スイスで国民投票にかけられるテーマは時に複雑で、賛成・反対派がキャンペーン活動で何を主張しているのかを把握するのも一苦労することがある。ジュネーブ大学で民主主義を研究するシャーリー・パシュ氏は、「市民パネル」を巻き込んだある実験を行った。出来る限り個々の関連性がないメンバーが集まるよう、市民パネルの参加者は抽選で選出。そしてさまざまな情報から一つのバランスの取れた意見を形作る過程に携わってもらった。
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これは市民パネルが任務をしっかり認識するための前提条件でもある。任務とは、国民投票のキャンペーンの中から有権者に中立で正確な情報だけを選び出すことだ。
中立とは、どう投票するかを決めるための土台であり、均衡を保ち特定の利害関係に属していないことを意味する。さらに理解しやすい言葉で示されたものだ。
模範は米オレゴン州
2019年、スイスでも初めて市民パネルを使った試みが行われる。パシュ氏がジュネーブ州のくつかの自治体で実地試験を準備しているのだ。
市民パネルは市民フォーラムなどとも呼ばれるが、アイデアはスイスのオリジナルではない。米国のいくつかの州では既にその存在意義を証明済みで、直接民主制になくてはならないものとなっている。市民パネルの名付け親となったオレゴン州で、パシュ氏がオレゴンモデルについて解説する。
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