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パパの育児休暇 見送りに

スイスで父親が育児休暇を取るという考えはまだ浸透していないようだ Keystone

連邦内閣7人の閣僚の1人、経済省ドリス・ロイタルト大臣が自分の省の職員に「有給5日間の配偶者への育児休暇制度の導入」を1月8日に発表したのもつかのま、他の閣僚たちから槍玉に挙げられ2日後に断念した。

ロイタルト大臣は昨年、6月に閣僚に就任した新顔だ。全てが合議制で決められる連邦閣僚制の「掟を破り」単独プレイをとがめられた形だが、スイスでは父親の育児休暇を含めた子育て支援が遅れている現状があらわになった。

 総選挙を控えた2007年。「人気取り政策」を他に先駆けて導入したため「出るくいは打たれる」と国内メディアで報道された。しかし、1.42と出生率が低い ( 2005年、連邦統計局 ) スイスでは働く女性を支援する家族支援政策が欠けていることも指摘されている。

スイスの現状

 ロイタルト大臣が「我が省が民間企業に良い例を示すために」導入しようとしたのは育児を助けるための有給5日間、無給20日間の父親への育児休暇。現在のところ、国家公務員は有給2日間しか認められていない。

 この案がお預けになった理由として政府の広報官、オスワルド・シグ氏は「政府はこのアイデア自体に反対したわけではなく、どの省庁にも公平なルールを敷くため」と言う。そして、この件に関してはこの夏の国家公務員の改正案で話し合われる予定と付け加えた。

すでに一歩先の民間企業も

 スイスで女性の有給 ( 80% ) 14週間の出産育児休暇が法として国内で統一されたのは2005年の7月1日から。それまでは、州や各企業によってまちまちだったがこれが最低ラインとなった。

 父親の育児休暇に関しては今のところ統一化する動きはなく、雇用主によって待遇は随分と違う。平均でいえば、現在のところ1日から3日間までの有給休暇が主で近隣諸国と比べるとかなり「惨め」なのが現状だ。

 それでも、政府に先駆けて民間企業で家族を支援する動きが出てきた。大手スーパーのミグロは今年の1月から父親の育児休暇に有給2週間、無給2週間の待遇を発表。連邦鉄道 ( SBB /CCF ) も5日間の有給休暇がある。父親に最も寛大なのはオルタナティブ銀行とモビリティー・カーシェアリング社で1カ月の有給休暇が与えられている。

欧州比較

 父親の育児休暇に関しては欧州では北欧が最も進んでいる。デンマークでは28週間の有給休暇が与えられ、うち10週間は父親が取れる。フィンランドでは出産後、1年間の有給育児休暇を母親と父親が分けて取れる ( 最初の21週は母親 ) 。

 そこまでいかなくとも、スウェーデンやノルウェーでは1カ月、フランスや英国では2週間、ベルギーでは10日間の父親の有給育児休暇が法律で決められている。スイスの「2日を5日間にするかどうか」といった議論は「意気地 ( 育児 ) ナシ」と笑われるだろう。

swissinfo、外電 屋山明乃 ( ややま あけの )

- スイスでは現在のところ、父親の育児休暇は法律で定められていない。

- 多くの企業で配偶者の出産の際の、父親の有給休暇は1日または無しのところが主だ。


- 有給休暇2〜3日:コープ、UBS銀行など

- 有給休暇1週間:スイス放送協会、製薬会社ノバルティス、連邦鉄道、マノール

- 有給休暇2週間:ミグロ、大手再保険スイスリー ( Swiss Re ) 、スイスコム、クレディ・スイス銀行など

- 一方、女性の出産育児休暇は企業や職種によってばらつきがあったが、2005年7月から最低ラインが全国的に導入された。14週間80%の給与が保障されている。

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