高校の制服は断念
着たいものを着る。ブランド物を着なければ友だちを失うという圧迫感から解放されなくともよい。結局、制服は着たくないのだ、というのがバーゼル市の高校生の判断だった。
昨年10月中旬から6カ月間にわたり、14歳から15歳の生徒が制服を試してみたが、支持する声が少なく、4月から再び私服で登校することになった。
制服導入の試験現場となったのはバーゼル市のレオンハルト校 ( Leonhard-Schule) 。ここは、大学進学資格を取得するギムナジウムコースのほか職業専門科コースもある。実際に制服を着たのは専門科コースの2クラス。制服のデザインについても彼らの意見が反映されていた。
イギリス風なら…
6カ月の命だった制服は、明るい緑色のジャケット、ベージュのセーター、横縞でカラフルなTシャツなど14のパーツで、1組の値段は730フラン ( 約6万 9000円 ) 。クリスティアン・グリス校長は「生徒たちはこれを制服だと認めていないのです」と明かす。
制服導入プロジェクトに参加したバーゼル大学心理学科のアレクサンダー・グロス教授は、夏休みまで制服着用を続ければ支持率は上っただろうと見る。「制服を着ているうちに、それを受け入れるようになる。制服を着るか、他のクラスメートと同じセーターを着るかということにはあまり違いがなく、生徒は同じものを着ることで、グループ意識が高まる」と言う。
プロジェクトチームは、今回対象になった生徒より若い生徒に制服を再度試したい意向だ。次回は、よりシンプルなデザインを考えている。というのも、具体的に言えばイギリスで着られているような制服が支持されていることが分かったからだ。一方で、グリス校長は18日付の日曜新聞NZZアム・ゾンタークで「ブレザー姿で校庭を走る生徒はイメージできない」と語っている。
制服はスイスの伝統ではない
スイスでは一部の私立学校に制服があるものの、大半の学校にはない。いくつかの州でも制服導入が検討されたが、結局どの州でも導入はされていない。理由はスイスの伝統ではない、子どもの精神的成長を妨げるといったもの。それでもグロス教授は、制服は広く受け入れられるという意見だ。
こうした中、あえて制服導入の理由としてよく挙げられるのは、生徒が勉学に集中できるということだ。もう1つの理由は、価格の高いブランド物を買わないとクラスメートに取り残されてしまうという生徒や両親への圧力からの解放が挙げられる。ほとんどの学校で化粧も認めるスイスでは自由な校風で、ファッションに敏感な生徒が多い。ジーンズ1本で300フラン ( 約2万9000円) という高級品を着る生徒もいるという。ファッションに凝る子どもを持つ親の負担は大きい。
swissinfo、エティエン・シュトレーベル 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳
スイスではほとんどの学校が制服を持たないが、一部の私立学校、特に外国系は制服を採用している。ヨーロッパで生徒が制服を着るのはイギリスとキプロスのみ。そのほかオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどイギリスの影響が大きい国が多い。
若者の消費は特に、洋服、携帯電話、ラップトップに集中。専門家の予想では、年間のお小遣いは、スイスの青少年全体で最低6億フラン ( 約580億円 ) に上る。13歳の平均は年間500フラン ( 約4万8000円 ) だが、少ない子どもで5フラン 、多い子どもだと数千フランと幅も大きいと言われる。1000人の青少年を対象にした調査では、760人が借金をしてでも欲しいものを買うと答えた。
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