格安ロレックスはいかが?
中国、北京の紅橋市場を歩いていると何千もの偽物スイス時計がおおっぴらに売られている。これはスイスの輸出業界にとっても大変な打撃だ。
スイス時計協会は、世界の偽物時計市場でも特に中国市場について懸念を持っている。とにかく、到底見過ごせない量なのだ。
「いらっしゃい、いらっしゃい、時計あるよー、ロレックスだよー」。北京、紅橋(ホンチャオ)市場を歩き回っていると、こんな呼び声を聞くことは1度や2度ではない。この市場は観光名所、皇帝の廟壇である天壇(ティエンタン、Temple of Heaven)からほど近い場所にある。
そりゃ、もちろん偽物だよ
靴下と下着、カシミアや絹のスカーフ、コンピュータ部品やお土産など、立ち並ぶ露天の間に、小さな「宝石店もどき」もある。高級ブランドの名前を連呼してお客を呼んでいるこの店に並ぶ品物は、一つとして本物ではない。
ここは土日も関係なく、多くの中国人や観光客でにぎわう。目に飛び込んでくるのは、ロレックス、オメガ、タグ・ホイヤーなど、スイスが世界に誇る高級時計が全てずらり、だ。「これ、本当にスイス製ですか?」と聞いてみた。店員は「そりゃ違うよ」と悪びれもせず答える。
「こっちは台湾製、あとは中国製さ。でも、これ、近くでもっとちゃんと見てみてよ。ものすごく上手くできてるだろ!」
740円のロレックス
彼が手に取ったのはモンブランの時計。プラスチック製で、買って数日もすれば壊れてしまうような代物だ。でも素人目にはちゃんとした物に見えるかもしれない。
一人のヨーロッパ人女性がぶらぶらやってきた。パテック・フィリップのある特定のモデルを探しているという。店員はすぐカタログをチェックしてお求めの品を出してきた。はい、商談成立。
筆者はまだ品質についてぐだぐだと商談を続けていた。「まあ、確かに時計によって品質は違いますけどね。あと値段とね」。ついに我々の商談は成立した。さっきのモンブランと女性用のロレックス時計2つで200元。30フラン(約2760円)ちょっとだ。「ロレックスは50元(約740円)でいいんだけどさ、このモンブランはちょっとした品質なんだよ。150元(約2000円)以下ではどうしても売れないな」
商談はてきぱきと進んでいく。手にした「掘り出し物」を筆者がポケットに入れる前に、もう彼は他の客と商談を始めていた。
いたちごっこ
この市場で起きている事は、中国市場でお馴染みの光景だ。「これは我々にとって深刻な問題です」とスイス時計協会のジャン・ダニエル・パシェ会長は言う。「時計に限ったことではありませんが、中国は世界でも偽物ブランドの最大生産者かつ一大市場なのです」
スイス時計協会は中国政府の協力を取り付けたものの、これは長い戦いになると予測している。今日、偽物時計はオリジナルの売り上げ数を上回っている。特にインターネットでは、何千と偽物スイス時計を売るオンライン・ショップがある。
スイス時計協会が最も恐れているのは、このような状態を野放しにしておくことによって、スイス時計そのものの評判にも傷がつくのではないかということだ。
パシェ会長は、「中国の地元当局の助けによって、我々はこのような偽物ブランドを取り扱っている店の摘発に乗り出しています。今まで多くの偽物スイス時計を処分し、関係者は処罰されました」
しかし、結局はいたちごっこだ。一人、偽物ブランドの業者が摘発されれば、その場所に新しく収まる別の業者がいくらでもいるのだ。仁義なき戦いはこれからも続く。
swissinfo、 マルツィオ・ペスキア 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
‐「スイス製」と銘打った偽ブランド時計は元々日本、香港、台湾、タイなどで長年生産されてきた。
‐しかし、最近は中国製のものがほとんどとなっており、近年、中国当局も偽ブランドの挑発に乗り出した。
‐スイス時計協会は世界中に出回る偽ブランド時計によってスイス時計業界がこうむる被害は毎年8億フラン(735億円)だと算出している。
毎年、スイス時計産業は約2500万個の時計を生産している。
一方、偽物スイス時計の生産は世界中で毎年約4000万個。
このうち約7割が中国製。
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