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スイス南部にできたお茶センター

お茶を点てる成子・ヴェツォーリさん Massimo Pedrazzini

スイス南部、ティチーノ州はその特殊な気候のおかげで、世界最北端の茶畑がある。アスコーナ ( Ascona ) にあるモンテ・ヴェリタ ( Monte Verità ) 丘にある茶畑だ。

茶畑のほかにお茶室もあり、抹茶を頂くこともできる。スイスでは健康飲料として、また禅道につながる文化の1つとして紹介されている。

 温暖な気候で有名なアスコーナと聞けば、モンテ・ヴェリタ丘を思い浮かべるスイス人は多い。「真実の山」とも言われ、1世紀ほど前には「自分探しに」来る人、菜食主義者、革命傾倒者などを魅了した。作家のヘルマン・ヘッセもアルコール中毒の治療のためにここに住んでいたことがある。しかしそんなことも今は昔。現在はティチーノ州の所有地で、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ ) のセミナー・センターがある。

「真実の山」に似合う緑茶

 神秘な伝統を有するモンテ・ヴェリタ丘に、新しくお茶センターが誕生した。モンテ・ヴェリタ基金のクラウディオ・ロセッティ理事長は、日本の文化を通して丘の神秘さを再現しようと、お茶の第一人者である、ペーター・オップリガー氏に協力を求めたのだという。

 オップリガー氏は「モンテ・ヴェリタ丘の気候はスイスでは唯一お茶の栽培に適している」と言い、同じくティチーノ州にあるブリサーゴ ( Brissago ) の島に2年前、60本の茶の苗を植え、お茶を少量だが収穫した。これからは、本格的に茶の文化が紹介される土地となりそうだ。

 茶畑には1000本の木が植えられ、入り口には神社の鳥居がある。日常のストレスをまずはここに置き去り、茶畑の階段を上がって日本庭園にある東屋へ。奥まったところにあるのは「ローレライ」という茶室だ。夏季の毎水曜日には、近くに住んでいる日本人の成子 ( のりこ ) ・ヴェツォーリさんが抹茶を点てる。

緑茶は日本の禅文化

 茶畑には昨年苗木が植えられ、秋には少量だが収穫があった。年に3度、茶摘をして、1年で20〜25キログラムの収穫があるという。研究用やお茶のセミナーで試飲される量しかない。オップリガー氏は健康に良いからと緑茶をスイスに広めているが「日本では伝統的に禅哲学に通じるものがあり、日本のすべての文化につながる」とお茶と文化の関係にも造詣が深い。
 
 お茶は1000年以上も前から、炒ったり蒸かしたりして飲まれたので、含まれるビタミンは壊れなかった。イギリス人がいろいろな種類の紅茶を作るようになり、世界中に広まった。しかし、紅茶には有益な栄養素は含まれていない。発酵の過程で壊れてしまうのだ。紅茶は純粋な嗜好品。緑茶は健康飲料だ。

 健康ブームに伴い、ヨーロッパで緑茶が注目され始めたのは近年になってから。スイス人にとっても、抹茶はエキゾチックな飲み物。モンテ・ヴェリタのお茶室で出されるお茶菓子はヴェツォーリさんの手製が主だが、小さなチョコレートケーキだったりするのもうなずける。

swissinfo、ゲハルト・ロブ アスコーナにて 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

<お茶>
世界の生産量 年間 250万トン
インド87万トン/中国70万トン/日本9万1000トン
( 国連食糧農業機関統計)

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