スイス、人道支援の偏りを懸念 津波災害の陰で

スマトラ沖大地震と津波災害に世界の関心が集まる中、スイスのボランティア団体から資金援助の偏りを懸念する声が上がっている。
今回の津波支援でスイスは福祉団体「幸福の鎖」だけでも1億6,500万フラン(約142億円)を集めた。
一方、アフリカなど他の地域で活動している人道支援には十分な資金が集まらず、プログラムの見直しを迫られる団体も出始めている。「古い危機」を置き去りにしないため、地震と津波の被災地に向けられた募金の一部を他へ振り分ける考えがボランティア団体の間で浮上している。
津波災害の陰で
国連によると、12月26日に起きたスマトラ沖大地震と津波による犠牲者は18万人を超えた。
被災者のために国連が各国政府に要請していた緊急支援10億ドル(約1,000億円)は現在、その約7割が確保されており、中長期の復興支援も含めると、全体の支援額は総額50億ドル(約5,110億円)を上回るという。
スイス放送協会が指揮する福祉団体「幸福の鎖」も、クリスマスの時期と重なったことを背景に、地震と津波発生から2週間で1億4,000万フラン(約120億円)を集めた。現在は過去最高の1億6,500万フランを記録。
これに対し、エマウス・ハンセン病救済協会のルネ・シュテーリ会長は「津波で被害を受けた人たちへの関心が大きい半面、他の地域への目配りが欠けてしまっているのではないかと心配だ」と話す。
同会長によると、2003年12月にイランの古都バムでおきた大地震の際も、エマウス・ハンセン病救済協会に寄せられた寄付金が例年より減った。
他の地域にも配慮
こうした人道支援が特定地域に偏る背後には、テレビなどのメディアが地震と津波報道一色になったことも一因としてある、とボランティア団体は指摘する。
報道は少ないものの、ソマリアやコンゴなどの紛争地帯でも、水や医薬品、寝具など援助を求めている人たちがいる。
ペスタロッチ児童財団の会長で、「幸福の鎖」事務局員も兼任するマルクス・マーダーさんは、スマトラ沖地震と津波で集まった多大な資金を他の支援プログラムに回すかどうか検討する方針だと話す。
「津波の募金活動を始めてからまだ日が浅く、ここが限度と区切ることはできない。だが、ある時点で集まったお金の一部を他の地域の支援に回す必要があると感じている」と話している。
swissinfo モルヴン・マクレーン 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スマトラ沖大地震:
国連によると、スマトラ沖大地震と津波の犠牲者は現在18万人を超えた。
アナン国連事務総長は、約500万人の被災者のために半年間で約10億ドル(約1,000億円)が必要と訴えている。

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