アルプスの大掃除始まる
「捨てるのはゴミではなく、投げ捨ての悪い習慣」という明確なメッセージが、環境を保護する人々から送られている。彼らにとって環境はビジネスを意味する。
5月29日と30日の週末から正式に始まったこのプロジェクトは、雪解け後のアルプスの高地に、大量のゴミが表われることを示すものだ。
冬の後始末
スイスアルプスでは、冬のスキー客だけでなく、夏の観光客を頼みにするリゾート地が増えている。それらのリゾート地に夏の観光客が訪れたたときに、スキー客が冬に捨てたゴミが残っていることがないよう確認しなければならない。環境面の理由からも、アルプスのリゾート地ではすでにゴミを片付ける作業が始まっている。
スイスの NGO 「サミット財団 ( Summit Foundation ) 」のメンバーで、このプロジェクトのリーダーを務めるトーマス・アレモント氏は
「当然ながら主な目的は、できるだけたくさんのゴミを拾って山をきれいにすることです」
と語った。アルプスを掃除するこのプロジェクトは、フランスの「マウンテン・ライダーズ・オブ・フランス ( Mountain Riders of France ) 」と協力して行われる。
ゴミと環境
「これはもちろんわたしたちの山にとって、そして特にゴミの問題の影響を受けているスイスのスキーリゾート地にとっての利益になります」
プロジェクトの主催者によると、1番目の目的と同様に重要な2番目の目的は、ゴミの投げ捨て問題についての一般人の意識を覚醒させることにある。
アレモント氏は、山にどれだけのゴミが捨てられているか数字で正確に表すことは難しいが、スキー客が集中するリフトの下にはたくさんのゴミが残されていると言う。
「そうした場所には、約3万本のたばこの吸い殻が落ちています。吸い殻の落ちている場所にもよりますが、吸い殻1本で500リットルの水が汚染されます。この影響は簡単に想像できます。汚染された水が魚や牛の内臓に入り込むことを忘れてはなりません。環境システム全体に影響が出るのです」
またアレモント氏は、ガラス、缶、プラスチックなど長い時間をかけなければ分解されないゴミが捨てられている問題も指摘する。
活動開始
すでにゴミ処理を実施したリゾート地もある。5月15日に、ヴォー州のレザン ( Leysin ) では約10人のボランティアが風雨の中を出掛けた。
「雨の強い日でした。まだ雪が多く残っていたので斜面のふもと付近へしか行けませんでした。当初計画していた場所には行けませんでしたが、楽しくゴミ拾いをしました」
と環境団体「エコロジー・リベラル ( Ecologie Libérale ) 」の秘書官ベンジャミン・リロイ・ボーリュー氏は語った。
彼らは合計約20キログラムのゴミを拾った。
「スキーのストック、ペットボトル、たばこの吸い殻、紙をくくるゴム輪をたくさん拾いました。ゴム輪が失くしやすい物だと分かりましたが、たばこの吸い殻の投げ捨てに関してはスキー客にもっと訴えることが絶対に必要です」
彼らは時間を無駄にせず、環境についてのメッセージを伝える。
「夏の終わりには、各リゾート地と連絡をとり、集めたゴミの量、ゴミの内容、参加者の数についての情報を収集します」
とアレモント氏は説明した。
またアレモント氏は
「私たちにとって大切なのは、私たちが何をやっているのか人々に知らせることです。( ゴミについて ) 人々にショックを与えるのではなく、何が起きているのかを気付かせることが目的です」
と語った。
「毎年、参加者を増やしていくこと、そして彼らに山でどう振る舞うべきかを知ってもらうことが目的です」
ロバート・ブルックス 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、笠原浩美 )
廃棄物の再生を促進している「イゴラ協同組合 ( Igora cooperative ) 」によると、スイスではアルミニウム製の缶10本のうち9本以上が再生される。
5月21日に、飲料、ペット・フード、アルミニウムなどの製造、およびスイス小売販売に関わる80社以上が同組合のメンバーであることが発表された。
現在91%の再生率を100%に上昇させることが同組合の目標。
統計では、缶の91%、ペット・フード容器の80%、チューブ容器の60%が再生されている。
毎年6500トンのアルミ容器が有効に再生されている。今年は、飲料用のアルミニウム製の缶5億本以上が、スイスのリサイクル市場で取引される。
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