もぐもぐスイス味 第2弾 その2 ― 学生たちにかしずかれ -
秋の日差しを浴びながら学生たちが集い談笑している。どこにでもあるキャンパスのお昼時。しかし何かが違う。みんなが黒いスーツに身を包み、すっきりした格好をしているからだ。
ここはスイスで唯一、国立大学卒業資格が取れる、世界に名の通ったローザンヌのホテル学校「エコール・オトゥリエール・ド・ローザンヌ ( Ecole hotelier de Lausanne ) 」の校内である。
同校内にある、外部の人も食事ができる「ル・ベルソー・デ・サンス ( Le Berceau des Sens、様々な感覚のゆりかご ) 」はこじんまりとしたレストラン。3人の男子学生が年配のコーチらしき人を囲んでなにやら指導を受けている。学生たちが作り、学生たちに給仕されるとはどういうものかと、モモヨ隊員と興味津々でやってきた。
学生たちにかしずかれ
席に着くやいなや、初々しさの漂う女子学生が現れ「よくいらっしゃいました。フランス語、それとも英語で話しましょうか」とにこやかに問いかけてきた。この席を担当するマリンヌさんだ。
アンディーブのサラダを前菜に注文。砂糖を絡めたクルミやオレンジの実と皮が上にのっていて、甘さ、すっぱさ、苦味などが一緒になったハーモニーをかもし出す。
メインはムール貝とアンコウの煮込み。生クリームにアサツキのみじん切りがたっぷり入っていて、上品な味。プロの料理長が指導してるとはいえ、学生が作ったとは思えない。モモヨ隊員が頼んだステーキにも、キノコと牛の尻尾肉のみじん切りが混ざった肉団子風の不思議な添え物がついている。
この間、マリンヌさんと黒のスーツがもうひとつ決まらない男子学生が、緊張気味にお皿を運んでくれた。将来は?とマリンヌさんに質問。「大型のホテルグループか、ネスレなど、企業のイベントマネージメントで働くと思います。でもまだ決めていません」とハキハキとした返事。
「フランス料理屋は一般に敷居が高いが、ここは給仕をする人が一生懸命にお客に接するから客はリラックスできる、良いレストランである」というモモヨ隊員説に賛成である。
・・・でモモヨ隊員は
サトノブ隊長はお魚、モモヨは肉をメインに頼んだところでさて、周りを観察。
「丁寧で気持いいけど、見てると、こっちまで力入っちゃうコもいるわね」「あっ、ビンの蓋3メートル飛びました。拾い方がド丁寧です。あの彼、緊張してますねえ」カチンコチンで動くたびにギクシャク音がしそうな彼。
ここの学生になるまではママが何でもしてくれたのかしらなどと、隊長と中年的分析。あの朗らかガールはうちの息子にどうかし・・あ、いけない、いけない。
さりげなくテーブルの間を泳いでいた教官が、コチラのテーブルにチェック目線。やっぱりお勉強の現場ではある。学生さんは教官が回ってくるとドキドキするでしょうねえ。
メインディッシュがやってきた。学生の手によるという前菜同様、見て美しく、頂いてもよろしい一皿。ああ、なんとちゃんとしたおフランス料理。締めのデザートに好みのチーズをワゴンからサービスしてもらうのも、いかにもという感じでうれしきもの。
コーヒーを頂きながらつくづく。時々アレレはあったものの、学生さんのサービスは初々しくてくつろげるなあ。意見の一致した隊長隊員2名であった。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) & モモヨ
レストラン : ル・ベルソー・デ・サンス ( Le Berceau des Sens )
住所 : Ecole Hotelière, Le Chalet- à-gobet, 1000 Lausanne 25
電話 : +41 21 785 12 21
予約 : 必要
時間 : 昼は月~金曜日12時~13時30分。夜は月~木曜日19時から
メニュー : 前菜にアンディーブのサラダ17フラン ( 約1700円 ) 、グリンピースのスープ11フラン ( 約1100円 ) 、メインにムール貝とアンコウの煮込み42フラン( 約4200円 ) 、キノコと牛の尻尾肉が混ざった添え物の牛ステーキ45フラン ( 約4500円 ) 、以上は1品を選ぶアラカルトで、季節ごとに変わる。もう1つのセットメニューは週変わりで、前菜、メイン、デザートで1人46フラン( 約4600円 )
予算 : 2人で、アラカルトで選び、ワイン一杯とコーヒー、デザートで160フラン ( 約16000円 )
行き方 : 公共交通が不便なのでローザンヌ駅からタクシーで20分。2008年秋に地下鉄の直通ができる予定。
この世界的に有名なローザンヌのホテル学校は、世界中から1学年でおよそ350人の学生が集まる。現在の総学生数は1500人。授業はフランス語と英語で行われる。
入学するとすぐに、6カ月間、校内にあるセルフサービスなども含めた、スタイルの違うさまざまなレストランを2週間づつ体験していく。6カ月後、ホテルで実習し、1年後にマーケティングなどの理論を勉強する。3年半後に、スイス国立大学卒業資格を取得する。
卒業後は、大型ホテルグループ、個人のホテルなどで働くか、保険会社、銀行、大型食品会社などの、マーケティングやイベントマネージメントの仕事につく人が多い。
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