議員の選出方法と言えば、「選挙」が真っ先に挙がるだろう。だが実際、選挙はどれほど民主的だろうか?民主主義の起源である古代アテネでは、議員は「くじ引き」で選ばれた。この最も公平とされる「くじ引き民主主義」の導入を求める動きが今、スイスで起きている。ローザンヌ出身の二人の若手研究者に、くじ引きの歴史を聞いた。
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選挙の行方を決めるのは、政治エリートと資金――。スイスの民主主義にはたびたび、こうした批判が集まる。それならば代替案として「くじ引き」はどうかという提案があちこちから上がっている。候補者の出身、特定の利害関係の影響、人脈と切り離して議員を選べる利点があるとされる。
スイスではすでに、くじ引きの導入を目指す動きが起きている。市民団体「指名の世代」は、国民議会(下院)の議員選出方法にくじ引きを提案。ビール(ビエンヌ)市では「パッセレル運動」が、市議会議員の半数をくじ引きで選ぶよう要求。連邦レベルでは、連邦裁判所裁判官をくじ引きで選ぶ案が国民発議(イニシアチブ)で提起されている。
そもそも、くじ引きは新しい方法ではない。その起源は、民主主義の始まりである古代ギリシャにさかのぼる。このテーマに取り組むローザンヌ大学の若手政治学者、マクシム・メリナさんとオーレル・デュピュイさんに、くじ引きの歴史を簡単に説明してもらった。
(独語からの翻訳・鹿島田芙美)
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「くじ引き選挙」。それは突拍子もない提案だろうか。街角の声を聞くと、一考の余地ありと考える人の方が多数派だ。下院議員をくじ引きで決める仕組みの導入を求めるイニシアチブ(国民発議)に向け、準備運動を代表する2人が街ゆく人に意見を聞いた。
「週の半分働く50%勤務で年間12万フラン(約1360万円)の収入があれば、(その仕事を)やってみたいですか?」。イニシアチブの準備運動を行うシャーリー・パッシュさんとニコラス・ロカテッリさんがフリブールの中心で配っているポストカードに記された一文だ。パッシュさんは「指名の世代」運動の責任者で、ロカテッリさんはその同志だ。
ポストカードは計画中のイニシアチブ「真の代表たる国民議員(下院議員)」という真剣なテーマについてユーモラスな切り口で説明する。投票の実現に向け、提案をさまざまな角度から解説する。
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