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歌麿の作品が初めて大英博物館から国外へ

喜多川歌麿「歌まくら」より、“茶屋の二階座敷の男女”、天明8年正月刊(1788)、大判絵折帖1冊、大英博物館. Museum Reitberg

チューリッヒのリートベルグ美術館で江戸時代の春画を展示。「芸術における愛の表現」というテーマで日本部門では喜多川歌麿、杉村治兵衛などの浮世絵やリートベルグ美術館コレクションの能面などが見られる。

展覧会のテーマは“愛の表現”で大陸、時代をまたがって様々な文明から芸術的に最も優れた作品を選んだ。ポルノグラフィックな作品も多いため16歳以下の入場は禁止である。

歌麿を鑑賞できる貴重な機会

 “青楼の絵師”と歌われた喜多川歌麿(1753-1806)は浮世絵の大首絵の美人を描いて爆発的な人気を得たが、数多くの春画も残している。この絵師の全体の3割が遊女絵群に当たり、禁じられた主題を描き入牢されたともいわれる。現展覧会は日本では見られない大英博物館秘蔵の「歌まくら」、天明8(1788)年正月序刊の12点と「絵本笑い上戸」、享和3(1803)年頃、彩色摺枕絵本の三冊が鑑賞できる。日本美術担当の学芸員、エプレヒトさんによると、1996年に東京で行われた歌麿の回顧展で大英博物館から送られた春画が税関でストップされ、日本の鑑賞者は見られずじまいだったという。歌麿の作品を選んだのは、生き生きとした表情や指先にまで感じられるニュアンスなど内面に潜む人物の心理を見事に表現しているからだ。「日本での愛の表現は浮世絵が一番多く、この時代の作品が最も心を打つから選んだ」という。浮世絵はその他4点の杉村治兵衛(生没年不詳、17世紀後半、寛文期)の作品と共に、6点ずつ、光で傷まないように入れ替えられ、最大の配慮が施されている。

愛の表現がテーマ

 リートベルグ美術館はもともとフォン・デア・ハイト男爵のコレクションを基にできた美術館で日本の浮世絵や東アジアの絵画、カンボジアやインドの仏像彫刻などのコレクションを所蔵する。現在は非西洋美術館でアジアの他、アフリカや南米などいろいろな部門に分かれているため、共通のテーマで展覧会をやろうとのアイディアが生まれた。愛やエロチシズムが儀式化したり、宗教的だったり、挑発的だったりと時代や文化によって様々な表現が見られて興味深い。展示では、その他に古代ギリシア時代の同性愛カップル、ローマ時代の売春婦、インドの愛のマニュアルなど好奇心を刺激する作品が盛りだくさんだ。リートベルグ美術館は96年に長谷川等伯の回顧展をやったことで日本人にも馴染みの美術館である。

展覧会は4月27日まで。16歳以下は入場禁止。世界各地から貸し出された作品は230点。日本の他、古代ギリシア、ペルシア、インド、中国やペルーなどの作品も見られる。
行き方:チューリッヒ駅から市電7番リートベルグ美術館で下車/10時〜17時まで/月曜休館。

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