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スイスの湖、水温上昇で魚種が減少

気候変動の専門家によると、スイスとフランスにまたがるアルプス最大の湖・レマン湖では、海洋の4~5倍の速さで水温が上昇している。このため近年、パーチやフェラ(ホワイトフィッシュ)、ホッキョクイワナなど、湖を代表する魚が激減。地元漁師の生活は厳しくなっている。

スイスで温暖化が進むにつれ、湖、淡水魚やその生息地にも悪影響が出ている。連邦給水・排水浄化・水域保護研究所(Eawag)によると、2023年に続き猛暑に見舞われたこの夏、レマン湖の水面近くの水温は8月初旬に約26度に達した。昨年同月に記録した過去最高水温の27度に近い。

ヴォー州環境局の科学者ドリアン・バーン氏は、レマン湖で魚の資源量が減少している原因の一つは気温の上昇と気候変動にあると考えている。同氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)に対し、「耐えられる水温の幅が狭く、適水温が低い、いわゆる狭温性の冷水魚は、地球温暖化の深刻な影響を受けている生物の一つだ」と述べた。

RTSに提供された仏スイス共同のデータを見れば、レマン湖で魚の資源量が減少しているのは明らかだ。漁師や釣り愛好家の漁獲量が激減している。2014年に30トンあったホッキョクイワナの漁獲量は現在10トンに満たない。トラウトは15トンから10トン弱まで減少。フェラは1千トンから200トンまで落ちこんだ。

湖水の「循環」

専門家は、湖水が循環せず、魚や他の生物に悪影響を及ぼしていることを問題視する。Eawagは2021年、気候変動がスイスで水温や氷冠の面積、多くの湖の循環を著しく変える恐れがあると警告した。この予測が現実になりつつある。

スイスの高山や中低山にある湖の多くでは、春と秋に湖水が表層から底層まで循環する。酸素は豊富だが栄養の少ない湖面近くの水が、酸素は欠乏しているが栄養豊富な湖底の水と混じる現象だ。Eawagは、気候変動がこの循環を大きく妨げていると指摘する。Eawag表層水研究局のロヴェ・ローマン・ヴィンノア氏は「湖水の循環が気候変動の影響をどれだけ強く受けるかは、主に湖の標高と大きさによる。特に中低山にある湖は非常に敏感だ」と説明する。

温暖化する湖、漁師に打撃

レマン湖の漁師フランソワ・リアニ氏は今夏、このような変化を目の当たりにし、RTSの取材にこう語った。「例年この時期ならパーチが通常50~60キロ捕れるが、今日は6~7キロだった。請求書を支払うため、貯蓄を取り崩している」

この動画では、レマン湖の温暖化について、直接被害を受けている人々やこの現象を精査する科学者らに話を聞く。

編集:Reto Gysi von Wartburg、英語からの翻訳:江藤真理、校正:ムートゥ朋子

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