銀行員も楽じゃない?
高給取りのスイス銀行員は羨望の的だが、このほど、ローザンヌ大学の調査により、「銀行員は病んでいる」ことを裏付ける研究が発表された。
調査によると銀行員の3分の1は極度のストレスを抱えており、4分の1は抗うつ剤や鎮静剤などを服用している。このうえ、仕事に満足している人16%と他の職種の42%に比べて非常に少ない。
調査結果
調査結果はローザンヌ大学出版の『経済研究手帳』10月号に発表された。質問調査はティチーノ州の銀行員428人とその他の職種859人のサラリーマンを対象に、それぞれ2003年の4月と2002年の10月、11月に行われた。
この調査の結果、ここ数年で職場でのプレッシャーが増えたと答えた銀行員が74,1%だったのに対し、他のサラリーマンは53,1%。精神的に辛い仕事だと答えた銀行員は46,5%に対し他の職種では28,1%だった。
また、職場の環境もこのストレスに関係しているらしく、直接の上司を頼りにできると答えたサラリーマンは71,9%に対し、銀行員は54,1%。同僚の支援を当てにできると答えたサラリーマンは76,2%なのに対し、銀行員はたったの47%だった。
元気のない理由
研究の責任者、ドメニゲッティ教授はこのストレスの理由を職の不安定さにあると分析する。これを裏付ける事実に「職を失う不安がある」と答えた銀行員が40%いるのに対し、他の部門では26%だった。人員削減のあった銀行などは54%にも達した。
確かにスイス国立銀行(SNB)の統計を見ると2002年12月から2003年12月のスイス銀行定員数(外国資本の銀行も含めた全342行)は約13,000人が削減されている。スイス銀行員組合(SBPV/ASEB)によると2003年は一日平均で4,729人(全失業者の3,2%)が失業手当てを受けていた。2004年は前半期だけでも失業者数は全国の一日平均4,400人と彼らの不安を裏付ける数字だ。各銀行の確かな数字は発表されていないが、銀行関係者の話によると昨年は大手銀行では、800人から1,000人の人員削減が行われたという。
高給取りは楽ではない
同調査によると月給が手取り3,000フラン(約26万円)以下の銀行員が少なく6,5%(他の職種は27,6%)、手取りが3,000フランから5,999フラン(約53万円)が46,7%(他の職種は58%)。そして、6,000フラン(約53万円)以上の月給が46,7%(他の職種は14,4%)と一番多く、スイス銀行員が高給取りなのは確かなようだ。
過去12ヶ月に職場で何度も精神的いやがらせを受けた銀行員14,8%(他の職種は5,3%)が多いせいか、将来の不安が大きい人が70,8%(他の職種は39,7%)もいるからか鬱病の人が2倍もいる(他の職種は10,8%)。よく眠れない人も銀行員が72,4%と断然多い(他の職種は39,1%)。
このように、病んでいる銀行員が多いにもかかわらず、欠勤できないので通院など途中で治療を止めた銀行員が30,1%(他の職種は9,5%)。 このうえ、将来プレッシャーがさらに大きくなるだろうと見る銀行員は他の職種より25%も多いので、将来の見通しは暗いと言える。
それでも、地元新聞の投書欄にはこの研究報告を受けて「この国の銀行員がそんなに不幸とは少しも気づかなかった」と皮肉っており、高給取りの銀行員には同情する余地がないのか、冷たいようだ。
スイス国際放送 屋山明乃(ややまあけの)
ローザンヌ大学の調査によるとスイスの銀行員の…
- 25%は抗うつ剤や鎮静剤を服用している。
- たったの16%が仕事に満足。
- 40%が失業の危機を感じている。
- 46,5%が職場で極度のストレスを感じている。
-この調査は2004年10月の『経済研究手帳』(ローザンヌ大学HEC出版)に発表された。調査はティチーノ州で銀行員(428人)に対しては2003年の4月、他の職種のサラリーマン(859人)に対しては2002年の10月から11月に行われた。
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