スイス最大のかぼちゃ展示市! 〜 自然豊かなファームで秋の1日
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秋から初冬を迎えようとしている今、スイスの木々の葉は赤や黄色に紅葉し、いろんな木の実が色づいている。筆者の自宅から眺める朝のチューリヒ湖には雲海が広がり、湖を見渡す景色は幻想的だ。実りの秋を迎えた湖畔の丘陵に広がるブドウ畑では、収穫の時期を迎え、ワイン製造者たちは大忙しの季節。現在、スーパーや町のマルクト(市場)には、葡萄や梨、りんご等が並び、秋真っ盛りだった10月中旬頃までは、色とりどりのかぼちゃたちが並んだ。
スイスの秋の象徴を語るとすれば、その一つが「かぼちゃだ」だと感じる。日本では夏のイメージも強いかぼちゃは、スイスでは8月中旬頃からお目見えし、10月の終わり頃までが旬の味だ。チューリヒ郊外にあるかぼちゃを育てる農家の一部では、無人販売所が設けられ、山積みのかぼちゃを積んだワゴンが道路の脇に登場し、人々は散策がてら、時には車を停めて、秋の味覚を買い求める。スイスのかぼちゃは種類が豊富で、食用の他、季節の飾り付け用のものまで、町では大小のかぼちゃたちが売られているのを目にする。飾り専用として生産されているものもあり、それらを割ってみると、中はほとんど空っぽという事も!食べる、眺める、の両方で楽しめるのが、スイスのかぼちゃなのだ。今回の記事では、見た目にも美しく見応えある、このかぼちゃたちに焦点を当ててみた。
チューリヒ郊外にある広大な農場「ユッカーファーム(Jucker Farm)」では、毎年恒例のかぼちゃアートの展示市が盛大に開かれている。同ファームのかぼちゃ展示は、スイス最大なのだそうだ。秋晴れのある日、自然いっぱいの中でくり広げられたかぼちゃ展示を見学がてら、お目当てのかぼちゃを仕入れるため、ユッカーファームへと出かけた。
ユッカーファームはプフェフィカー湖(Pfäffikersee)を見下ろす高台にあり、広大な敷地を有するファームだ。ここではかぼちゃのみならず、季節を通していろいろな農作物が栽培されている。敷地内にはスイスらしい温かい雰囲気のレストランや農産物の販売所も併設しており、かぼちゃ展示の時期には常設の農産物コーナーの他に、特設のかぼちゃの販売エリアが設置され、アートの見学と共にスイスの旬の味を買い求めようと、大勢の人々で賑わう。年間を通して楽しめるこのファームは、春はイチゴ狩り、夏はブルーベリー摘み、秋はかぼちゃ展示と販売会が開催され、12月に入るとクリスマスマーケットもスタートする。
8月下旬から11月初旬頃まで開催されるかぼちゃの展示会は、毎年異なったテーマが掲げられる。2014年のテーマは「Fliegen(“飛ぶ”を意味するドイツ語)」で、飛ぶ事に関連した数々のカボチャのアートが飾られた。ちなみに昨年2013年のテーマは「King and Queen」で、王様と女王様にちなんだオブジェ、2012年はロンドンオリンピックをテーマにオブジェが盛大に展示された。
今年のテーマは「飛ぶ」事にちなみ創作された、かぼちゃのオブジェがずらりと並んだ。姿と形を目にしただけで、簡単に飛ぶ事を連想できるものから、それぞれのアートの横に立てられた説明書をじっくりと読んでみないと理解出来ないものまで、かぼちゃの芸術品は様々。
例えば飛行機や鷹、蝶など、あえて解説せずともテーマに沿って理解が容易なものもあったが、濃いオレンジ色のかぼちゃを使用して作られたキノコのアートを目にした際、なぜこれが飛ぶ事に関連づけられるのか、理解に苦しんだ。実はこのキノコは、毒キノコに見立てているのだそうだ。傍らに添えられた説明を読んでみると、かつてスイスでは、毒キノコを煮て液状にし、それをハエ取り剤として使用していた事があり、「毒キノコ→ハエ→飛ぶ」で、このキノコのオブジェが創作されたとの事。ピアノのオブジェについても、同様に説明書を確認してみると、グランドピアノは翼を広げたように見える形をしている事からドイツ語で、Flügel(フリューゲル=翼)と呼ばれており、こちらも「飛ぶ」の発想に至ったのだそうだ。オブジェの中には想像力を豊かにしなければ、理解するのが難しいものもある。
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筆者が訪れた際、ファーム内にはひと際大きなかぼちゃが展示されていた。そばに近づき確認してみると、それは400キロの巨大カボチャであった。その後、10月5日にユッカーファームで開催された、大きさ(重さ)等を競うかぼちゃスイス選手権では、世界新記録の樹立となる、1トン近い951キロのかぼちゃを作った男性が、かぼちゃ選手権を征した事がニュースで報道された。もの凄い規模のかぼちゃを作ったものだと感じる。(記録は再び同じ男性によって塗り替えられ、現在の世界記録は1054キロとなった。)
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ハロウィンの季節が近づいてくると、ファーム内ではかぼちゃのカービング教室が開催される。主に子供達を中心に、ランタンを作るのだが、昨年はアメリカから、世界一のかぼちゃ彫刻の技術を持つカービングの専門家がファームに招待され、実演で、昨年のテーマである「キング」をモチーフとした見事なかぼちゃの彫刻をつくるパフォーマンスを行った。
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かぼちゃアートの見学と共に興味深いのは、色彩豊かで豊富な種類のかぼちゃの中から、自宅用に購入するかぼちゃたちを選び出すこと。スイスの人々はかぼちゃをスープ等にしていただくのが一般的。ただし、スープ用に使用するものは水分が多いため、日本人が好む料理にはあまり適さない。そこで我ら日本人が好んで買い求めるのは、日本のかぼちゃ、ホクホクの「HOKKAIDO」だ。スイスの「HOKKAIDO」は、その色、形と味を比較してみると、日本で「栗マロンかぼちゃ」として出回っているかぼちゃに近いようだ。
最近では日本のかぼちゃを町のマルクトなどでも見かけるようになってはきたが、ユッカーファームまで足を伸ばせば毎年必ず「HOKKAIDO」を手に入れる事ができるため、チューリヒ地区とその近郊に住む日本人の間では大人気。
カラフルでいろんな形のかぼちゃが並ぶワゴンから、「HOKKAIDO」を探し出し、いくつかまとめて購入した。スイスにいながら、かぼちゃの煮付けや南蛮漬けなど、和風の料理をスイスで味わう度、日本の味を懐かしく思い浮かべる。
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ワゴンの上のかぼちゃは全て計り売りなので、スイスの一般的なスーパーでの計量方法と同様、備え付けの計りで欲しい分を計り、それぞれのかぼちゃにつけられた番号を押して会計する。新鮮な卵や採れたての野菜、季節のフルーツなど、筆者はこの場所を訪れると、ついつい他のものにも目が行ってしまい、お財布のヒモも緩んでしまう。
ファーム内には山羊やウサギなどが飼育されており、子供達が直接動物に触れられるミニ動物園のコーナーや、まるでアルプスのハイジの物語に登場しそうな、藁を積み上げて作った大きな遊具に乗って遊べるプレイエリアも家族連れには大人気。お天気の良い日には1日いても飽きる事のない、大人も子供も楽しめる場所だ。
かぼちゃ展示を見学し、お腹が空いて来たら、出来立てのかぼちゃスープとりんごのジュース(Süssmost)でランチタイム。このジュースは、秋になると各地で出回り、これもスイスの秋の味。しぼりたてのりんごジュースは、セルフサービスでコップについでその場で飲んだり、瓶に入れて持ち帰ったりする事もできる。数年前に訪れた際には、ちょうど採れたてのりんごを大きな機械にかけ、音をたてて、搾汁している場面が見物できた。しぼりたてのジュースが次々と目の前で、販売用の大型ガラス容器に移されてゆくのだが、あっという間に人々によって飲み干されてしまう、人気のジュースなのだ。
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ファームの下へと続く緩やかな坂道を下っていくと、りんごや梨の木々が並び、更に降りてみると、目の前にはプフェッフィコン湖が広がる。湖畔には遊歩道が続き、散策する人々やジョギングする人たちもいる。スイスではよく見かけるのどかな光景だ。かぼちゃのオブジェを見学しながら自然とふれあい、美味しい季節の旬の味を堪能する。スイスの秋の休日は、大人も子供も笑顔にさせてくれる、まさに実りの秋の1日だ。
スミス 香
福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住11年目。現在はドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。
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