急成長イスラム銀行、スイスもバーレーンにオープン
欧米の銀行で、イスラム法(シャリーア法)に則ったイスラム銀行への関心が高まっている。スイス最大手のUBS銀行は、バーレーンでシャリーアに則ったイスラム銀行第1号、ノリバ(Noriba)銀行をオープンした。
スイス国内には、98年ジュネーブに設立されたカンズ(Kanz)銀行など、シャリーアに基づく金融機関がすでにいくつかある。
シャリーア(Sharia)は、礼拝の仕方からトイレの使い方、刑罰や金融までイスラム教徒の生活全般を規定する律法で、法源は聖典コーラン、預言者ムハマンドのスンナ(社会慣習)、キヤース(類推)、イジュマーウ(合意)の四つ。
シャリーア銀行は、通常の銀行と次の2つの点が大きく違う。先ず、顧客は利子の請求を行わない、銀行は利子の支払いを行わない、つまり無利子の銀行であること。2つめは、銀行と顧客はイスラム法を侵害する会社には投資を許されない。
まず、無利子であることについてUBSのクリストフ・マイヤー氏は「利子を増やすための定期預金が禁じられているので、違った形での投資の機会を見い出さなければならない。エクイティー(固定金利のつかない株)やリースなど、利益をあげるものに投資しなければならない。」という。投資から得られたキャピタルゲインは、銀行と顧客の間で、双方の利益となるよう分配される。が、利子支払いを違法とするのは、イスラム教だけの特殊な慣習ではない。過去には他の宗教でも、利子による設けは「怠惰への報酬」として禁じていた。
2つめの、シャリーアを侵害する会社への投資の禁止とは、アルコール類、たばこ、セックス産業等、イスラム法により禁止されている物を取引する会社への投資をシャリーア銀行は禁じられている。
シャリーア銀行は70年代初め、産油国がオイルマネーの投資先を模索し始めて以来爆発的な勢いで急成長、世界75カ国にオフィスを持つイスラム銀行保険協会が設立された。うち1つは、ジュネーブのダルアルマール・アルイスラム(DMI)トラストだ。
シャリーア銀行は、投資総額2300億ドルと推定されるビッグビジネスだ。今後5年間で、投資額はさらに年間15%ずつ増えて行くと予測される。シャリーア銀行を開設する金融機関は、増え続けている。パキスタン、イラン、スーダンは、全ての金融機関をシャリーア法に則ったものに変換した。マレーシアも、通常の金融機関を補足する形で、イスラム銀行システムの開設を進めている。
米軍のイラク攻撃が迫っていると見られる今、シャリーア銀行の人気はうなぎ上りだ。米国に銀行口座を持つ湾岸諸国の国民らは、イラクが国連査察団に従わなかった場合には資産を凍結されのではないかと恐れている。実際、昨年9月11日の米同時多発テロ以来、サウジマネーがテロ攻撃資金となっていると米が非難したのを受け、サウジアラビア国民は米国から資金を引き上げユーロ圏とスイスに移している。イスラム銀行も、当然このキャピタルフライトの受け皿となっている。
金融専門家のジャン・トレップ氏によると、スイス国内のイスラム銀行の正確な数は不明で、スイス国立銀行(SNB)、スイス銀行協会(SFBC)も詳細は掴んでいない。トレップ氏は、「SFBCはイスラム銀行に関心を払っていない。シャリーア銀行は金融監視機関がモニターする必要のあるリスキーな存在なのだが。」と批判する。一方、SFBCは、スイスの現行の銀行法規はシャリーア銀行を管理・監視するのに十分有効だと反論する。が、SFBCのコッハー報道官は、SFBCは、もしシャリーア銀行がスイス国内で拡大を続けるなら、現行法の規制を強化する場合もあると述べた。
が、トレップ氏はそれでは不十分だという。「今すぐ行動すべきだ。法規制は成長部門に合わせて改良していかなければならない。何もしなければ、明確に限定された基盤なしのままで、SFBCはこの特別なセクターの成長を阻害することになるだろう。」。トレップ氏は、英国の金融サービス当局や、仏当局はすでにシャリーア銀行の監視を開始している事実を指摘した。
シャリーア銀行は、聖典コーランなどを法源とするイスラム法に則った金融機関で、利子の支払い禁止、イスラム法を侵害する産業への投資の禁止という二つの大きな特徴がある。利子が禁じられているので、顧客はエクイティーやボンドなどキャピタルゲインを上げる金融商品に投資する。
米軍のイラク攻撃が現実になりつつある今、湾岸諸国民は米国から続々と資金を引き上げ、ユーロ圏、スイス銀行、シャリーア銀行に移している。シャリーア銀行は、今や投資総額2300億ドルと推定される急成長ビジネスだ。
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