スマトラ沖地震を生き延びて 生還者からのメール

12月26日に起きたインドネシアのスマトラ沖地震と津波による犠牲者の数は、日を追うごとに膨れ上がっている。
波にのまれた人と生き延びた人。被害の大きかったタイのリゾート地プーケット島にいたルークさん(仮名)=スイス・ベルン州=はその後、家族と友人宛てに以下の電子メールを送っている。
○ ○ ○
心配してくれてどうもありがとう。津波が押し寄せ、多くの人をのみ込んでいったのに、なぜ僕だけ擦り傷すらないのかわかりません。自分の所持品をかき集める時間さえありました。
プーケット島のカマラビーチは、高さ12メートル、時速400キロの津波に襲われました。カマラビーチはもう跡形もありません。運がよかったのは、地震発生の前日に風邪をこじらせ、ビーチには行かなかったことです。
当日はゲストハウスの小さな部屋にいました。なぜだかわかりませんが、窓を開けたちょうどその時、最初の波が押し寄せてくるのが見えました。もし窓を開けていなかったら、逃げ遅れて高い波にのまれていたはずです。
最初の波はゲストハウスの1階をぶち破って、すでに波にのまれて死にかけている人たちを押し上げました。その人たちと上の階にいた僕との距離は腕の長さ1つか2つほど。でも、腕を伸ばして引き寄せる余裕なんてありませんでした。
水が引いていったとき、彼らは全員死んでいました。
すぐに第2の波が押し寄せて、家屋や木の枝と一緒にさらに多くの遺体が流れてきました。犠牲者の数は今後さらに増え続けるでしょう。津波で流されて行方不明のまま身元が確認されないケースも数多くあると思います。
○ ○ ○
哀しいのは、長さ500メートル、海抜10メートルほどのこのビーチで、携帯電話は通じるし、天気は良好で、一日一日が当たり前のように過ぎていくということ。
タイ人は哀しみを顔に出しません。心の痛みを語りません。感情をコントロールするのが上手なのでしょう。でも僕にはできません。自分が何を体験し、何から生き延びたのかを知りたいのです。
もう少し、ここにいるつもりです。津波の爪跡を自分の目に焼き付けて、心の整理をしたいのです。何が起きたのか考えたくない人もいるだろうけど、でも僕にはできません。
もう、この島に来ることはないと思います。
本当は、この手紙でもっと明るい話題を書きたかったです。プーケットのクリスマスとか、タイ料理とかタイの建築物とか。でも、もう何も残っていないんです。
日々生きているということは有難いことです。
ラッキールークより
swissinfo 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スマトラ沖地震:
国連によると、スマトラ沖地震と津波の犠牲者は現在、15万人を超えた。犠牲者はさらに増える見通しという。
多くの犠牲者を出した原因の一つに、地震によって発生する津波の怖さを知らなかった人が多かったことが指摘されている。

JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。