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極寒でも温暖化は進んでいる

今年の冬は大雪だった Keystone

今年の冬は極寒で記録的に気温が下がり、降雪量も平年の2倍だった。この異常な冬は地球の温暖化とは別なのだろうか。ベルン大学の気象学教授ハインツ・ヴァンナー氏は、長い気象史の中で見ると、見かけより温暖化は進んでいると言う。

気候・気象リサーチグループ「クリメット( Klimet ) 」を指揮するヴァンナー氏は過去30年間の気象は、1万年前の気象状態に影響されると言う。一方で同氏は、人間が気象に与える影響を研究している。

swissinfo : 今年は特に厳しい冬でした。地球の温暖化は進んでいるのか疑いたくなります。

ヴァンナー : まず始めに、最近の気象の変化を、自然によるものなのか人間による影響があるのかどうかを本当に知りたいのなら、非常に長い時間と広域の気象を見る必要があります。地球に一部が温まると、ほかの地域は気温が下がる。唯一正しい答えは、グローバルなレベルで見た場合に出される答えです。地域レベル、一部の土地に起こる気象上の現象は自然による誤差です。

swissinfo : それでは、地球レベルで起こってることとスイスの気象の関係はなんですか。

ヴァンナー : 地球レベルでは過去30年間に気温は0.2度上昇しました。スイスではそれより高く0.3度です。

swissinfo : それでも、スイスでは今年の冬は寒く雪も多く降りました。

ヴァンナー : 南西と中央ヨーロッパにおける異常な寒さです。アルプスの一部と平野部で雪に覆われている期間がある程度長く、記録的なものもあるでしょう。しかしそれは地域的なものです。毎日「記録的」ことは起こっています。しかし、私たちが研究しているのは、長期にわたるもので、地球規模であるということです。

swissinfo : 雪が多かった理由はなんですか。

ヴァンナー : 気象に最大に影響するのは、北大西洋での変動です。西風が強く吹くのか弱いのかといった決め手となるものです。アゾレス諸島とアイスランドの気圧で測定されます。気圧が高ければ西風は強く欧州大陸は暖かくなります。気圧が低ければ、われわれは北風の流れにさらされ雪が降り寒くなります。今年の冬は典型的な低気圧で、東からも風が吹いたため極寒になったのです。同じ現象は1956年、1963年にも起きました。この年には湖まで凍りつき、スケートができました。とはいえ、これはシーソーです。ここが寒ければ、ヨーロッパの北東では暖かいといったものです。

swissinfo : そのシーソーは今でも同じように動いていますか。

ヴァンナー : 数百年前にさかのぼると、過去にこのようなことが起こったことが分かります。1950年前までは高気圧でした、1950年代から70年代は低気圧で、70年代から90年代までは明らかに高気圧になり、いま再び低気圧になっています。北太平洋の変動の調査は、始めたばかりでよくは分かっていないのですが、面白いことに、15年のサークルで動いているようです。過去200年間の推移がこのまま続くとすると、寒い冬が再び訪れるでしょう。

swissinfo : ということは、スキー休暇のためにホテルなどを早めに予約しておく必要がありますか。

ヴァンナー : いいえ。気象は皮肉屋です。はっきりしたことは絶対に分かりません。向こう5年から7年まで冬はより寒いと言っても、その間の1年は暖かかったりします。5日間までの天気予報はできますが、冬季の予報はできないのです。2、3 カ月間といった季節ごとの予報をするようになったのは最近のことですが、それでも当てるのは非常に難しいものです。

swissinfo : 寒く湿度が高いという気候と暖かく乾燥しているという気候が巡って来るというのは、自然であり地球の温暖化とは関係ないということでしょうか。

ヴァンナー : これは、激しく変化する自然による自然な影響です。温暖化を説明するためには、地球のエネルギーバランスを研究する必要があります。太陽系から地球に来るエネルギーの量です。地球の楕円形に動く軌道と、太陽で発生する自然条件が影響します。そのほか人間が起こした条件もあります。例えば、温室効果ガス、土地利用、空気汚染といったものも関係してきます。こうした条件のバランスが研究されなければなりません。その中で唯一増加しているのが温室効果ガスです。よって、地球の温暖化は人間の影響が大きいわけです。

swissinfo : 人間は環境に非常に簡単に適合することができる動物ですが、高温環境で生きていくしかないのでしょうか。

ヴァンナー : これは、北の先進国の金持ちだけの問題ではありません。アフリカなど途上国の人間にとってはどうでしょう。今でさえ十分な水がない上、使える水の量は減る傾向にあります。わたしたちは、こうした状況を打開し、途上国の人間を助けることが必要です。技術で助けられず、問題を解決できないのなら、将来、問題は深刻になるでしょう。

swissinfo、ティム・ネヴィル 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

ハインツ・ヴァンナー氏も子供のころはもっと寒く雪が多かったという思い出がある。これは科学的に立証できることなのか。それとも昔を懐かしむ郷愁か?

「連邦雪・雪崩研究所 ( slf / ダボス ) 」の研究者クリストフ・マルティ氏によると、実際、以前はスイスの冬は雪が多かったと言う。
「われわれの調査では、標高1300メートル以下の多くの地点で雪が大幅に減少する傾向にある」
 とマルティ氏は調査報告書に記している。「特に、スイスの平野部 ( 標高400メートル ) では130年前に気象台始まって以来の平年の降雪量や、300年以上前の歴史的記録などと比べると、過去20年間の降雪量は減少している」 
 という。標高2000メートル以上では降雪量が減ったという兆候はないが、1500メートルから2500メートルでは、過去20年間、春に雪が解けるスピードが速くなっている。これは、気温が高くなったからで、雨量や降雪量の増減には関係ない。

1961年から1990年まで、バーゼルからラントクワルト ( Landquart ) までの平野部で、12月から3月まで5センチメートル以上雪の降った日数は、1980年代後半には27日から13日と急激に減少した。チューリヒは今年、雪が降った日は40日以上あったが、昨年は2日だった。しかし1963年には90日近くあった。

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