スイス、EUとの関係強化へ
スイス政府は先週末、欧州連合 ( EU ) との関係を強化する諸計画を発表。
人の往来の自由と農業分野に重点を置いた交渉が再スタートする。
EUと交渉を続けている、7項目のパッケージの中の1項目が、人の往来の自由。ミシュリン・カルミ・レ外相は、2009年以降のEU、スイス間の人の往来の自由と、ブルガリアとルーマニアへのその適用拡大案を議会に提出した。右派政党はただちに反対したが、政府は「1項目に反対することは、ほかの6項目を危険にさらす」と警告している。
農産物の市場開放
エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ司法警察相は、
「EUという、世界最大の貿易ブロックとの交渉を失敗に終わらせれば、スイスにとって経済的打撃は大きなものになるだろう」
と語った。スイスとEU間の年間貿易総額は3000億フラン ( 約30兆円 ) に上る。
一方ドリス・ロイタルト経済相は、EUとの農産物の市場開放を考えていると述べ、
「消費者に安い価格で農産物を提供できる」
と指摘した。交渉では関税、輸出補助金などを段階的に排除していく方法を取る。
具体的には、2008年の秋に交渉をスタートさせ、1~2年かけて終了し、施行は2016年をめどにしている。
しかし、この政策に反対する右派の国民党(SVP/UDC )はレファレンダムを起こして国民投票にかけると主張している。また農業組合からの強い抵抗にも政府は対処していなかくてはならない。
ロイタルト経済相は、この政策決定に関し、
「経済のグローバル化に政府は対応せざるを得ない。関税引き下げの圧力にさらされている」
と述べ、世界貿易機関 ( WTO ) の圧力を暗に指摘した。
誰にとってもよい解決策
しかし、農産物の市場開放は初期段階では困難を伴うが、最終的にはスイスの農業を強化することになると説明して、多くの懸念を吹き払おうとしている。また、
「農家への補助金は用意されるが、どういった補助金制度にするかはEUとの交渉が終了した後に決める」
と付け加えた。
さらにロイタルト経済相は、
「農産物の市場開放は、生産力を高め、( 有機農産物など ) 農産物の特殊化を促進させ、結果として年間20億フラン ( 約2000億円 ) に上る利益をもたらす」
とその利点を確信していると語った。
EU 委員会の広報担当者も政府のこの決定を歓迎し、EU、スイス両者とも交渉から得るものは大きいという。
だが、EU大使のミヒャエル・ライタラー氏はフランス語圏の諸新聞で、
「これら7項目の交渉は、税制問題での、EUとスイスの不合意とは関係しない」
と釘をさした。EUはスイスの幾つかの州が、企業への税制優遇措置を取り、自由貿易協定に違反すると批判している。スイスはこの指摘は不当だと反論。交渉は続行している。
swissinfo、外電
スイスはEUと以下7つの項目について討議している。
1.人の往来の自由
2.農産物貿易
3.政府調達
4.順応アセスメント
5.空輸
6.道路、鉄道輸送
7.研究協力に関する第5回枠決め決定へのスイスの参加
2002年に施行された同意事項と今回の交渉事項は1つのパッケージとされる。つまり、幾つかを残したり取り除いたりすることはできない。
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