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歌がいっぱい ! スイスのクリスマス

ドイツ語圏では、こうした天使が贈り物も飾りも持ってくる swissinfo.ch

「クリスマスイブの12月24日は父方の祖父母の家で叔父や叔母など17人で、25日は母方の方で25人も集まり食事やプレゼント交換を楽しんだ」と主婦のクリスティーヌ・バレディエさん( 49歳 ) 。

「でも結局今も同じ。24日は2人の子どもを連れ義母の家へ、25日はわたしの両親の家でクリスマスをする」とクリスティーヌさんは続ける。スイスのクリスマスは何と言っても家族で祝う日。その祝いの雰囲気をモミの木に輝くろうそくやプレゼント、豪華な夕食、そして沢山のクリスマスソングが盛りたててくれる。

プレゼントは愛の証

 ヌーシャテル州レ・ポン・ドゥ・マルテル ( Les Ponts de Martel ) はプロテスタントの村。そしてこの時期は雪が深い。

 「クリスマスイブの24日、雪の中を教会に行くと天井まで届きそうなモミの木にろうそくがともされていた。牧師さんが聖書のキリスト生誕の章を読んでくれ、その後ピスタチオの実、みかん、黒砂糖パン ( ヌーシャテル州でビスコーム/biscôme と呼ぶ ) の入った袋を子どもたち全員がもらう。それがとても楽しみだった」

 とクリスティーヌさんは話す。

 その後、祖父母の家で夕食。メニューはいつもとちょっと違うご馳走。しかし毎年決まった定番はない。

 「七面鳥とクリ入りの赤キャベツを煮込んだものなど・・・ただしデザートだけは生クリームたっぷりの『ビュッシュ/ Bûche ( 薪の形のケーキ) 』を毎年必ず食べた」

 夕食後、子どもたちはクリスマスツリーの前で、学校で習ったキリスト生誕にまつわる詩を朗読する。それが終わってやっとプレゼントだ。

 「一つずつ開けていくプレゼントを家族全員が眺める上、両親、祖父母、叔父、叔母からと、1人が最低でも四つはもらうのでこの儀式が終わるのに2時間はかかった」

 以上のヌーシャテルでの風習は、現在はジュネーブに住むクリスティーヌさんだが、今も変わらないという。今年も25日には両親の家に行くが、母親と義理の姉から自分の子ども用のプレゼントをお金は出すから買ってくれと言われている。22日の今日まだ全部揃ってないので「夕食後街に買い物に行く」とあせる。

 

 しかし、なぜそんなにもプレゼントをするのかとの質問に

 「神はキリストを贈り物としてわれわれに与えることで愛を示した。プロテスタントでは、同様に贈り物を渡すことで愛を示すと言われているから」

 という答えが返ってきた。

歌で始まり歌で終わるクリスマス

 クリスティーヌさんは子どもの頃、25日の雪の降る朝に外から聞こえてくるクリスマスソングを暖かいベッドの中でうっとりと聞いたという。大人の聖歌隊が村のあちこちで朝8時ごろから歌を歌うからだ。

 

 「母親の歌声を聞きたいので、今年も生まれ故郷に23日から26日まで帰る」

と言うのは、ロマンシュ語を話すグラウビュンデン州の村シュコール ( Scuol ) 出身の画家ラディナ・ガウデンツさん ( 46歳  ) だ。

 この村も同じくプロテスタント。さらにラディナさんの父親はプロテスタントの牧師だ。

 「24日のイブは、午後から父も子どもたちもとても忙しかった。夕方4時ごろから小学生たち、その後で中、高校生たちのコーラスグループが、学校で習ったクリスマスソングを教会でそれぞれ1時間ずつ歌い、その後でちょっとしたプレゼントをもらう。歌がへたでもみんなプレゼントをもらえるので、この儀式が好きだった」

 と子どものころを懐かしむ。しかし、これは今も同じだという。

 その後、簡単な夕食を急いで食べ、今度は母親が大人のコーラスグループの一員として、村の「泉の広場」など数カ所でクリスマスソングを歌った。

 「今年も70歳を超えているが、母はこのコーラスグループで歌う予定。近所の人々が外に出て来て拍手を送り、こうした大人や子どもがグループと一緒に次の場所に移り、最後は大人数で歌を聞くクリスマスの一大行事になる」

 とラディナさんは話す。

 ではプレゼントはいつもらうのだろうか?

 「25日の夕食の後だった。この地方では、サンタクロースではなく天使が23日の夜にモミの木の飾りとプレゼントを運んで来る。24日の朝起きると、きれいに飾られたツリーに感激し、また木の下に並ぶプレゼントにわくわくしたが、それを開けるのは25日の夜で、それまで待たなければならなかった」

 と説明し、「でも山の子どもたちは我慢強いから」と言う。

 このプレゼントだが、今から3、40年前までは女の子には、叔父や叔母などがスプーンやフォークなどのテーブルセットを少しずつ将来の結婚式のために贈った。これはほぼスイス全土で同じだ。

 「6歳でも、欲しいお人形の代わりに銀のスプーンをもらった。いつもがっかりしていて、このプレゼントが大嫌いだった。こうしたスプーンなどどこにやったやら・・・捨てたかもしれない」

 とラディナさん。さすがに、現代にこういう風習はなく、「姪にはきれいな手袋を買って持って行く」と言う。

ドイツ語圏のクリストキント

 こうしたプロテスタントのクリスマスに対し、カトリックのクリスマスでは、家庭での儀式性が少し少ないようだ。その代わり24日の夜中に行われるミサは一大行事だ。ヴァレー州の村ヴァントーヌ ( Venthône ) に住むシャンタル・マッセレさん ( 75歳) は、

 「村の教会のミサに昔は必ず行った。聖歌隊がパイプオルガンの演奏でクリスマスソングを歌うのを聞くのが楽しみだった。その後、教会の外で熱い甘い赤ワインを飲みながらみんなと話をした」

 と言う。これは今も続いている。

 家では、今年も娘と息子が子どもたちを連れて24日の夜から泊まり込みで来る。

 「24日は簡単なヴァレーの干し肉とチーズを食べる。デザートだけは毎年ビュッシュを作るが。子どもたちはクリスマスツリーの前で歌を歌い、その後プレゼントを開ける。でも、プレゼントの数は多くない」

 と言う。25日のお昼は、普通よりちょっと豪華な肉料理をするが、この地方ではクリスマスは家族と過ごすことが一番大切で豪華なことはしないという。

 同じくカトリックのザンクトガレン州の村ウイドナウ ( Widnau) のシュテファニー・スピリグさん( 85歳 ) の所も様子は似ている。

 ただスイスドイツ語圏では、23日頃から始まる大掃除に続き、24日はとにかく忙しい。というのもほぼすべての州で、夕方ないしは夜に「クリストキント ( Krist Kind ) 」という天使が、クリスマスツリーの飾りとプレゼントを持ってくるからだ。

 子どもたちを父親が親戚の家に連れ出したり、または寝てしまったりした後に、親たちは必死でモミの木を飾り、隠しておいたプレゼントを並べる。同時に夕食の準備もしなければならないので大変だ。

 「昔は自分の子どもがツリーの前で歌ってくれた歌や、今は孫がフルートなどを演奏してくれるのを聞くとき、しみじみとクリスマスを味わう」

 とシュテファニーさんは言う。

 どこの家でもスイスでは、家族ができるだけ多く集まり、豪華にまたは少し質素に食事をし、クリスマスツリーを囲んでプレゼントを開ける。そして歌や楽器の演奏がとても大切な役割を演じ、雰囲気に花を添えてくれるようだ。

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