欧州連合(EU)は1日から、スイスをEU株式市場から締め出した。報復措置としてスイスはEU株式市場でのスイス株取り扱いを禁止。二国間条約交渉をめぐる緊迫は混迷を深めてきた。
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スイスとEUは2014年以降、約120本の二国間協定を、新しく「枠組み条約」に一本化する交渉を進めてきた。個別の協定には労働者の移動の自由も含まれる。 だが同じ14年、スイスは国民投票でEUからの移民の数に上限を設定する案を可決。条約交渉は早速暗礁に乗り上げた。
EUとの取り決めである移動の自由と国民投票結果の板挟みに陥ったスイス連邦政府は、交渉期限を引き延ばして整合性をつけようと四苦八苦している。だがこれに堪りかねたEU側は見せしめとして7月1日からスイス証券取引所がEU証券取引所との「同等性」を持つとする認定を取り消した。これはスイス証券取引所がEU企業の株式を売買する権利を喪失したことを意味する。
SIXグループが運営するスイス証券取引所は、取引量の減少は免れない。スイス政府は国内株の取引に集中することで、損失の一部を穴埋めを狙う。
ロンドンやフランクフルトなど欧州各国の証券取引所も1日、スイス株の取り扱いを停止した。スイス株を売買したいEUの銀行やトレーダーは、スイスのブローカーを仲介してスイス証券取引所で取引せざるをえなくなる。こうした取引もスイス証券取引所の損失を一部取り戻せそうだ。だが禁止措置が長引けば双方にとって悪影響が広がるのは間違いない。
ドイツ語圏の日刊紙NZZによると、EUによるスイス締め出し措置には抜け穴がある。EUのトレーダーは「体系的かつ定期的にEUの公認取引所で取引されていない」株式を、別のプラットフォームで取引できるという。
SIXグループは声明外部リンクで、「過去7カ月、禁止措置が発効しても取引が中断されないよう、顧客と直接の取引関係を確立してきた」と、楽観的な見方を示している 。
最高経営責任者(CEO)のヨス・ディーゼルホフ氏は自身のLinkedIn(リンクトイン)アカウント外部リンク上で、スイスによる報復措置が短期的に「投資家保護に関して、状況を大幅に緩和させた」と一歩踏み込んだ。
一方で、同氏は行き詰まりを引き起こした一連の政治決定が長引けば、スイス経済に「マイナスの影響」をもたらすとも主張。「(スイス経済が)力強くあるためには、強じんな資本市場と国際市場に手の届く独立した国内証券取引所が必要だ。それがなければスイスは投資や企業買収、起業する魅力がなくなってしまう」と警告した。
ロシュやネスレなどの多国籍企業は、株価への影響を重く見ていないものの、状況を注視する構えを見せている。
ノバルティスは同社株の取引がスイスの証券取引所のほか米国など非EU取引所に移るに過ぎず、「株式の取引量や市場の流動性には大きな影響を与えない」とみている。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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