スイス人も燃えつき症候群
スイスでもストレスや仕事のし過ぎによって体調を崩す人が増えてきた。このほど政府主催で開かれた「職場における健康促進会議」では、スイスでも燃えつき症候群が増えているとして、専門家から多くの懸念の声が聞かれた。
調査によると、燃えつき症候群は仕事の時間数よりも仕事環境の要因が大きいらしい。
「燃えつき症候群を人々に理解させるためには、職場で特別な訓練が必要です」とドレスデン大学(心理学専門)のペーター・リヒター教授は語る。
燃えつき症候群にかかりやすい職種
「燃えつき症候群の最大の原因は、お互いに協力し合えていないと感じることです。違う言い方で言えば、自分がやっている割には、返ってくるものはそれほど多くないと感じると、燃えつき症候群にかかりやすくなります」とリヒター教授は語る。
この傾向が顕著なのが電話のオペレーターの仕事だ。仕事内容は乏しく、責任もなく、自分の裁量がほとんど効かないコールセンターの仕事に従事している人にとって、燃えつき症候群のリスクは特に高い。
「また、フリーで働いている人も高いリスクがあります。彼らは安定した仕事に就いておらず、福祉もない不安定な状態で上司や同僚からサポートも受けていません。一方で、燃えつき症候群は低いポジションから大企業の役員に至るまで全てのレベルで起きています。電話オペレーター、教師、医療、中間管理職、全てです」
ストレスの代償
燃えつき症候群にかかったら、本人はもちろん大きな打撃を受けるが、企業や国家にとっても金銭的負担は小さくない。スイスでは現在、働ける年代の20人に1人が障害者保険を受け取っているのだ。2004年には保険などの給付金の3分の1が、精神的問題や仕事上のストレスに対して支払われた。初めて給付金を受け取った人の40%がこのカテゴリーに分類される。
今回の会議は連邦経済省経済管轄局(seco)とスイス健康促進で共催された。重点が置かれたのは「燃えつき症候群をどうやって発見するか」、「どうやって予防するか」の2点。「人々が快適に働ける場所を作り、もっと責任を与えたり仕事内容を豊かにしたりすることが非常に重要です」とリヒター教授は言う。
どんな状況が燃えつき症候群を引き起こすのか
燃えつき症候群の名前が最初に知られたのは米国だが、現在は欧州でも珍しくなくなってきている。心理学者かつコンサルタントでもあるハンス・ケルネンさんは、スイスインフォの取材に応じ、「現在、ヨーロッパでも職場のストレスが増加していることは、紛れもない事実です」と語った。
燃えつき症候群は、個人が仕事の要求に応えられないときや、不快な仕事環境に長く身を置く時に起こる。「また、当然、この全てが重なることも多々あります。しかし、最近の傾向としては、仕事環境がより大きな理由になっているようです」
「燃えつき症候群には、精神的に疲れきってしまう、ということも含まれます。エネルギーが出ないとか、自分の中が空っぽに感じるというのも、典型的な症状です。しかも、ストレスがたまればたまるほど、仕事場を離れても上手にリラックスすることができなくなるのです」
燃えつき症候群にかかってしまうと、仕事場で人と話すのもおっくうになり、孤立してしまう。そして、事実ではなくても自分は仕事ができないと思い込んでしまうらしい。専門家は、このような状態を避けるため、会社ができることは沢山あるという。まずは、各従業員の資質を良く見極めて、責任や仕事環境をそれに見合ったものにしていくことが重要だそうだ。
swissinfo、クレア・オデア 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
-最近の調査では、3分の1以上のスイス人は、仕事に対して「ストレスがある、または非常にストレスがある」と答えている。
-このうち最も高いストレス度を示したのは若者だった。
会議の主なテーマは「燃えつき症候群をどのように発見し、どのように防ぐか」
5人に1人のマネージャーが燃えつき症候群の予備軍だという。
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