掃除機とダンス
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暮れの大掃除が始まる。そこで「掃除機とダンスをするように」と提唱するバーゼルのカタリナ・ツァウグ氏に話を聞いた。
ツァウグ氏は、掃除の仕方を教える学校「ミィテナン・プッツェン ( Mitenand-Putzen ) 」の校長であり、本人自ら週2日はプロの掃除人として働き、掃除についてのドクター論文を準備中の筋金入りの掃除専門家である。
「掃除が嫌いな人は自分の体が嫌いなのと同じ」と開口一番言われた。どういうことか?家は体の延長線上にあり、人を守る皮膚のようなもの。その皮膚の世話が嫌いなのは、自分を嫌っているようなものということになる。自分の体を愛しケアするように、家もやさしく、また楽しみながらケアすること。それがひいては自分の体のためにもなるという。
swissinfo : 「掃除機とダンスするように」と提唱されていますが、象徴的な意味ですか、それとも本当に掃除機とダンスをするのですか?
ツァウグ : 本当にダンスするのです。掃除機を使う時は、普通自分は同じ所に立ったままで、腕だけを前後に動かします。その代わりに、ステップを踏むように足を前後に動かし、腰をリラックスさせます。その時、ロックを踊るように腰を上に動かしながらステップを踏むのです。
掃除機のホースを抱え込むように体の近くに持ってきて、一緒にダンスするように動きます。ベッドの下を掃除するなら、床に座り込み、ホースと一緒に自分も動く。テーブルの下を掃除するなら椅子に座って上半身をリラックスさせながら動く。こうしてホースと一緒に空間を上下一杯に使います。
掃除機の騒音を中和させるため、歌いながらやるといいのです。自分のリズムをつかみながら、歌いながらやると本当にダンスしているようです。
swissinfo : 扉などの汚れを取る掃除はどうしますか?
ツァウグ : 汚れやほこりは、人が生活しながら生み出す自然の産物であって敵ではない。まず敵と戦う姿勢を棄てることです。ほこりを敵と見做して対象に強く当たるとその動きが体に跳ね返ってきて、体に故障を起こします。物と体には相互関係があるのです。
扉を拭く場合、扉の前に立って扉の全体を愛しながら扉を手に入れるようにやさしく拭くのです。掃除用の布を右手から左手に持ち替えたりして、石鹸などを表面につけていきます。その時大切なことはスローダンスをする。自分にあったようにエネルギーをサーフィングさせながらリズムを作り出し動くのです。5つの扉で30分のヨガをしたような効果があります。
掃除はいわば、小さな子供が体をぐるぐると単調に動かして喜ぶ、そうした動きに似ている。それに水が加わるとさらに子供はうれしくなる。この体を動かす喜びを大人に想い出して欲しいと思っているのです。掃除は楽しいことなのです。
swissinfo : クリーナーはどういったものを使われるのですか?
ツァウグ : 細菌を完全に殺すような強い化学薬品は一切使いません。自然に還元するようなアルコール、石鹸、酢などを使います。これらはそのまま顔や皮膚に付いてもいいようなものを使います。家は皮膚ですから。
強い化学薬品で、細菌の良いものも悪いものも全部殺してしまうと、悪いものが蔓延するようになるります。昨今の院内感染が良い例です。
具体的には、お風呂には、石鹸に抵抗力のある細菌がはびこっているので、石鹸ではなくむしろアルコールを使うときれいになります。またセージの葉を煎じたものも使います。セージは殺菌作用があり、アフガニスタンではセージを燃やした煙で家中を殺菌します。
どこには何がいいかというのはエコシステムの学習のようにかなり複雑なことで、このように掃除と一言でいっても教えることはたくさんあります。
swissinfo : ところで、働く女性が増えて、プロの掃除人を雇う傾向が強くなっていますが、これをどう思いますか?
ツァウグ : 仕事が忙しいので掃除の時間が無いといいますが、座ったままで頭を使う人は特に、家に戻ってリラックスするようにちょっと掃除をするのはかえっていいことだと思います。
掃除人を雇うと、自分で世話をしないので、自分の空間を失うことになります。90%は失うことになります。
ただ、人の手が入ることを意識してそれを認めれば、プロはプロで本当にきれいにしますので、お風呂や台所だけやってもらい残りは自分がやるという風に、プロと仕事を分け合うことができると思います。こうして多少なりとも自分の空間を管理する形が仕事をする人には理想的かもしれません。
swissinfo、 聞き手 里信邦子( さとのぶ くにこ )
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