずは必要。それにはEJV の旗振り専門委員会が、解決案を提示することだという。「この問題については検討中です。十分な時間をかけて、非の打ちどころのない分析をするつもりです」

 よって、9月1日から3日間にわたって開催される、スイスの民族祭「ウンシュプンネン」では、女性の旗振りは公式には参加しない。ウンシュプンネンの開催委員会は、EJV の意向を尊重する姿勢だ。とはいえ、ペーター・ウェンガー広報担当は、その発言の中で、女性の旗振りの技を紹介する機会を祭の中で設けられるのなら嬉しいといった様子を伺わせた。

 ウンシュプンネン祭は12年おきにある。次回の祭で男女同権が認められ、女性が旗を振るチャンスはありそうだ。

swissinfo、ハンス・トラクセル ( スイス通信 ) 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

旗振りはスイスの発祥地である中央スイスの伝統。ヨーデルやアルプホルンに並ぶスイスの伝統芸能で、連邦ヨーデル協会 ( EJV ) が管理している。海外にも14カ所に支部を持っている。

<EJV>
会員は2万5000人で、増加の傾向にある。
ウンシュプンネン祭は9月1日から3日間、インターラーケンで開催。昨年開催が予定されていたが、洪水の被害で今年に延期となった。

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