スイス下院、大麻の合法化法案を否決
スイス下院は14日、政府が提出した大麻(マリファナ)の合法化を求める薬事法改正法案を102対92と僅差で否決した。
大麻だけを対象にすることで、コカインなど粗悪な薬物の排除が可能となり、青少年を含む使用者の保護につながるとの主張が退けられた形だ。
大麻の合法化を下院が否決したのは昨年9月に続いて2度目。今回の決定に青少年の大麻吸引に頭を痛める学校関係者や司法当局は大きな不満を表明している。大麻合法化をめぐる政府と議会の攻防はさらに続きそうだ。
合法化求める声
スイスは薬物使用者に寛容な対応を示す国として知られており、公園など公共の場で大麻を吸っている人の姿がよく見かけられる。全人口730万人のうち、およそ50万人(約7%)が大麻の常用者ともいわれる。青少年による吸引も急速に増えており、父兄や学校関係者、司法当局は早急の対応を迫られている。
今回、政府が提案した内容は、個人が大麻を所持・消費する範囲に限り、一定の売買を合法化する、としていた。
アルコール・薬物中毒防止機関のミッシェル・グラフさんは、「国会議員が弱腰だから可決できなかった」と語り、「(粗悪な薬物を取り締まる)新しい予防体制を築く機会を逃した」と悔しがる。
連邦内務省厚生局のトーマス・ツェルトナー部長は浮上する新たな問題に危機感を抱く。「今回の否決が原因で各自治体が独自の薬物法案を成立させるのではないかと心配している。もしそうなれば、同じ薬物でも州ごとに扱い方が異なり、不平等を生みかねない」と話している。
躊躇する理由
大麻の合法化に反対する人にも言い分がある。人民党(右派)などの政党で構成された社会安全厚生委員会のルーツ・フーベル・ネフさんは、こう主張する。
「大麻が違法薬物と指定されているからこそ、若者を薬物汚染から救える。合法化になれば、欧州各地の常用者のメッカになる恐れがある」と懸念の声を寄せる。また、大麻を許せば、他の違法薬物の使用がエスカレートするのではないかと心配する見方もある。
合法化を訴える民主党(中道左派)や緑の党が率いる、「薬物犯罪から青少年を救済する委員会」は再度、大麻の合法化を狙う考えだ。同委員会によると、「現実的な大麻政策と青少年を守る有効な保護政策を掛け合わせた」薬事法改正法案を練っているという。
新改正案は7月下旬をメドに示される見通し。
スイス国際放送 通信社電 安達聡子(あだちさとこ)
大麻にはさまざまな形、通称がある。
�@草 乾燥させた数種類の大麻の葉や花のこと。マリファナ、ハーブ、ヘンプとも呼ばれる。
�Aハシシュ 大麻から取れる樹脂や花粉で作られる。ハッシュ、シット、チョコとも呼ばれる。
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