太陽光電池だけで航海する世界最大のスイス製カタマラン「トゥラノール・プラネットソーラー号」が9月27日午後、モナコ港から世界一周の旅に向け出港した。
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このソーラーボートの企画者、ラファエル・ドムジャン氏からは27日夕刻、「水平線に沈む太陽を眺めながら書いている。電池は満タン。明日の朝までは風を避け海岸線を行く。スポンサー、メディア関係者など、みんなに感謝している」というEメールが届いた。現在、船は南フランス沖をジブラルタル海峡に向け走っている。
537平方メートルのソーラーパネル
「トゥラノール・プラネットソーラー号 ( Turanor PlanetSolar ) 」は、全長31メートル、重さ95トンのカタマラン ( 双胴船 ) 。537平方メートルのソーラーパネルが屋根に取り付けられた、世界で一番大きいソーラーボートだ。ヴォー州のイヴェルドン・レ・バン市 ( Yverdon-les-Bains ) で2年前から製作されていた。
今後160日間かけ世界一周5万キロメートルの行程を行く。航路は太陽光を最大限に利用できるよう選択され、ジブラルタル海峡からアメリカ東海岸のマイアミへ、その後サンフランシスコからシドニーへ着き、シンガプール、アブダビなどに寄港して、最終的にモナコにまた戻って来る。
ところで、トゥラノール・プラネットソーラー号の前半の名前 「トゥラノール」は、トルキン作の『指輪物語』から取られ「太陽の力」を意味するという。
6年間かけた夢の実現
そもそも、この太陽の力を最大限に利用するボートは、海のないスイスのヌーシャテル州の青年ドムジャン氏 ( 37歳 ) がある日抱いた夢が実現したものだ。
ドムジャン氏がソーラーエネルギーに目を向けたのは「少年のとき、アルプスの氷河が単に後退しているのではなく、完全消滅しようとしている現実にショックを受けた。温暖化ガスを出さない、再生可能エネルギーをもっと活用できないかと思った」からだ。
2004年に「ソーラーボートを製作し世界一周の旅を行いたい。これを契機に世界中の船舶がソーラーエネルギーなどの再生可能エネルギーを使って運行するようになってくれれば」と願って、ソーラーボート製作のプロジェクトを立ち上げた。
2008年に予算の約6割の資金が集まり、船の建設が始まったものの、その後の資金集めはかなり厳しいものだった。しかし「楽天的な性格だから、信じたらやれると思った」という。
実際、連邦外務省 ( EDA/DFAE ) もこのプロジェクトを支援するため30万フラン ( 約2550万円 )を支給したりしている。
さて、登山は好きだが航海の経験はないドムジャン氏。しかし今回、6人の乗組員の1人として、始めた冒険は最後までやり通す決心だ。
全長31メートル、幅15メートル、重さ95トンのカタマラン ( 双胴船 )。
537平方メートルの巨大なソーラーパネルが屋根に取り付けてある。
二つのモーターで、平均時速10kmで走る。最高速度、時速約20キロ。
予算総額2000万フラン ( 約20億円 )。乗組員6人。
モナコを出港し、サンフランシスコ、シドニー、アブダビなどへ寄港し、再びモナコに戻る世界一周の行程5万キロメートルを160日間で行う。
将来は200人乗りの観光船になる可能性が高い。
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成層圏を目指すソーラー飛行機、スイスで初の試験飛行
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3年の開発期間を経て今月5日、スイス製のソーラー飛行機「ソーラーストラトス」がパイエルヌ飛行場を飛び立った。この飛行機は、12年にソーラーボートで世界一周を達成したクリーンテクノロジーの推進者・冒険家のラファエル・ドムジャンさんが考案したもの。18年には自らの操縦で成層圏飛行を目指す。ドムジャンさんにインタビューした。
ソーラーストラトス(Solar Stratos)は2人乗りの飛行機で、翼の表面積のうちの22平方メートルにソーラーパネルが取り付けられている。ロール(左右の傾き)やスピードを徐々に上げる一連のテストの後に5日、テストパイロットのダミアン・ヒシアーさんの操縦で高度300メートルを飛ぶ初の試験飛行が行われた。
「僕もチームも全員、喜びに沸き立っている。しかし、同時に少し心配もしている。なぜなら、過去3年間にやってきたことの全てがうまく機能するかどうか今、試されるからだ」と、ドムジャンさん(44歳)は試験飛行の直前に話した 。
このスイス人冒険家は、18年の終わりには高度25キロメートルの成層圏での飛行を計画している。もしこれが成功すれば、電気エンジンを備えたソーラー飛行機の世界記録を作り上げることになる。
ハードルを跳び越えて
だがその前に、ドムジャンさんはいくつかのハードルを跳び超えなくてはならない。15歳でグライダーを操縦した経験はあるが、この小型実験飛行機を操縦するためには、フライトシュミレーターを使ってたくさんのことを学ばなければならない。
ステップ・バイ・ステップではあるが、この夏にはまず中程度の高度を飛行してみるつもりだという。次いで今年の終わりには、ソーラー・インパルスの操縦士、アンドレ・ボルシュベルクさんが10年に出した「有人ソーラー飛行機での高度9235メートルの飛行」という世界記録を打ち破るつもりだ。
ソーラー・インパルスが世界一周飛行を終了したのは昨年の7月。それからわずか10カ月後に、もう一つの超小型のソーラー飛行機がスイスの、しかも同じフランス語圏で誕生しようとしている。
ソーラー・インパルスに影響を受け
スイスは日本の九州ほどの大きさの小さな国。 ソーラー・インパルスのもう一人の操縦士でヴォー州ローザンヌに住むベルトラン・ピカールさんと、隣州ヌーシャテルに住むドムジャンさんは、当然ながら友人だ。だから、この17年末の記録更新の旅には、二つある操縦席の一つにピカールさんを招待するつもりだ。
ピカールさんの家は、 代々知られた裕福な冒険家・発明家の家系だ。一方ドムジャンさんの家はどちらかといえば「平凡」で、両親はソーシャルワーカーだった。こんなドムジャンさんにとって、ピカールさんからの影響は多大だった。「ソーラー・インパルスが誕生するまでは、太陽光発電で何かの企画や冒険をすることは考えてもいなかった。03年にベルトランがソーラー飛行機での世界一周計画を打ち出したとき、その情熱が僕に伝染したのだ」
方向転換
ドムジャンさんほど、極端に人生の方向転換をした人はあまりいないかもしれない。今はクリーンテクノロジーの推進者・冒険家だが、以前は技術系の仕事や医療補助員、山のガイドなどをしていた。
前述のように03年のソーラー・インパルス計画発表が転換のきっかけとなったドムジャンさんは、同じ年に、両親の家の屋根にソーラーパネルを取り付け、次いでウェブ上でソーラーパネル設置を支援する会社を設立。その後、12年にソーラーパネルを取り付けたカタマランの船「トゥラノール・プラネットソーラー」で世界一周の旅を達成した。
このように、ソーラー・インパルスはドムジャンさんの人生を変える契機になったが、自分のソーラー飛行機を作る際にも多くの教訓を与えてくれている。「ソーラーストラトスの製作では、大きさが問題の要になると思った。機体が大きいとその製作やメンテナンスに多くのスタッフが必要で、そのスタッフの経費がかさむからだ」。実際のところ、ソーラー・インパルス計画が 約1億7200万フラン(約194億円)だったのに対し、ソーラーストラトスは1千万フラン(約11億円)に過ぎない。
また、ソーラー・インパルス2の機体の長さが22メートルで翼幅が72メートルなのに対し、ソーラーストラトスは機体8.5メートル、翼幅24.8メートルと半分以下。重さに至っては、前者が2300キログラムなのに対して後者はわずか350キログラムだ。
さらに軽量化
このように軽量で小型のソーラーストラトスだが、まだまだ改良すべき点が残っている。例えば、毎時20キロワットのリチウムイオン電池だ。これは、ほぼ50馬力に相当する二つの19キロワットのエンジン(小型のモーターバイク程度)の電源になる。
だが、このオーストリアのKleisel Electric社によって開発された電池が、成層圏の氷点下70度の凍りつくような寒さの中でどう機能するかは、まだはっきりとしていない。
「電池は大きな挑戦になる」とドムジャンさんも認める。「今年末の記録更新飛行のための電池は、正直なところまだ完成していない。一番軽くて、しかも効率の良い電池を入手することは大きな挑戦になる。また、高度飛行のためのプロペラも新しく製作しなくてはならない」
確かに、2人のパイロットの体重も含め「軽量化」が一番の課題だ。「飛行前に、僕がたとえ10キロ痩せたとしても問題は残る」とドムジャンさんは笑う。
限界に挑戦
軽量化は、ソーラーパネルでも重視された。ソーラーストラトスのパネルは、Sunpower社の製作で、ソーラー・インパルスにもトゥラノール・プラネットソーラーにも使用されたものだ。
このソーラーストラトスのわずか20キログラムのソーラーパネルは、ヌーシャテルにあるCSEM電子工学・マイクロテクノロジー研究センターでさらに改良された。 「飛行機を軽くするため、ソーラーパネルも軽くする必要があった。そして1平方メートルあたり1キログラムになるまで減量できた。現在市場に出ているソーラーパネルより10倍も軽くなった」とドムジャンさんは言う。
電池やソーラーパネルの軽量化を推し進めた後、機体そのものの軽量化はこれ以上望めないと考えたドムジャンさんは、 飛行中に太陽光電力を使う超軽量の「宇宙服」を身に着けることにした。これももう一つの「世界新記録」になることだろう。
この宇宙服は、ロシアのZvezda社の製作だ。同社は、世界初の有人宇宙飛行士、ユーリイ・ガガーリンや世界で初めて宇宙遊泳を行なったアレクセイ・レオーノフの宇宙服を作っている。
だが、こうした宇宙服を身に着けて狭いコックピットの中で飛行機の操縦を続けるには、特別な訓練が必要になるだろうとドムジャンさんは付け加える。
こうした記録的なチャレンジに挑みながらも、冷静さを失わないこの控えめな冒険家は、こう結んだ。「解決すべき問題にステップ・バイ・ステップで挑んでいるので、あまり心配はしていない。チームにも恵まれているし、もちろん細心の注意も払ってもいる。ソーラーストラトスにはパラシュートを備えてないので、(バックアップとしての)プランBは存在しない。それに、もしリスクがなければ、それは冒険ではない」成層圏でのソーラー飛行
ソーラーストラトスのチームは、成層圏に行って帰ってくる時間を5.5時間と見ている。成層圏に到達するのに2.5時間かかり、15分間そこに留まって太陽光や星の光などを眺めた後、3時間かけて地球に戻ってくる。
ドムジャンさんの広範囲に渡る目的の一つであるソーラー飛行は、「今日、ソーラー発電で驚くようなことが可能になる」を実証することにある。
もし今回のソーラー飛行が成功すれば、次はZero2Infinity社やWorld View社のような会社と提携し、より大きな機体の商用機の開発を考えているとドムジャンさんは話している。
もう一つの計画は、サテライトに取って代わる、ないしはサテライトをサポートするために成層圏用のソーラードローンを開発することだ。こうしたドローンは現在、フェイスブック社やグーグル社 によっても開発されている。
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2010年9月29日に同港から出発して以来、実に584日と23時間31分をかけ、5万9600キロメートルを踏破した旅だった。
この全長31メートル、重さ95トンのカタマラン(双胴船)には、537平方メートルのソーラーパネルが屋根に取り付けられている。ヴォー州のイヴェルドン・レ・バン市 (Yverdon-les-Bains )で、2008年から2年かけて製作された。
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