スイス最大のサーカス団クニーがベルンで初公演を披露したのは100年前の6月14日。それはサーカス王国の始まりを告げる一幕だった。
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19世紀初め。若い医学生フリードリヒ・クニーは、オーストリアのインスブルックで芸術家のヴィルマに出会い、恋に落ちた。芸術家の生活に魅了され、クニーは研究を中断して芸術家一行とともにオーストリア中を巡った。
恋愛は短命に終わったが、フリードリヒは1806年にアクロバット集団を結成。高く評価され名声を得て、スイスにも登場するようになった。そしてクニー一族の一部がスイスに定住しはじめ、スイス国籍も獲得した。
野外アリーナからテントまで
その100年後。創始者のひ孫にあたるフリードリヒ、ルドルフ、カール、オイゲン・クニーの4兄弟が2本柱テントをローンで入手し、一族の長年の夢だった屋内公演をついに実現させた。
1919年6月14日にテントで行われた初公演と情事に「スイス・ナショナルサーカス・クニー」社が誕生した。タイミングよくサーカスは好評を博した。同じ年、4兄弟はチューリヒ湖畔ラッパースヴィルに常設の冬季用宿舎を建てることができた。
長く激しい戦争後、クニー一家はナチ党員の間で嫌われ者となった。1983年にゲスト出演したドイツで、ハーケンクロイツ(鉤十字)の紋章を旗から消したためだ。だがサーカスには再び人気が集まり、戦争に参画しなかったスイスで働こうと、世界中から曲芸師が集まった。
今日のサーカス王国を司るのはクニー一家の7代目だ。サーカス・クニーのツアーには320人が従事し80匹の動物が同行する。
戦時・戦後のクニーを振り返るこれらの写真からは、人々はまばゆいばかりの豪華なサーカスに、異国の世界を垣間見ていたことが分かる。
(写真は全てPhotopress-Archiv/Keystone)
#swisshistorypicsシリーズでは、スイスの芸術・文化・スポーツにまつわる歴史的な出来事を写真で振り返ります。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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年齢をもろともせず、常にディミトリさんは舞台の上に立って離れ業を披露してきた。大きく横に広がった口の中に卓球のピンポン玉をたくさん詰めて見せては、子どもたちを笑わせた。
ディミトリさんが亡くなったのは19日夜。ディミトリさんの娘がイタリア語圏スイス公共放送(RSI)に対し明らかにした。
ディミトリさんの本名はディミトリ・ヤーコブ・ミュラー。スイス南部のティチーノ州アスコーナで幼少期を過ごした後、陶工の職業訓練を受ける傍ら演劇と曲芸を学んだ。その後、パリでパントマイムや綱渡りの技を取得し、スイスのサーカス団「クニー」に参加。団員として世界を巡業した。
ディミトリさんは天分豊かな画家そして歌手でもあった。友人のロベルト・マッジーニさんと共にティチーノ州の伝統的な歌を演奏してみせた。また1970年に妻と共同でティチーノ州ヴェルシオに劇場を、75年には演劇学校を設立。78年には自身のオリジナル作品を演じた。
昨年秋に行われたスイスインフォの取材に対し、ディミトリさんは「今、健康であり、世界で最高の職についている。私は運がいいのだと思う」と言い、毎日3時間の練習と、舞台の数をこなすことを心掛けていると話していた。また死に対する恐怖があることを認めた上で、死ぬこと自体よりも、病気や苦しみなどを想像すると怖くなると説明した。あの世があると信じ、ディミトリさんはこう話した。「死後、身体はうじ虫に食べられてしまうが、私たちは無形で存在し続けると信じている」
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