国連防災世界会議 神戸でスイスの被災経験を提供する
18日から神戸市で始まった、世界の自然災害被害をどう軽減するかを話し合う、国連防災世界会議はスイスでも特に注目されている。スイスからは自然災害プラットフォーム(PLANAT)と外務省開発協力局が出席し、スイス特有の山に関係した自然災害への取り組み方について発表する。
この会議を機にスイスでは地震など災害への取り組みが十分かどうか議論されている。17日付けフランス語圏日刊紙ルタンの見出しには「スイスの大地震は免れられない。準備はできているか?」と疑問が投じられている。
スマトラ沖地震災害の直後だけに国連防災世界会議では津波早期警報システムの構築が最も注目されている。しかし、会議では津波だけではなく、全ての自然災害を対象に各国の対策や国際協力のあり方などが話し合われる。
スイスの包括的な対策
スイスの代表団は土砂崩れや雪崩、洪水といった災害にどのような対応策が取られているかをワークショップで発表する。マルコ・フェラリ代表は「氷河融解や川の氾濫など水の災害や雪崩などでは、スイスの経験は大いに役に立つ」と語り、各国の情報や経験をシェアする事が防災に最も重要だと確信している。
フェラリ氏は「多くの国は防災に対する根本的な対応を変えなければならない」と語る。つまり、「防災に対する役人から科学者、保険屋など災害に関わる全ての関係者を総括した法的な枠組みが必要だ」と分析する。スイスでも近年、ヴァレー州の山々で多くの災害が発生し、その経験を踏まえた「総括的なアプローチ」が“売り”だそうだ。これは、予防対策だけでなく、災害への対応と復興プログラム、そして被災者の心のケアーなど全てを含む。
スイスでもあり得る地震の危険
スイスでこれまで記録されたなかでもバーゼルの街が全壊した1356年の大地震が有名だ。日刊紙ルタンの地震特集によると、このバーゼル大地震はマグニチュード6.5を記録し、過去に欧州で起こった最大級の地震だ。現在、同じ規模の地震が発生した場合をシュミレーションしてみると、死者は最低1,500人、被害総額は500億〜800億フラン(約4兆〜7兆円)にも上るだろうと記述している。
同紙は、地震の専門家によると「スイスで同様の地震が起こる確率は1000年に一度」と伝え、インタビューに答えた専門家が「スイス人は地震に未経験だからこそ大地震が起こった場合の危険性が分かっていない」と警鐘を鳴らしている。なお、同紙は耐震建築の基準を定めているのがバーゼル州とヴァレー州の2州しかないことを指摘している。
スイスでも津波災害?
スイス地震観測所の所長であり、デジタル地震観測ネットワーク連合(FDSN)の議長を務めるドメニコ・ガルダーニ氏は「スイスでは災害に対する警報システムや防災は大変進んでいる」と自賛する。しかし、一つ準備が出来ていないのは「津波対策だ」という。
同氏によると、1601年に起きたルッツェルンの大地震では湖に2〜3メートルの津波が起こり、4つの湖の周辺で多くの被害があったという。このような津波が起こす土砂崩れが最大の危険でチューリヒ胡やジュネーブのレマン湖などで多くの被害が起こりうると懸念している。
swissinfo アナ・ネルソン、 フレデリック・ビュルナン、 屋山明乃(ややまあけの)
– 阪神大震災から10年経った神戸市で、国連防災世界会議が18日から22日まで開催されている。
– 同会議は増える世界の自然災害被害をどう軽減するか、国際的な防災協力の推進を目指し、今後10年の防災計画などを採択する予定。
– スマトラの津波災害を受け、インド洋の津波早期警報システムの構築も特別討議される。
– 会議は先月27日にお金持ち国(暗に米国)の津波被害への支援額を「ケチだ」と発言して物議を醸し、一躍有名になったヤン・イゲランド国連人道問題担当事務次長が参加。
– イゲランド事務次長はジュネーブで行われたスマト沖地震の支援国会議を指揮した人物でもある。
– スイスからは自然災害プラットフォーム(PLANAT)と外務省開発協力局(DEZA/DDC)が出席し、スイス特有の氷河融解、雪崩、土砂崩れなどといった山に関する災害の防災対策の知識を発表する。
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