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GM植物の野外実験にゴーサイン

まもなくGM小麦の野外栽培実験が始まる Keystone

チューリヒ大学とチューリヒ工科大学 ( ETHZ ) が遺伝子組み換え ( GM ) 植物を使った3つの野外実験を行うことになった。

連邦環境省環境局 ( BAFU/OFEV ) は先日、厳しい条件を出しながらもこの実験を許可した。

 実験は、チューリヒ州レッケンホルツ ( Reckenholz ) とローザンヌ近郊のピュイ ( Pully ) で行われる予定だ。この連邦決議に対し、環境保護団体のグリーンピース ( Greenpeace ) は激しく抗議した。

許可の理由

 「遺伝子技術法ができたおかげで明白で実用的な法的基盤が作られました」と言うのは、連邦環境省観光局長のブルーノ・オーベルレ氏。許可を得るための条件は、2003年の前回の申請時と大きく異なっている。

 例えば、チューリヒ工科大学は2003年当時、小麦に抗生物質耐性のマーカー遺伝子を使用していたが、これは2008年末に認められなくなる。また、「利用される遺伝子関連製品は栽培植物に由来し、スイスの自然環境にすでに存在しているものであるため、野外で栽培しても自然環境に新たな関係が生み出されることはない」とオーベルレ氏は言う。

 「ですから、人間や環境に悪影響が出ることはないという結論に達したわけです。実験は常に監視されており、安全性はしっかりと保証されています。栽培は覆いつきの畑で行われ、警察の保護下に置かれます」。また、これらの植物はほかの植物から300メートル離れており、実験が終わればすべて廃棄処分されることになっている。

抗議と認可

 チューリヒ大学とチューリヒ工科大学は、チューリヒ州レッケンホルツとローザンヌ近郊のプイで、2008年から2010年までGM小麦および小麦と野生小麦の交配種を研究のため野外栽培する予定だ。しかし、この申請に対して29件の抗議が提出されている。

 連邦環境局は今回の3つの野外栽培をすべて認可した。この決定を下すに当たっては連邦や州の関連専門機関にも相談し、連邦内務省保健局 ( BAG/OFSP ) や連邦経済省農業局 ( BLW/OFAG ) 、連邦経済省獣医局 ( BVET/OVF ) の同意を得ている。

 とりわけ大切な前提条件として、チューリヒ大学とチューリヒ工科大学は遅くとも今年末までに緊急時の対策を提出しなければならない。また、2008年と2009年の年末には、実験経過の中間報告も義務付けられている。さらに、実験用地の警備や実験用植物の廃棄処分、使用機械の洗浄などに関する規則も定められている。

抗議の資格

 連邦環境局はまた、抗議提出者の中でその資格があるのは誰かということについても決定し、実験用地の周囲1000メートル以内に住んでいる者と定めた。チューリヒの抗議提出者2名はどちらもこの範囲内に住んでいない。

 オーベルレ氏によると、連邦行政裁判所に提出できる抗議はプイで出ている27件の中の11件のみ。ただし、このような抗議に対する制限にも、また常時、抗議することができる。

チューリヒ工科大学は決定を歓迎

 チューリヒ工科大学のヴィルヘルム・グルイッセム氏は連邦環境局のこの決定を歓迎した。外国で似たような実験を行おうとすると、その条件は極めて厳しいという。

 実験にかかる時間と費用はたいへんなものだ。その上、不明な点や実行可能かどうかという点についても詳細に調べなければならない。しかし、グルイッセム氏は、来年春にはこの野外実験を開始したいと思っている。そして、この実験は慎重に実行されると太鼓判を押す。

問われる必要性

 一方、自然保護団体の「プロ・ナトゥーラ ( Pro Natura ) 」から見れば、連邦環境局の条件は厳しくもなく、十分でもない。このGM 小麦プロジェクトには現実的に研究の必要性がないと見ている。

 さらに、グリーンピースも人間や動物、環境に対するリスクを計るためにスイスでGM植物の野外栽培を行う必要はないと非難している。ほかの生物への影響は、まず研究室か温室で実験するべきだと主張する。

 「人体への影響などの重要な問題は、そろそろ長期的な研究で解明されるべき」。このように考えるグリーンピースは、連邦環境局の主張を詳細に検討し、GM植物の種を蒔かせない方法を探るつもりだ。

swissinfo、外電 小山千早 ( こやま ちはや )

遺伝子技術法によると、遺伝子組み換え作物 ( GMO ) の野外実験には連邦の許可を必要とする。

スイスでは、これまでにGM植物の野外実験が3回行われている。

1991年と1992年、ヴォー州のシャンジャン ( Changins ) 研究所でGMジャガイモが栽培された。

1998年に提出されたGMトウモロコシとGMジャガイモの栽培実験の申請は却下された。

2004年、チューリヒ工科大学 ( ETHZ ) 植物学研究所が真菌類に耐性のある小麦の実験を行った。

2005年11月27日、消費者保護団体、環境保護団体、農家団体が起こしたイニシアチブ「遺伝子技術を用いない農産物を」が国民投票で55.7%の支持率を得、連邦内閣や連邦議会の意図に反して可決された。

26の州のうち、このイニシアチブを否決した州は1つもなかった。つまり、すべての州で有権者の過半数がイニシアチブに賛成したのである。

その後の5年間、スイスの農家はGM植物の栽培やGM動物の飼育を禁止されている。

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