あなたにも開かれている宇宙
スイスの元宇宙飛行士、クロード・ニコリエール氏は、「宇宙飛行は全ての人に開かれている」と言う。
また、難航しているヨーロッパの衛星測位システム「ガリレオ計画」もうまくいくと語った。
欧州宇宙機関 ( ESA ) と欧州連合 ( EU ) が 共同で進めてきた「ガリレオ計画」は、30個の衛星から自動車、船舶ナビゲーションや航空交通管理なども行う衛星測位システム。アメリカの全地球測位システム ( GPS ) に対抗するものである。しかし、EU加盟国間の財政政策上の問題から、この計画は中断され、運用開始が当初の2008年から2011年に延期されていた。スイスはこれに4950万フラン ( 約49億円 ) を投入し、原子時計なども提供してきた。ESA を今年3月に退職したニコリエール氏に話を聞いた。
swissinfo : お金持ちが宇宙旅行することをどう思われますか?
ニコリエール : 「宇宙旅行」という言い方は避けたい、「誰にでも開かれている宇宙」と提言したいのです。無重力の感覚、宇宙からみる地球など、一生に一度の素晴らしい経験にお金を使いたい人は多いものです。お金さえあれば実現できるとなると、やってみたくなるのは当然です。
航空の世界では、パイロットとお客がいる。お客はただきれいな風景をながめていればいい。それと同じことです。プロの宇宙飛行士が指導して連れていけばいいのです。
ところが宇宙飛行の場合、何年も訓練を受ける宇宙飛行士に自分を例えて「自分も行った」と自慢する人がでてくることでしょう。しかし、プロでない人が宇宙にでかけることをプロの宇宙飛行士も認めていいと思いますよ。深い豊かな経験を分かち合い、地球に関する知識を増やしていくことは素晴らしいことですから。
swissinfo : 「ガリレオ計画」は最近困難に遭遇していますが。
ニコリエール : 絶えず困難がつきまとう計画です。EUの大きな国々が当初に決めていた分担以上のことを要求しているからです。
まあ進行途中で竜巻が起こった感じですが、これからはうまくいくと思います。ヨーロッパが独自のナビゲーションシステムを持つことはとても大切なことで、この計画を捨てるわけにはいきませんから。
swissinfo : 宇宙開発計画で果たすスイスの役割はどういったものでしょうか。
ニコリエール : スイスは小さな国ですが、ESAの他のメンバー国から非常に大事にされています。実際のところ、スイスはESAの創始国の1つなのです。
それに、スイスの色々な製造会社が示す「職人気質」は有名です。スイスの「時計職人」が宇宙船用に、電気やメカで質の悪い装置を提供するはずがないといわれています。
swissinfo : もしまだ宇宙飛行士として活躍されるとしたら、どういうことをなさりたいですか。
ニコリエール : 宇宙飛行士が乗り込めるもので、天文学の研究に貢献できるようなものであれば飛行したいです。来年の末に宇宙望遠鏡ハブルに行く計画があります。これの一員になりたかった。僕は宇宙について多くの知識を広げてくれる宇宙望遠鏡を素晴らしいものだと思っていますから。
その他では、月や火星に行きたかったですね。他の天体の上を歩くのは全ての宇宙飛行士の夢ですから。しかし残念ながらこれは夢のままで終わります。
swissinfo、 聞き手 マチュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 意訳
クロード・ニコリエール氏略歴
1944年生まれ
1975年、ジュネーブ大学にて修士号取得
1966年、スイス空軍のパイロットとして働く
1978年、欧州宇宙機関 ( ESA ) の初めての宇宙飛行士の一員となる
1980年、アメリカの宇宙計画に入り、NASAのスペース・シャトルのスペシャリストのチームに入る。
1992、1993、1996、1999年の4回、計1000時間の宇宙飛行を記録した。
最後の仕事で、ハブル宇宙望遠鏡の修理のため、8時間以上に渡って「宇宙空間を歩いた」
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